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影狼ノ忍  作者: 次男坊
第4章「夜叉衆暗躍編」
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第126話「黒雷と風守・再戦」

バチバチバチッ!

黒雷が石室を照らす。

「黒雷遁・四雷牙!」

四本の黒雷が宗玄へ襲いかかった。

「風守・流転!」

ゴォッ!

宗玄の風守刀が風を巻き込む。

一本目。

右へ流す。

二本目。

身体を捻って回避。

三本目。

刀の側面で軌道を逸らす。

だが――

「四本目はどうする!」

玄岳が叫ぶ。

最後の黒雷が宗玄の背後へ回り込んだ。

「!」

バチィン!

「ぐあっ!」

宗玄の左肩を黒雷が掠める。

身体が傾いた。

そこへ玄岳が踏み込む。

「もらった!」

黒雷を纏った苦無。

宗玄の胸元へ。

ガキィン!

寸前で風守刀が受け止めた。

「……っ!」

「まだ防ぐか!」

「当然だ!」

宗玄が苦無を押し返す。

二人が離れた。

ザッ。

玄岳は胸元を押さえる。

宗玄も右腕を庇った。

互いに負傷している。

それでも――

どちらも退こうとはしなかった。

「宗玄!」

蒼真が駆け寄ろうとする。

しかし。

ガリィン!

巨大な鉤爪が進路を塞いだ。

「おっと」

獅堂。

「お前らの相手は俺だろ?」

蒼真が風影刀を構える。

「邪魔するな!」

「それはこっちの台詞だ!」

獅堂が踏み込む。

蒼真が刃を受ける。

ガキィン!

「ぐっ!」

蓮司が横から斬り込む。

「蒼真! 宗玄のことは任せろ!」

「お前が行くのか!?」

「違ぇ!」

蓮司が獅堂の鉤爪を押し返す。

「宗玄なら自分で何とかするってことだ!」

獅堂が笑う。

「言うじゃねぇか!」

もう一方の鉤爪が蓮司へ迫る。

だが――

キィン!

レイの短刀が受け止めた。

「……余所見するな」

「てめぇ!」

レイは獅堂の力をまともに受けない。

刃を滑らせ、横へ逸らす。

しかし着地した瞬間。

「っ……」

肩に痛みが走った。

獅堂が見逃さない。

「傷が響くか!」

鉤爪が振り下ろされる。

「水遁・水弾!」

バシュッ!

凛の水弾が獅堂の腕へ命中。

「ぐっ!」

レイはその隙に後退した。

「助かった」

「無理しすぎ!」

「……分かっている」

「絶対分かってない!」

蓮司が思わず笑う。

「凛に怒られてやんの」

「お前もだ!」

「俺も!?」

蒼真が風影刀を構え直す。

「喋ってる場合じゃないぞ!」

獅堂が鉤爪を広げた。

「余裕そうだな、お前ら!」

四人は再び獅堂へ向き直った。

一方。

石柱の向こう。

宗玄と玄岳。

二人の間には黒雷が走っていた。

「……随分と静かになったな」

玄岳が呟く。

宗玄は答えない。

「さっきまでの勢いはどうした?」

「お前の雷を見ている」

「何?」

宗玄が風守刀を構える。

「お前の黒雷は、ただ速いだけではない」

玄岳が目を細める。

「今更気づいたか」

「最初は直線的だった」

宗玄はゆっくり足を動かす。

「だが今は違う」

玄岳の右手。

黒雷が指先から床へ落ちる。

「床の溝を使い、雷の進む方向を変えている」

「……」

「さらに雷を囮にして、自分自身が別方向から斬り込む」

玄岳が笑った。

「分かっているなら防いでみろ」

バチッ!

黒雷が三方向へ走る。

宗玄は動かない。

「……」

右。

左。

正面。

三本の黒雷。

だが宗玄の視線は――

玄岳の足元。

「そこだ」

ヒュッ!

宗玄が風守刀を振る。

「!」

玄岳の身体が一瞬止まった。

刀は玄岳を狙っていない。

足元の砂埃。

それを巻き上げた。

ゴォッ!

「ちっ!」

砂埃が黒雷の光を遮る。

宗玄が踏み込む。

「はあっ!」

風守刀が玄岳の右肩へ。

ガキィン!

苦無が受け止める。

だが宗玄は止まらない。

刀を引く。

再び斬る。

キン!

キィン!

ガキィン!

三度の斬撃。

玄岳は後退しながら受ける。

「くっ……!」

宗玄がさらに踏み込む。

「風守・流転!」

風が玄岳の右側へ流れた。

「!」

玄岳の身体が僅かに傾く。

宗玄の刀が左肩へ。

ザシュッ!

「ぐあっ!」

血が飛ぶ。

玄岳が大きく後退した。

宗玄は追わない。

「……はぁ」

右腕が震えていた。

先ほどの連撃。

火傷した腕への負担が大きい。

玄岳は左肩を押さえる。

「……やってくれる」

「まだ立てるか」

「当然だ」

玄岳が笑う。

「だが一つ、教えてやろう」

「何だ」

「お前は風を読む」

宗玄が黙る。

「風の流れを利用して相手の動きを崩す」

「……」

「なら――」

玄岳が印を結んだ。

「風そのものを乱せばどうなる?」

バチバチッ!

