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影狼ノ忍  作者: 次男坊
第4章「夜叉衆暗躍編」
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第121話「風守刀VS黒雷」

バチィィン!!


黒雷が石室を照らす。


玄岳の拳と宗玄の風守刀が激突した。


「黒雷遁・黒雷走!」


玄岳の姿が消える。


右。


左。


背後。


黒い雷光だけが残像のように走る。


宗玄は動かない。


「……」


「遅い!」


玄岳が背後から現れた。


黒雷を纏った拳が宗玄の背中へ迫る。


その瞬間――


宗玄の刀が動いた。


キィン!


「なにっ!?」


振り向いていない。


それでも風守刀が正確に拳を受けていた。


宗玄が身体を返す。


玄岳の腕を刀の腹で流す。


「ぐっ!」


体勢が崩れる。


宗玄の蹴り。


ドッ!


玄岳が吹き飛ぶ。


だが空中で身体を捻り着地した。


「……風で俺を見ているのか」


「見てはいない」


宗玄が風守刀を構える。


「読んでいる」


「同じことだ」


「違う」


宗玄の周囲を静かな風が流れる。


「姿を見る必要がない」


玄岳が笑う。


「なら――」


両手で印を結ぶ。


「読めないほど乱してやる」


黒雷が床へ放たれた。


「黒雷遁・雷鳴煙!」


バチバチバチッ!!


黒雷が石床を走る。


直後。


ボンッ!


黒煙が一気に広がった。


宗玄の姿が煙に包まれる。


蒼真が振り返る。


「宗玄!」


「余所見すんな!」


獅堂の鉤爪が迫る。


「っ!」


ガキィン!


風影刀で受ける。


重い。


蒼真の足元の石が割れた。


「さっきより力落ちてんじゃねぇか!」


「ずっと戦ってたからな!」


蒼真は刀を傾ける。


鉤爪の力を横へ流す。


獅堂が僅かに崩れた。


「蓮司!」


「おう!」


横から蓮司。


刀を振る。


獅堂は反対の鉤爪で受け止める。


ガキィン!


「二人がかりか!」


「四人だ」


レイの声。


獅堂の背後。


「!」


二本の短刀が交差する。


獅堂は前へ跳ぶ。


ザッ!


背中の衣が切れた。


「ちっ!」


着地したところへ――


「水遁・水槍!」


凛の水槍。


ドォン!


獅堂が鉤爪を交差させる。


「ぐっ!」


水圧で押し戻される。


だが凛も片膝をついた。


「はぁ……はぁ……」


蒼真が気づく。


「凛!」


「大丈夫……!」


長時間、人質を守り続けた。


水遁も何度も使った。


凛のチャクラも限界に近い。


レイも肩と脇腹を負傷している。


蓮司も全身傷だらけ。


蒼真自身も同じ。


獅堂がそれを見る。


「なるほどな」


鉤爪を構え直す。


「四人揃ってても、もうボロボロってわけか」


蓮司が息を整える。


「だから?」


「長期戦になれば俺が勝つ」


「なら――」


蓮司が刀を構える。


「長期戦にしなきゃいい」


「言うじゃねぇか!」


獅堂が地面を蹴った。


「煙遁・黒煙陣!」


ボォッ!


黒煙が四人を包み込む。


「またこれか!」


蓮司が周囲を見る。


何も見えない。


音まで歪む。


右から足音。


左から金属音。


前から獅堂の笑い声。


「どこだ!」


「動くな!」


蒼真が叫ぶ。


目を閉じる。


風を読む。


しかし――


「……っ」


煙の中を流れる風が複雑に乱れている。


以前なら獅堂の位置を掴むまで時間がかかった。


だが今は。


蒼真の意識に、細かな空気の流れが入ってくる。


煙。


石柱。


仲間。


そして――


高速で移動する一つの気配。


「右!」


レイが即座に反応する。


ガキィン!


鉤爪と短刀がぶつかる。


「なにっ!?」


レイが片方の短刀で鉤爪を止める。


だが負傷した肩が震えた。


「ぐっ……!」


獅堂が押し込む。


「止めきれねぇだろ!」


そこへ蓮司。


「一人ならな!」


刀を差し込む。


二人で鉤爪を押し返す。


獅堂が反対の腕を振る。


だが――


「凛!」


「分かってる!」


足元に水。


「水遁・水縛!」


水が獅堂の右足へ絡みつく。


「ちっ!」


一瞬だけ動きが止まる。


「蒼真!」


風が集まる。


「風遁・風刃!」


ザァッ!


風刃が黒煙を切り裂いた。


煙が左右へ吹き飛ぶ。


獅堂の姿が露わになる。


蒼真が踏み込んだ。


風影刀と鉤爪が激突する。


ガキィィン!


「ぐっ!」


「おらぁ!」


獅堂の力は強い。


だが蒼真は押し合わない。


宗玄の戦いが一瞬、視界に入る。


――力を受けるな。


――風を見る。


蒼真は刀を僅かに傾けた。


鉤爪が滑る。


「!」


獅堂の身体が前へ流れる。


蒼真が横を抜けた。


ザッ!


獅堂の脇腹が切れる。


「ぐっ!」


獅堂が距離を取った。


血が落ちる。


「てめぇ……」


蒼真も肩で息をする。


「まだ終わってない」


一方。


黒煙の中。


玄岳は高速で宗玄の周囲を走っていた。


バチッ!


バチバチッ!


