↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
影狼ノ忍  作者: 次男坊
第4章「夜叉衆暗躍編」
PR
127/183

第127話「鉤爪突破戦」

地下深部。

巨大な石柱を中心に、二つの戦いが繰り広げられていた。

一方では、神谷宗玄と黒雷の玄岳。

もう一方では、蒼真たち四人と鉤爪の獅堂。

そして石室の奥には、新たな文字が姿を現していた。

『風を守る者は、風を継ぐ者を見定めよ』

「……見定める、か」

蒼真は風影刀を握り直した。

その言葉の意味を考える暇はない。

ガリィィン!

「おらぁっ!」

獅堂の鉤爪が襲いかかる。

「くっ!」

蒼真は風影刀で受け止めた。

足元の石床が軋む。

「どうした、風影刀の使い手!」

獅堂が笑う。

「さっきまでの勢いは!」

「まだ……終わってねぇ!」

蒼真が刃を押し返す。

しかし獅堂は退かない。

左の鉤爪を振り上げた。

「蒼真!」

キィン!

蓮司の刀が割り込む。

「二本も使ってんじゃねぇよ!」

「お前も刀を二本持てばいいだろ!」

「そういう問題じゃねぇ!」

蓮司が力を込める。

だが獅堂は笑った。

「いい加減、覚えろ!」

グンッ!

鉤爪が蓮司の刀を引っかける。

「なっ!?」

そのまま強引に引き寄せた。

「ぐっ!」

獅堂の膝が蓮司の腹へ。

ドゴッ!

「がはっ!」

蓮司が後退する。

「蓮司!」

蒼真が踏み込もうとした瞬間。

「煙遁・黒煙陣!」

ボォォッ!

黒煙が二人の間に広がった。

「またか!」

蒼真が風影刀を振る。

「風遁・風環!」

ゴォッ!

風が煙を押し返す。

だが獅堂の姿は見えない。

「……?」

蒼真は足を止めた。

おかしい。

これまで獅堂は、煙の中から正面へ攻撃してきた。

だが今は違う。

気配が――

遠ざかっている。

「まさか!」

蒼真が振り返った。

石室の奥。

隠された石板。

そこへ獅堂が走っていた。

「もらったぜ!」

巨大な鉤爪が石板へ伸びる。

狙いは古い布。

『風守の誓い』が刻まれた場所だった。

「させない!」

凛が印を結ぶ。

「水遁・水槍!」

シュッ!

細い水の槍が獅堂の足元を狙う。

「ちっ!」

獅堂が跳ぶ。

水槍が床に突き刺さった。

だが着地した瞬間。

ヒュッ!

「!」

レイが目の前に現れた。

「……そこは通さない」

二本の短刀が交差する。

キィン!

獅堂が鉤爪で受けた。

「またてめぇか!」

「……何度でも」

レイが踏み込む。

右の短刀。

左の短刀。

連続した斬撃。

キン! キィン!

獅堂が防ぐ。

だがレイは止まらない。

一歩。

さらに一歩。

獅堂を石板から遠ざけていく。

「小賢しい!」

獅堂が鉤爪を振り回した。

レイは身体を沈める。

刃が頭上を通過した。

そのまま懐へ。

「……!」

短刀が獅堂の脇腹を狙う。

しかし――

ガキィン!

獅堂の左の鉤爪が受け止めた。

「読めてんだよ!」

獅堂が右腕を振り下ろす。

レイが回避しようとした。

だが。

「っ……!」

左肩に激痛が走った。

一瞬、身体が止まる。

「もらった!」

ザシュッ!

鉤爪がレイの左肩を斬り裂いた。

「ぐっ!」

鮮血が飛ぶ。

レイの身体が後方へ吹き飛ばされた。

ドンッ!

壁に背中を打ちつける。

「レイ!」

凛が叫ぶ。

レイは膝をついた。

「……っ」

左腕が動かない。

指先に力が入らなかった。

獅堂がゆっくり近づく。

「速さだけなら大したもんだ」

鉤爪を構える。

「だが、その傷じゃもう――」

「水遁・水縛!」

ザバッ!

