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影狼ノ忍  作者: 次男坊
第4章「夜叉衆暗躍編」
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第115話「休戦終了」

バチッ。


玄岳の右腕を黒雷が走った。


その隣では、獅堂が両腕の鉤爪を構えている。


蒼真は風影刀を握り直した。


「本当にまたやる気か?」


「当然だ」


玄岳の視線は揺れない。


「制御核の異変によって一時的に戦闘を止めただけだ」


蓮司が刀を肩に乗せる。


「こっちは人質を助けたばっかなんだけどな」


「それはこちらには関係ない」


「相変わらずだな」


凛は人質たちの前に立っていた。


誘爆印は完全に消えている。


だが地下迷宮の崩落は止まっていない。


天井から小さな石が落ち続けていた。


レイが周囲を見る。


「長くはいられない」


蒼真も頷く。


「目的は敵を倒すことじゃない」


「地上へ戻ることだな」


蓮司が答える。


「そうだ」


蒼真は玄岳を見る。


「そこを通してもらう」


「断る」


「なら――」


風が蒼真の足元へ集まる。


「突破する!」


蒼真が消えた。


「風遁・風纏!」


一気に玄岳へ迫る。


玄岳も踏み込んだ。


「黒雷遁・黒雷走!」


風と黒雷。


二人が激突する。


ガキィン!


風影刀と黒雷を纏った腕がぶつかった。


「ぐっ!」


蒼真の腕が痺れる。


だが玄岳も顔をしかめた。


「……速くなった?」


先ほどまでとは違う。


蒼真自身も感じていた。


風の動きがはっきり分かる。


玄岳が次にどこへ踏み込むのか。


その直前に起こる空気の乱れまで感じ取れる。


玄岳の左拳が動く。


蒼真は半歩下がった。


ブンッ!


拳が空を切る。


「……!」


玄岳が目を見開く。


蒼真は風影刀を返した。


ザッ!


玄岳の胸元の衣が裂ける。


玄岳が大きく後退した。


「今のは……」


蒼真自身も風影刀を見る。


「さっきより……風が読める」


だが考えている暇はない。


「余所見してんじゃねぇ!」


獅堂が横から飛び込む。


巨大な鉤爪が蒼真へ迫った。


その間に蓮司が割り込む。


ガキィィン!


刀と鉤爪が激突した。


「お前の相手は俺だ!」


「力比べか?」


「違う!」


獅堂が押し込む。


蓮司は真正面から耐えない。


刀の角度を変える。


「その力――」


鉤爪を横へ滑らせる。


「借りるぞ!」


獅堂の身体が前へ流れた。


「なにっ!」


蓮司はその勢いを利用して足を払う。


獅堂が片膝をつく。


「ちっ!」


「前より力任せじゃなくなっただろ?」


「面白ぇ!」


獅堂が笑いながら立ち上がる。


再び鉤爪を構えた。


「なら付き合ってやる!」


二人が激突する。


その後方。


凛は人質たちへ振り返った。


「ここから動きます!」


「え……?」


「今なら印はありません。出口まで走れます」


人質の一人が不安そうに周囲を見る。


「でも……あの人たちは……」


「大丈夫です」


凛は水を足元へ広げた。


「私たちが守ります」


その時。


「火遁・火球!」


炎遁の忍が再び動いた。


火球が人質へ飛ぶ。


凛が振り返る。


「水遁・水壁!」


ジュウウウッ!


水と炎が衝突する。


大量の蒸気。


炎遁の忍が煙の中から苦無を投げた。


シュッ!


だが――


キィン!


二本の短刀が苦無を弾く。


レイだった。


「凛」


「うん」


「人質を連れて行け」


「レイは?」


「ここを止める」


雷遁の忍も現れる。


さらに土遁の忍。


三人がレイの前に並んだ。


凛が一瞬迷う。


「三人も……」


「問題ない」


レイは二本の短刀を構える。


肩からはまだ血が流れている。


「長く戦う必要はない」


凛はその言葉の意味を理解した。


「……分かった」


人質たちへ振り返る。


「行きます!」


凛が走り出す。


人質たちも続いた。


炎遁の忍が追おうとする。


「逃がすな!」


しかし――


レイが目の前に現れた。


「行かせない」


右の短刀。


左の短刀。


二本が交差する。


ガキィン!


