第61話「新たな修行」
北東村を出て数日。
蒼真たちは黒影衆の里へ戻ってきた。
「やっと帰ってきたな」
蓮司が伸びをする。
「今回、かなり長かった」
凛も周囲を見渡す。
「戻ってくると安心するね」
レイは黙って里の様子を見ていた。
「……何か変わった?」
「いや」
レイが首を横に振る。
「でも、俺たちが変わったんだと思う」
蒼真は腰の風影刀を見る。
北東村での戦い。
地下に眠っていた封印。
そして、風継ぎという存在。
まだ分からないことばかりだった。
「蒼真」
影宗が姿を現す。
「戻ったか」
「師匠。ただいま」
「話は聞いている」
影宗の視線が風影刀へ向く。
「かなり無茶をしたようだな」
「……すみません」
「謝る必要はない」
影宗は四人を見渡す。
「だが、今のお前たちでは、これからの戦いには対応できない」
蓮司が反応する。
「これからって?」
「夜叉衆は必ずまた来る」
影宗の声が重くなる。
「しかも、次は今までの敵とは比べものにならない」
蒼真が拳を握る。
「だったら、強くならないと」
「ああ」
影宗が頷く。
「だから明日から修行を始める」
「明日から!?」
蓮司が驚く。
「休ませてくれよ……」
「休んでいる暇があるのか?」
「……ないです」
凛が苦笑する。
「蓮司らしいね」
影宗は蒼真を見る。
「まず、お前は風遁を一から見直す」
「一から?」
「北東村でお前は風を感じることを覚えた」
影宗が風影刀を指す。
「だが、それを戦闘で自在に使いこなせてはいない」
蒼真は黙って聞く。
「風影刀に頼りすぎれば、お前自身の力は伸びない」
「……分かった」
「明日から山へ入れ」
「一人で?」
「ああ」
蓮司が口を挟む。
「じゃあ俺たちは?」
影宗は三人を見る。
「当然、お前たちも別々の修行をする」
凛が驚く。
「別々に?」
「それぞれの弱点を克服するためだ」
レイが静かに頷く。
「なるほど」
影宗は最後に四人へ告げた。
「次に夜叉衆と戦う時、今のままでは誰も守れない」
蒼真は風影刀を握る。
「……絶対に強くなる」
その夜。
蒼真は一人、里の外を見つめていた。
風が頬を撫でる。
「風継ぎ……」
まだ自分が何者なのか分からない。
それでも――。
「俺は俺の力で、みんなを守る」
風影刀が静かに揺れた。
翌朝。
蒼真は修行場所へ向かうため、山へ続く道を歩き始めた。
本格的な修行の日々が始まる。
第61話・完