獅堂の足に水流が絡みつく。

「何っ!?」

凛が両手を突き出していた。

「レイから離れて!」

「邪魔だ!」

獅堂が足を引く。

だが水流は離れない。

「くっ……!」

凛の額から汗が流れる。

水遁を使い続けた身体には、もう余裕がなかった。

「……早く!」

その声に応じて――

「おらぁぁっ!」

蓮司が煙の中から飛び出した。

刀を振り下ろす。

ガキィィン!

獅堂が鉤爪で受ける。

「てめぇ!」

「仲間に何してくれてんだ!」

蓮司が刀を押し込む。

獅堂も力を込めた。

「ぐっ……!」

「はっ! さっきまで腹押さえてた奴が!」

「うるせぇ!」

蓮司は刀を斜めに滑らせた。

獅堂の力を横へ逃がす。

「!」

鉤爪が床へ突き刺さった。

ガギン!

「今だ!」

蒼真が駆ける。

風影刀を構えた。

「風遁・風刃!」

ヒュン!

風刃が獅堂へ迫る。

獅堂は鉤爪を引き抜こうとした。

だが――

「抜けねぇ!?」

蓮司が刀で鉤爪の柄を押さえていた。

「逃がすかよ!」

ザシュッ!

風刃が獅堂の右腕を斬った。

「ぐああっ!」

獅堂が後退する。

右腕から血が流れる。

鉤爪を握る指が震えていた。

「……てめぇら」

獅堂が歯を食いしばる。

「よくも……!」

蒼真が風影刀を構える。

「まだやるのか」

「当たり前だろ!」

獅堂が怒鳴る。

「俺を誰だと思ってやがる!」

黒煙が再び立ち上る。

だが蒼真は動かなかった。

「……蓮司」

「おう」

「凛」

「分かってる」

三人は目を合わせる。

獅堂の煙遁。

その厄介さは十分に分かっていた。

だが――

煙の中で戦う方法も、少しずつ見えてきていた。

「凛、無理に煙を消さなくていい」

蒼真が言う。

「え?」

「床だけ頼む」

凛は一瞬考えた。

そして頷く。

「……分かった!」

印を結ぶ。

「水遁・水流陣!」

ザァッ!

石床に薄い水が広がる。

獅堂が笑う。

「また同じ手か!」

「違う!」

蒼真が風影刀を構える。

「今度は――」

風が足元へ集まる。

「俺も使う!」

「風遁・風環!」

ゴォッ!

蒼真の風が床を滑った。

薄い水が細かな飛沫となって舞い上がる。

黒煙の中。

飛沫が獅堂の身体にぶつかり、流れを変えた。

「……!」

蒼真の目が動く。

右前方。

人の形に乱れる風。

「そこだ!」

蒼真が踏み込む。

ガキィン!

風影刀が鉤爪と衝突した。

「何で分かった!」

獅堂が叫ぶ。

蒼真は答えない。

風の流れを読む。

水の飛沫が教えてくれる。

煙の中にいる敵の位置を。

「蓮司! 左!」

「おう!」

蓮司が斬り込む。

ガキィン!

獅堂が受ける。

「くそっ!」

右へ逃げる。

だが――

「そっちも見えてる!」

凛が叫ぶ。

水面の揺れ。

蒼真が風を流す。

獅堂の進路を塞ぐ。

「ぐっ!」

獅堂は足を止めた。

三人が距離を詰める。

「……なるほどな」

獅堂が低く笑う。

「煙を消すんじゃなく、俺の位置を探るってわけか」

蒼真が答える。

「お前の煙は厄介だ」

「だろうな」

「でも、見えないからって何もできないわけじゃない」

獅堂の笑みが消えた。

「……面白ぇ」

右腕から血が滴る。

「なら、こいつはどうだ!」

獅堂が両腕を広げた。

「煙遁・黒煙爆!」

ドォォン!

黒煙が爆発的に広がった。

「!」

蒼真たちが後退する。

だが獅堂は追ってこない。

代わりに――

ガガガッ!

石床を削る音。

「……?」

蓮司が目を細める。

「何してやがる?」

黒煙の中。

獅堂は鉤爪で床を抉っていた。

何度も。

何度も。

ガリィン!

石の破片が飛び散る。

「まさか……!」

凛が気づいた。

床の溝。

そこには古い仕掛けへ続く細い水路があった。

獅堂はその溝を壊している。

「お前らが水を使うなら!」

獅堂が叫ぶ。

「足場ごと壊せばいい!」

ガゴォン!