黒雷。


煙。


足音。


石柱に反射する音。


風の流れを意図的に乱している。


「これならどうだ!」


黒雷が四方向から放たれた。


「黒雷遁・四雷牙!」


四本の黒雷。


宗玄へ同時に迫る。


宗玄が初めて大きく動いた。


風守刀を回転させる。


「風守・流転」


ゴォッ!


宗玄を中心に風が円を描いた。


一本目の黒雷。


僅かに軌道が逸れる。


二本目。


石床へ。


三本目。


石柱へ。


ドォン!


最後の一本。


宗玄が風守刀で受ける。


バチィッ!


「くっ……!」


宗玄の腕に黒雷が走る。


玄岳が笑う。


「完全には流せないようだな!」


煙の中から飛び出す。


「黒雷遁・黒雷走!」


一瞬で間合いを詰める。


拳が宗玄の腹へ――


ドッ!


「……!」


宗玄が後退した。


初めて玄岳の攻撃がまともに入る。


蒼真が気づく。


「宗玄!」


玄岳は追撃する。


「もらった!」


黒雷を纏った拳。


宗玄は風守刀を構えようとする。


だが黒雷を受けた腕が僅かに遅れる。


拳が迫る。


その時。


宗玄の目が玄岳ではなく――


その背後を見た。


「……そこか」


「何?」


宗玄が一歩だけ横へ動く。


玄岳の拳が頬を掠めた。


宗玄は刀を振らない。


代わりに――


足元の小石を蹴った。


コッ。


小石が床を転がる。


玄岳が眉をひそめる。


次の瞬間。


ゴォッ!


乱れていた風の一部が突然変わった。


黒煙が一方向へ流れる。


「なっ……」


玄岳の表情が変わる。


宗玄が黒煙の中から現れた。


「風を乱したつもりだったか」


「……!」


「乱れた風にも流れはある」


風守刀が下から振り上げられる。


ガキィン!


玄岳は黒雷で受ける。


だが――


宗玄は止めない。


刀を滑らせる。


玄岳の腕が外へ流された。


胴が開く。


「しまっ――」


宗玄の掌底。


ドンッ!


玄岳の胸へ入った。


「ぐはっ!」


玄岳が吹き飛ぶ。


ドォン!


石柱へ激突。


「玄岳!」


獅堂が一瞬そちらを見る。


その一瞬。


レイが動いた。


「余所見するな」


短刀が鉤爪の内側へ入る。


キィン!


獅堂の右腕が跳ね上がる。


蓮司が踏み込む。


「もらった!」


刀の柄を腹へ。


ドッ!


「ぐっ!」


獅堂が身体を丸める。


凛が最後の力を集める。


「水遁――」


蒼真が止めた。


「凛、待て!」


「え?」


「使いすぎるな!」


獅堂がその隙に後退する。


四人との距離が開いた。


玄岳も石柱から身体を起こす。


口元から血。


宗玄の右腕にも黒雷による火傷。


誰も無傷ではない。


静寂。


玄岳が宗玄を見る。


「……なるほど」


「何だ」


「お前がここを守り続けていた理由が分かった」


蒼真の表情が変わる。


「守り続けていた?」


宗玄は答えない。


玄岳が笑う。


「そいつらには話していないのか?」


「黙れ」


初めて宗玄の声が強くなった。


玄岳の笑みが深くなる。


「風影刀」


蒼真が握る刀を見る。


「風守刀」


そして宗玄。


「二本が揃えば、この地下深部のさらに奥へ進める」


凛が驚く。


「さらに奥……?」


玄岳が続ける。


「俺たち夜叉衆が、この地下施設を利用した理由も――」


宗玄が動いた。


「玄岳!」


風守刀が迫る。


玄岳は黒雷で受ける。


ガキィン!


「言わせたくないようだな!」


「お前たちが触れていいものではない!」


「だったら守ってみろ!」


黒雷が爆発する。


バチィィン!!


宗玄が後退。


玄岳も下がる。


蒼真は二人を見る。


「宗玄」


「……」


「何がある?」


宗玄は答えない。


「俺たちにも関係あるんだろ?」


沈黙。


その時。


ズズズズ……。


地面が僅かに震えた。


全員が止まる。


蓮司が周囲を見る。


「また崩落か?」


「違う」


蒼真は風影刀を見る。


震えている。


宗玄の風守刀も同じ。


カタカタカタ……。


二本の刀が――


石室のさらに奥へ向かって反応している。


玄岳の顔から笑みが消えた。


「……始まったか」


宗玄が玄岳を睨む。


「何をした」


「俺じゃない」


「なら何だ」


玄岳も奥を見る。


「制御核が壊れた影響だ」


ゴゴゴゴゴ……!


奥の巨大な石壁に一本の亀裂が走った。


蒼真が目を見開く。


亀裂の向こうから――


風が吹いてくる。


強い。


だが荒々しくない。


どこか懐かしいような風。


蒼真の周囲を通り抜け――


風影刀へ集まった。


宗玄の表情が変わる。


「まさか……」


石壁の亀裂がさらに広がる。


その向こうに。


古い石段が現れた。


下ではない。


さらに奥へ続く階段。


宗玄が呟く。


「風の道が……開いた」


蒼真は風影刀を握る。


玄岳。


獅堂。


宗玄。


蓮司。


凛。


レイ。


全員の視線が、同じ場所へ向いた。


戦いはまだ終わっていない。


しかし――


地下深部に眠っていた新たな道が、今まさに姿を現していた。


第121話 完

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