第17話「里の異変」
夜。
黒影衆の里は、いつもより静かだった。
蒼真は屋根の上から周囲を見張っていた。
隣には蓮司がいる。
「何も起きないな」
「静かすぎる」
蒼真は風の流れを感じていた。
「……待て」
「どうした?」
「風が変だ」
山から吹いていた風が、一瞬だけ止まった。
そして――
里の奥から風が流れてきた。
「誰かが動いた」
蒼真が屋根から飛び降りる。
「おい、蒼真!」
蓮司も後を追う。
二人が向かったのは、忍具を保管している倉庫だった。
扉が少し開いている。
「さっきまで閉まってたはずだ」
蒼真が刀に手をかける。
「中に誰かいるかもしれない」
二人は慎重に中へ入る。
しかし、誰もいない。
ただ、床に黒い札が一枚落ちていた。
蓮司が拾おうとする。
「待て!」
蒼真が止める。
「触るな」
「また夜叉衆か?」
「たぶん」
蒼真が札を観察する。
すると、札の端に小さな傷があることに気づいた。
「これ……誰かが急いで置いたみたいだ」
その時、外から叫び声が響いた。
「敵だ!」
「侵入者だ!」
蒼真と蓮司が顔を見合わせる。
「来たか!」
二人は倉庫を飛び出す。
里の北側。
数人の黒装束が、木々の間を走っていた。
「夜叉衆だ!」
黒影衆の忍びたちが追いかける。
蒼真も走り出す。
だが、先頭を走っていた一人が振り返った。
その目が蒼真を捉える。
「風遁の少年……」
蒼真の足が止まる。
「お前……!」
黒装束の忍びは笑う。
「やはり、この里にいたか」
次の瞬間、煙玉が地面に落ちた。
煙が広がる。
「待て!」
蒼真が飛び込む。
だが、煙が晴れた時には、敵の姿は消えていた。
蓮司が駆け寄る。
「また逃げられたな」
蒼真は地面を見る。
そこには黒い札が一枚落ちていた。
「……これは罠だ」
「何?」
蒼真は里の方を振り返る。
「本当の目的は、別にある」
その瞬間、里の奥から大きな音が響いた。
ドンッ!
二人は同時に走り出した。
第17話・完




