第35話「風影刀の秘密」
夜叉衆が去った後。
社の中には、蒼真たち三人だけが残っていた。
蒼真は風影刀を見つめる。
「凛。この刀のことを知ってるんだよな?」
「全部は知らない」
「それでもいい。知ってることを教えてくれ」
凛は壁画の前に立った。
「この刀は、昔の風遁使いが使っていたもの」
蓮司が尋ねる。
「どうして夜叉衆が欲しがるんだ?」
「風影刀には、風遁の力を増幅させる力があると言われてる」
蒼真が刀を見る。
「だから、俺の風遁にも反応したのか」
「たぶん」
凛は続ける。
「でも、それだけじゃない」
「他にもあるのか?」
「風影刀を持つ者は、昔から『風継ぎ』と呼ばれていた」
蒼真の表情が変わる。
「風継ぎ……」
凛は頷く。
「風継ぎには、代々受け継がれてきた役目がある」
「どんな役目?」
凛は壁画の奥を指差す。
そこには、風を操る忍びと、黒い鬼のような集団が描かれていた。
「夜叉衆を止めること」
蓮司が驚く。
「じゃあ、夜叉衆が蒼真を狙ってるのは……」
「風継ぎだから」
蒼真はしばらく黙っていた。
「俺が……夜叉衆と戦う理由があるってことか」
凛は首を横に振る。
「違う」
「え?」
「戦うかどうかを決めるのは、あなた自身」
蒼真は風影刀を握る。
「……分かった」
その時、外から黒影衆の忍びが駆け込んできた。
「蒼真!」
「どうした?」
「黒羽様から伝令です。すぐ里へ戻れとのことです」
蒼真は凛を見る。
「凛、お前も来てくれ」
「私も?」
「ああ。夜叉衆のことを知ってるなら、師匠にも話してほしい」
凛は少し迷い、頷いた。
「分かった」
三人は神社を後にする。
だが、森の奥では――
夜叉衆の男が三人を見つめていた。
「風継ぎが目覚めたか……」
その手には、黒い札が握られていた。
第35話・完




