第56話「地下に潜む者」
「……待っていたぞ」
暗闇の奥から声が響く。
蒼真は風影刀を構えた。
「誰だ!」
凛も水遁の構えを取る。
「この地下に何があるの?」
二つの赤い目が、ゆっくりと近づいてくる。
カツ……。
カツ……。
足音だけが響く。
そして姿を現したのは――
「人……?」
古びた忍装束を身につけた男だった。
顔には傷があり、長い年月を地下で過ごしていたような姿をしている。
「お前……何者だ?」
男は蒼真の持つ風影刀を見る。
「その刀を持つ者が、ここまで来るとはな」
「風影刀を知っているのか?」
「ああ」
男の視線が鋭くなる。
「だが、お前はまだ風継ぎではない」
蒼真が眉をひそめる。
「……どういう意味だ?」
「風影刀を持っているだけでは、風継ぎにはなれん」
凛が一歩前に出る。
「じゃあ、何が必要なの?」
男は答えず、地下の奥を指差した。
「知りたければ、自分の目で確かめろ」
その瞬間――
ドン!
地下全体が揺れた。
「何!?」
男の表情が変わる。
「まずい……」
蒼真が振り返る。
「どうした?」
「夜叉衆が来る」
「夜叉衆!?」
男は地下の奥へ走り出した。
「ここに長居すれば、全員殺されるぞ!」
「待て!」
蒼真と凛も後を追う。
一方、地上では――。
「おらぁ!」
ゴウの大剣が振り下ろされる。
蓮司が受け止める。
「ぐっ……!」
地面が大きく沈む。
「蓮司!」
レイが横から斬り込む。
ゴウは大剣を引き戻し、短刀を弾き飛ばした。
「まだまだだな!」
「くそっ……!」
蓮司が距離を取る。
ゴウが祠を見る。
「そろそろ目的は達成されたか」
「目的?」
蓮司が睨む。
「お前ら……最初から蒼真を倒すことが目的じゃなかったのか?」
ゴウは答えず、笑った。
「気づくのが遅い」
その瞬間。
祠の入口から黒い煙が噴き出した。
「なっ……!」
レイが目を細める。
「中で何か起きてる」
ゴウが大剣を肩に担ぐ。
「さて……俺の役目も終わりだ」
「待て!」
蓮司が追おうとする。
しかしゴウは地面を蹴り、村の外へ消えていった。
「逃げた……?」
レイが呟く。
蓮司は祠を睨む。
「いや……逃げたんじゃねぇ」
「じゃあ?」
「蒼真たちが、地下に入ったことを確認したんだ」
蓮司は刀を握り直した。
「俺たちも行くぞ」
二人は祠へ向かって走り出した。
地下深く。
蒼真たちは、古びた扉の前に辿り着いていた。
男が振り返る。
「この扉の向こうに、お前が探している答えがある」
蒼真が扉を見る。
そこには、風影刀と同じ紋章が刻まれていた。
「……これが」
蒼真が手を伸ばす。
しかし男が止めた。
「待て」
「何?」
男は低い声で告げる。
「その扉を開ければ、もう後戻りはできない」
蒼真は迷わなかった。
「それでも開ける」
風影刀が光を放つ。
扉の紋章が、ゆっくりと輝き始めた。
第56話・完