黒雷が両腕へ集まる。

「黒雷遁・雷鳴煙!」

ドォン!

黒い煙が爆発した。

宗玄が風守刀を振る。

「風守・流転!」

風が煙を流そうとする。

だが――

バチッ!

煙の中で黒雷が弾けた。

「!」

風が乱れる。

右から左へ。

下から上へ。

複数の雷撃が空気を震わせる。

宗玄の表情が変わった。

「……!」

玄岳の声が響く。

「読めるか!」

バチィッ!

黒雷が宗玄の足元へ。

宗玄が跳ぶ。

その瞬間。

別方向から雷撃。

「ぐっ!」

左腕を掠めた。

着地。

さらに黒雷。

「!」

宗玄が風守刀で受ける。

バチィン!

「くっ……!」

右腕に激痛。

刀を握る力が弱まる。

そこへ――

玄岳が現れた。

「終わりだ!」

黒雷を纏った苦無。

宗玄の首元へ。

だが。

「……甘い」

宗玄は刀を握り直した。

風を読む。

しかし――

今までとは違う。

乱れた風を無理に整えようとしない。

その中にある僅かな流れ。

玄岳自身が動くことで生まれた風。

宗玄はそこへ身体を滑らせた。

ヒュッ!

苦無が頬を掠める。

「何っ!?」

宗玄が玄岳の懐へ入る。

「風守・流転!」

ドッ!

柄頭が玄岳の腹へ突き刺さった。

「がはっ!」

玄岳が膝を折る。

宗玄が刀を振り上げる。

「はあっ!」

しかし――

バチッ!

玄岳の身体から黒雷が噴き出した。

「!」

宗玄が咄嗟に後退する。

バチィィン!

黒雷が床へ広がった。

「……っ!」

宗玄は距離を取った。

玄岳もゆっくり立ち上がる。

「はぁ……はぁ……」

宗玄が息を整える。

「今のは危なかったな」

玄岳が口元の血を拭う。

「お互いにな」

二人は再び向かい合った。

その頃。

獅堂との戦い。

「煙遁・黒煙陣!」

ボォッ!

黒煙が広がる。

蒼真が風影刀を構える。

「また煙か!」

「何度でも使ってやる!」

獅堂の声が響く。

蓮司が周囲を見る。

「見えねぇ!」

凛が手を伸ばす。

「水遁・水流陣!」

ザァッ!

床を薄い水が流れる。

「凛?」

蒼真が振り返る。

「煙は消せないけど……」

凛は目を閉じる。

「足音なら分かる!」

水面が揺れた。

右。

「そこ!」

凛が叫ぶ。

蒼真が振り向く。

ガキィン!

獅堂の鉤爪。

「ちっ!」

獅堂が舌打ちする。

「水で足音を拾いやがったか!」

蒼真が風影刀を押し返す。

「蓮司!」

「おう!」

蓮司が踏み込む。

「はあっ!」

獅堂が鉤爪で受ける。

だがレイが反対側へ回った。

「……そこだ」

二本の短刀。

キン!

キィン!

獅堂が防ぐ。

しかし――

「ぐっ!」

脇腹の傷。

身体が一瞬止まった。

蒼真が風を纏う。

「風遁・風刃!」

ヒュン!

獅堂が鉤爪を交差させる。

ガキィン!

風刃を防いだ。

だが衝撃で後退する。

「……っ!」

蒼真は追撃しない。

「はぁ……はぁ……」

蓮司が隣へ立つ。

「大丈夫か?」

「何とか」

「何とかって顔じゃねぇぞ」

「お前もな」

蓮司が笑う。

「違いねぇ」

凛も息を荒くしている。

レイは壁に手をついていた。

四人とも限界が近い。

獅堂も同じだった。

「……しぶてぇ奴らだ」

鉤爪を構え直す。

「だが、次で終わらせる」

蒼真が風影刀を握る。

「それはこっちの台詞だ」

獅堂が笑う。

「いいねぇ!」

その時――

ゴゴゴゴ……!

石室が揺れた。

「!」

蒼真が振り返る。

石柱の奥。

『風守の誓い』と刻まれた場所。

そこから風が吹き始めていた。

宗玄も気づく。

「……何?」

玄岳が石板を見る。

「動き出したか」

蒼真が叫ぶ。

「宗玄!」

「分かっている!」

宗玄は風守刀を構える。

玄岳も黒雷を纏う。

二人の視線が交差した。

そして――

同時に踏み込む。

「風守・流転!」

「黒雷遁・黒雷走!」

ゴォォッ!

バチィィン!

風と黒雷が激突する。

石室を震わせる衝撃。

その奥で――

古い布が大きく揺れた。

そして。

布の下に隠されていた石板の文字が、少しずつ姿を現し始める。

蒼真は目を凝らした。

「……!」

そこには、こう刻まれていた。

『風を守る者は、風を継ぐ者を見定めよ』

蒼真が宗玄を見る。

宗玄も、その文字を見ていた。

「……風守の誓い」

風守刀が震える。

玄岳が口元を歪めた。

「ようやく、ここまで来たか」

蒼真は風影刀を握り直した。

まだ戦いは終わっていない。

だが――

風影刀と風守刀。

二本の刀が存在する理由が、少しずつ明らかになろうとしていた。

第126話 完

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