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影狼ノ忍  作者: 次男坊
第3章「風遁修行編」
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第62話「風を読む修行」

翌朝。


蒼真は一人、山道を登っていた。


「ここが修行場所か……」


山頂付近には、木々の間を強い風が吹き抜けている。


蒼真が風影刀に手を伸ばす。


その瞬間。


「抜くな」


背後から影宗の声がした。


「師匠?」


「今日の修行では、その刀を使わない」


蒼真が驚く。


「風影刀を?」


「ああ」


影宗は山頂を指差した。


「まず、お前自身が風を扱えるようになれ」


「どうすれば?」


「目を閉じろ」


蒼真は言われた通り目を閉じる。


「周囲の風を感じろ」


「……」


木々が揺れる音。


鳥の羽ばたき。


葉が擦れる音。


だが、蒼真には風そのものが掴めない。


「分からない……」


「風を掴もうとするな」


「え?」


「読むんだ」


蒼真はもう一度集中する。


頬を撫でる風。


右から左へ流れる風。


その中に、僅かな違和感を感じた。


「……右」


影宗が黙って見つめる。


「右から風が来てる」


「次は?」


蒼真が集中する。


「……上から落ちてくる風がある」


「よくなった」


蒼真が目を開ける。


「これが風を読むってこと?」


「ああ」


影宗は木の枝を一本拾った。


「では、これを避けろ」


枝を投げる。


ヒュッ!


蒼真は反射的に横へ飛ぶ。


枝が肩をかすめた。


「今のは避けられたな」


「風で分かった」


「そうだ」


影宗が次々と枝を投げる。


一本。


二本。


三本。


蒼真は風の流れを感じながら避けていく。


だが――


「ぐっ!」


最後の一本が肩に当たった。


「まだまだだな」


「……悔しい」


「それでいい」


影宗は背を向ける。


「悔しさは、成長するための力になる」


蒼真は山頂から吹く風を見つめた。


「もっと読めるようになってみせる」


その頃、黒影衆の里では――。


「こっちは何をすればいい?」


蓮司が影宗の別の弟子に尋ねていた。


凛は水遁の修行。


レイは二本の短刀を使った近接修行。


四人はそれぞれ、自分の弱点と向き合い始めていた。


そして山の向こう。


黒い忍装束の男が、蒼真たちのいる山を見上げていた。


「風継ぎ……」


その手には、夜叉衆の紋章。


「修行を始めたか」


男は静かに笑った。


「ならば、完成する前に潰す」


山頂では、蒼真が再び目を閉じていた。


風が吹く。


今度は――


さっきよりも、はっきりと流れが見えた。


「……感じる」


蒼真の修行は、始まったばかりだった。


第62話・完

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