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影狼ノ忍  作者: 次男坊
第4章「夜叉衆暗躍編」
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114/182

第114話「零秒」

『00:00:00』


ドォォォォォン!!


制御核から噴き出した白い光が、地下空間を一瞬で飲み込んだ。


「全員伏せろ!!」


蒼真が風影刀を地面へ突き立てる。


「風遁・風壁!」


巨大な風の壁が広がった。


凛も人質の前へ出る。


「水遁・水壁!」


水と風が重なり、人質たちを包み込む。


蓮司は刀を地面へ突き立てた。


「うおおおっ!」


レイも低く身構える。


獅堂は両腕の鉤爪を石床へ食い込ませた。


玄岳は黒雷を全身へ纏う。


次の瞬間――


白い光が直撃した。


ズドォォォン!!


「ぐっ……!」


蒼真の両腕に凄まじい負荷がかかる。


風壁が大きく歪んだ。


「蒼真!」


「まだ……持つ!」


凛の水壁も激しく波打っている。


人質たちは身を寄せ合い、頭を抱えていた。


「絶対に水壁から出ないで!」


白い光がさらに強まる。


「ぐっ……!」


凛の膝が落ちる。


その横へ蓮司が走った。


「凛!」


「来ないで! 蓮司は上を!」


天井から岩が落下する。


「分かった!」


蓮司が刀を構える。


落下する岩へ刃を当て――


「そっちだ!」


力の方向を逸らす。


ドォン!


岩が人質から離れた場所へ落ちた。


さらに別の岩。


その瞬間、二本の短刀が走る。


ガキン!


レイが小さな破片を弾いた。


だが肩の傷が響く。


「……っ!」


レイの動きが僅かに止まった。


巨大な岩が頭上から落ちる。


ガキィィン!


獅堂の鉤爪が受け止めた。


「こんなところで潰されんな!」


レイが獅堂を見る。


「また助けられた」


「だから礼はいらねぇ!」


獅堂が岩を横へ投げ飛ばす。


地下迷宮は崩壊を始めていた。


壁が割れ。


床が裂け。


天井が崩れる。


だが――


蒼真は違和感に気づいた。


「……待て」


白い光は強烈だった。


それでも。


熱くない。


身体を焼くような痛みもない。


「この光……」


玄岳も気づく。


黒雷を纏った腕を見る。


バチッ。


白い光が触れるたび、黒雷が消えていく。


「まさか……」


夜叉衆の忍たちにも異変が起きていた。


炎遁の忍が術を使おうとする。


「火遁――」


しかし。


印を結んでも炎が出ない。


「なっ……!」


土遁の忍も地面へ手をつける。


「土遁・土壁!」


何も起こらない。


雷遁の忍も同じだった。


「雷遁……!」


雷が出ない。


蓮司が目を見開く。


「忍術が消えてる?」


玄岳が低く呟く。


「違う」


「何?」


「術が消えたんじゃない」


白い光が地下に残された黒い術式を次々と消していく。


「夜叉衆が重ねた術式だけが……解除されている」


蒼真が風壁を維持しながら制御核を見る。


「だったら、この光は――」


バキィィッ!


制御核の外殻が大きく割れた。


「来るぞ!」


玄岳が叫ぶ。


二度目の衝撃波。


ドォォォン!


今度は黒い術式が一斉に砕け散った。


地下に張り巡らされていた黒い管。


増幅札。


迷宮を動かしていた術式。


それらから黒い光が消えていく。


ゴゴゴゴゴ……。


動き続けていた壁が止まった。


蓮司が周囲を見る。


「迷宮が……止まった?」


凛も人質の首元を確認する。


誘爆印は戻っていない。


「印も消えたまま……」


蒼真はゆっくり風壁を弱めた。


白い光が薄くなっていく。


やがて――


静寂。


誰も動かなかった。


地下に残ったのは、崩れた石。


破壊された黒い管。


そして中央にあった制御核。


その外殻は完全に割れていた。


だが――


「……何だ、あれ」


蓮司が呟いた。


割れた制御核の中心。


そこには何もないと思われていた。


しかし。


白い光が消えた場所に、小さな石のようなものが残っている。


蒼真が近づこうとする。


「待て」


玄岳が止めた。


「触るな」


蒼真が振り返る。


「知ってるのか?」


「いや」


「じゃあ何で止める」


玄岳は黙る。


獅堂も鉤爪を構えながら近づいた。


「俺も初めて見るな」


凛が人質から離れないまま尋ねる。


「制御核の中に入ってたってこと?」


「そうみたいだ」


蒼真は風を使って様子を探る。


しかし――


「……風が変だ」


「どういうこと?」


「周りの風が、あれを避けてる」


レイが目を細める。


「危険?」


「分からない」


その時。


カチッ。


小さな石に亀裂が入った。


全員が構える。


「まだ何かあるのかよ!」


蓮司が刀を握る。


亀裂から、僅かな白い光が漏れる。


だが今度は衝撃波ではない。


光はゆっくりと浮かび上がり――


蒼真の持つ風影刀へ向かった。


「……!」


風影刀が震える。


カタカタカタ……。


蒼真が柄を握る。


「風影刀が……反応してる?」


玄岳が蒼真を見る。


「その刀……」


蒼真の表情が変わる。


「何だ」


「なぜ、その刀が反応する?」


「俺が聞きたい」


白い光が風影刀の周囲を漂う。


そして――


フッ。


突然、消えた。


同時に。


小さな石も砕け、ただの灰になった。


沈黙。


獅堂が眉をひそめる。


「……終わったのか?」


蒼真は風影刀を見る。


何も変わっていない。


少なくとも、見た目は。


だが――


「……違う」


蒼真には分かった。


刀を握った瞬間。


今まで感じていた風とは違う。


地下の奥。


通路。


地上へ続く空気。


その流れが、以前よりもはっきり感じられる。


凛が声をかける。


「蒼真?」


「……いや」


蒼真は首を振った。


「今は人質を外へ出すのが先だ」


蓮司が頷く。


「だな」


レイも短刀を収めようとする。


だが――


玄岳が黒雷を纏った。


バチッ。


蒼真たちが一斉に振り向く。


「玄岳……」


「忘れたか?」


黒雷は先ほどより弱い。


それでも確かに戻っている。


獅堂も鉤爪を構え直した。


「休戦はここまでってことか」


玄岳が蒼真を見る。


「誘爆印は消えた」


「制御核も止まった」


「ならば――」


黒雷が腕を走る。


「我々が戦いを止める理由もない」


蒼真は風影刀を構えた。


蓮司も刀を抜く。


レイは二本の短刀を構える。


凛は人質の前に立つ。


地下迷宮は止まった。


人質を巻き込む誘爆印も消えた。


だが。


夜叉衆との戦いは――


まだ終わっていなかった。


第114話 完

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