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影狼ノ忍  作者: 次男坊
第3章「風遁修行編」
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第65話「風を操る」

朝。


蒼真は森の中に立っていた。


目の前には、何本もの細い木の棒が地面に突き刺さっている。


影宗は少し離れた場所から蒼真を見ていた。


「今日は風弾じゃない」


「じゃあ、何をする?」


「風を操れ」


蒼真は眉を寄せた。


「操る……?」


「風を出すだけなら、もうできる。だが、それではまだ未熟だ」


影宗は一本の小石を拾い、空へ放った。


小石が落ちてくる。


その瞬間、影宗が手を動かした。


風が渦を巻き、小石を横へ弾き飛ばす。


「風は一方向に飛ばすだけのものじゃない。曲げることも、流すことも、止めることもできる」


蒼真は風影刀に手を添えた。


「やってみる」


目を閉じる。


周囲の木々。


葉の揺れ。


肌を撫でる風。


すべてを感じ取る。


そして――


「風遁!」


蒼真の周囲に風が集まった。


最初は小さな風。


だが、蒼真が手を動かすと、その風が右へ流れる。


「……!」


風が木の棒を避け、その向こうにある葉だけを吹き飛ばした。


影宗の目が細くなる。


「今の感覚を忘れるな」


「できた……」


「まだだ」


「え?」


影宗が新しい小石を五つ投げる。


一つ。


二つ。


三つ。


四つ。


五つ。


「全部、落とせ」


蒼真は目を見開いた。


「五つ同時に!?」


「風を操るなら、それくらいはできろ」


小石が落下してくる。


蒼真は集中した。


風を一つ。


二つ。


三つ。


四つ――


「くっ……!」


五つ目だけ風が届かない。


小石が地面に落ちた。


「四つ……」


蒼真は悔しそうに拳を握る。


影宗は静かに告げた。


「今はそれでいい」


「……いいのか?」


「ああ。昨日のお前なら、一つも狙えなかった」


蒼真は顔を上げた。


「少しずつ……か」


「力を急ぐな。風は急げば乱れる」


蒼真は小さく笑った。


「分かった。もう一回だ」


再び小石が投げられる。


今度は――


五つすべてが、風に弾かれた。


「……!」


蒼真の顔に笑みが浮かぶ。


影宗は何も言わず、背を向けた。


「次は、動きながらだ」


「えっ?」


「修行は始まったばかりだ」


蒼真は苦笑しながら風影刀を握り直した。


「……厳しすぎるだろ」


森に、再び風が吹き抜けた。


その風は昨日よりも強く、そして確かに蒼真の意思に従っていた。


第65話 完

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