炎遁の忍の苦無を弾く。


雷遁の忍が横から踏み込んだ。


「雷遁・雷刃!」


レイは身体を沈める。


雷刃が頭上を通過する。


そのまま足を払う。


「ぐっ!」


土遁の忍が印を結ぶ。


「土遁・土槍!」


地面から槍が突き出す。


レイは壁を蹴ってかわした。


肩に激痛が走る。


「……っ!」


着地が僅かに乱れる。


三人が同時に動いた。


「逃がすな!」


レイの目が鋭くなる。


「……来い」


一方。


凛は人質たちを連れて通路を進んでいた。


「こっちです!」


地下迷宮は動きを止めている。


だが崩落によって道が塞がれている場所もある。


「前が……!」


巨大な岩が通路を塞いでいた。


凛が足を止める。


「こんな時に……」


後ろには人質たち。


戻るわけにはいかない。


凛は水を集める。


「水遁・水槍!」


水の槍が岩へ激突する。


ドンッ!


亀裂が入る。


だが壊れない。


「もう一度!」


水を集める。


その時。


凛の耳に風の音が届いた。


「……風?」


岩の僅かな隙間から空気が流れている。


地上へ続いている。


「この向こう……!」


凛は再び構えた。


「絶対に通す!」


地下中央では、蒼真と玄岳の戦いが激しさを増していた。


バチッ!


ガキィン!


玄岳が黒雷を纏って連撃を放つ。


蒼真は風の流れを読み、かわしていく。


右。


左。


後ろ。


玄岳の拳が当たらない。


「なぜだ……」


玄岳の表情が変わる。


「先ほどまでとは違う」


蒼真も気づいている。


制御核から現れた白い光。


風影刀へ向かった光。


あれ以降――


風が以前より鮮明に感じられる。


だが。


「今はどうでもいい!」


蒼真が踏み込む。


「風遁・風刃!」


玄岳が黒雷で受ける。


バシュッ!


二人が弾かれる。


玄岳が着地。


蒼真も着地する。


その瞬間。


「蒼真!」


蓮司の声。


獅堂の鉤爪を受けながら叫んでいる。


「凛たちが先に行った!」


「分かった!」


「俺たちも抜けるぞ!」


蒼真は玄岳を見る。


「ここで決着をつける必要はない」


玄岳が黒雷を纏う。


「逃がすと思うか?」


「逃げるんじゃない」


蒼真の周囲を風が渦巻く。


「守るために戻るんだ」


玄岳が地面を蹴った。


「黒雷遁・黒雷走!」


蒼真も踏み込む。


「風遁・風纏!」


風と黒雷が正面からぶつかる。


その瞬間――


ドォォォン!


地下迷宮の奥から巨大な崩落音が響いた。


全員の動きが止まる。


蓮司が振り返る。


「今の……」


蒼真の顔色が変わった。


風が伝えてくる。


通路の奥。


凛たちが向かった方向。


大量の空気が一気に動いた。


「凛……!」


蒼真が玄岳との戦いを放棄し、走り出す。


「待て!」


玄岳が追おうとする。


だが――


バキバキバキッ!


二人の間に天井が崩れ落ちた。


ドォン!


巨大な岩が通路を塞ぐ。


「蒼真!」


蓮司も走る。


獅堂は追おうとしたが、さらに崩落が起きる。


蒼真と蓮司。


玄岳と獅堂。


二組が完全に分断された。


玄岳は崩れた岩壁を睨む。


「……」


獅堂が鉤爪を下ろす。


「追うか?」


玄岳はしばらく答えなかった。


その向こうでは――


蒼真が走っていた。


「凛!」


蓮司も続く。


「レイもまだ残ってるぞ!」


「分かってる!」


地下迷宮の崩壊が再び始まった。


そしてその先。


凛と人質たちがいる通路にも――


新たな亀裂が走っていた。


第115話 完

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