石床の一部が崩れた。

水が割れ目へ流れ込む。

凛の水流陣が途切れた。

「そんな……!」

獅堂が笑う。

「これで終わりだ!」

黒煙が再び濃くなる。

蒼真は歯を食いしばった。

「……っ!」

水が使えない。

風だけでは、敵の位置を正確に捉えられない。

その時。

「……蒼真」

背後から声がした。

レイだった。

壁にもたれながら、立ち上がっている。

「レイ! 動くな!」

凛が叫ぶ。

「その肩じゃ……!」

レイは左腕を押さえた。

血が指の間から流れている。

「……分かっている」

右手に短刀。

「だが、一つ分かった」

蒼真が振り返る。

「何だ?」

「獅堂は……煙の中でも、俺たちの位置を完全には見ていない」

「……!」

「足音と、気配を頼りにしている」

蓮司が目を見開く。

「ってことは……」

レイが短刀を握り直す。

「……こちらも消えればいい」

蒼真は少し考えた。

そして。

「……そうか!」

風影刀を構える。

風を起こす。

だが今度は、煙を払わない。

足元。

身体の周囲。

自分たちの動きで生まれる風を、静かに整える。

「蓮司」

「おう」

「次は走るな」

「は?」

「音を立てずに近づく」

蓮司が笑った。

「忍者らしいこと言うじゃねぇか」

「俺たちは忍者だろ」

「そうだったな!」

凛が小さく笑う。

「忘れないでよ」

レイも短刀を下ろした。

「……蒼真」

「何だ?」

「俺は、まだ動ける」

蒼真は首を振った。

「いや」

「……?」

「レイはここで休んでろ」

「だが――」

「お前が見つけた方法だ」

蒼真が笑う。

「後は俺たちがやる」

レイはしばらく黙っていた。

やがて。

「……分かった」

壁に背中を預ける。

凛がレイの肩へ布を押し当てた。

「絶対動かないでね」

「……努力する」

「努力じゃなくて!」

蓮司が笑った。

「怒られてやんの」

「蓮司も気をつけて!」

「はいはい!」

蒼真が前を向く。

黒煙の奥。

獅堂が待っている。

「……行くぞ」

「おう!」

二人が静かに踏み出した。

その頃。

石柱の反対側。

バチィィン!

黒雷が炸裂する。

「ぐっ!」

宗玄が後退した。

玄岳も肩で息をしている。

「……まだ立つか」

「お前こそ」

宗玄が風守刀を構える。

玄岳の視線が一瞬、石板へ向いた。

『風守の誓い』

その奥に隠された古い布。

宗玄は、その視線を見逃さなかった。

「……玄岳」

「何だ」

「お前は俺を倒すことが目的ではないな」

玄岳は笑った。

「今更か」

「石板の記録を持ち帰るつもりか」

「……」

玄岳が黒雷を纏う。

「答える必要はない」

宗玄が一歩踏み出す。

「なら、通さん」

玄岳も構えた。

「止められるならな」

二人が再び激突する。

一方。

黒煙の中。

獅堂は周囲を見回していた。

「……?」

足音が聞こえない。

気配も薄い。

「どこだ……?」

獅堂が鉤爪を構える。

その背後。

僅かな風。

「!」

振り返る。

だが誰もいない。

「……ちっ!」

次の瞬間。

右側から声。

「こっちだ!」

蓮司。

ガキィン!

獅堂が鉤爪で受ける。

「見つけたぞ!」

だが蓮司はすぐに離れた。

「何っ!?」

その直後。

背後から風。

獅堂が振り返る。

そこには――

風影刀を構えた蒼真。

「風遁・風纏!」

ヒュォォッ!

風が刃を包む。

「はああっ!」

蒼真が踏み込んだ。

獅堂も鉤爪を振り上げる。

「来やがれぇ!」

二つの刃が激突する。

ガキィィィン!

そして――

獅堂の右腕から、再び血が飛び散った。

「ぐあっ!」

蒼真は止まらない。

「まだだ!」

風影刀を構え直す。

獅堂も左の鉤爪を握りしめた。

「……上等だ!」

黒煙の中。

二人の忍が、再び向かい合った。

戦いは、まだ終わらない。

第127話 完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。