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影狼ノ忍  作者: 次男坊
第4章「夜叉衆暗躍編」
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113/182

第113話「残り三分」

『00:02:58』


『00:02:57』


赤い数字が減っていく。


制御核から伸びる白い光は、蒼真の風と凛の水によって人質の誘爆印へ導かれていた。


赤く染まっていた印の一部が、少しずつ白へ変わっていく。


「そのまま……!」


凛が水の流れを維持する。


人質は首元を押さえながら耐えていた。


「熱い……」


「もう少しです!」


蒼真も風を弱めない。


「風の流れを乱すな……」


白い光が揺れる。


強すぎれば制御核への負担が増える。


弱すぎれば誘爆印まで届かない。


「もっと右……」


風を僅かに変える。


白い光が水面に沿って進む。


誘爆印へ流れ込んだ。


バチッ!


赤い部分がさらに消える。


蓮司が声を上げる。


「半分くらい消えたぞ!」


「まだだ!」


蒼真が答える。


その瞬間。


バキッ!


制御核の亀裂が広がった。


白い光が一瞬乱れる。


「っ!」


蒼真が踏ん張る。


玄岳が制御核を見る。


「限界が近い」


獅堂が鉤爪を下ろしたまま聞く。


「あとどれくらい持つ?」


「分からない」


「分からねぇことばっかりだな」


「想定されていない状態だと言ったはずだ」


玄岳は制御核へ近づいた。


「だが、このままでは三分も持たない」


蒼真が玄岳を見る。


「だったら何かしろ!」


「命令するな」


「今は言い争ってる場合じゃないだろ!」


玄岳が一瞬黙る。


そして制御核へ両手を向けた。


「黒雷遁・黒雷壁」


黒い雷が制御核の周囲へ広がる。


ただし、白い光の流れは塞がない。


亀裂の大きな部分だけを外側から覆っていく。


蒼真が驚く。


「亀裂を押さえてるのか?」


「長くは持たない」


玄岳の腕が震える。


「早くしろ」


「言われなくても!」


蒼真が再び集中する。


その時――


ゴゴゴゴゴ!


地下迷宮全体が大きく揺れた。


「きゃっ!」


凛が体勢を崩す。


水の流れが乱れた。


「凛!」


「大丈夫!」


凛はすぐに両手を戻す。


だが天井から大きな岩が落下した。


「危ない!」


蓮司が走る。


刀を構え――


「はぁっ!」


岩の側面へ刃を当てる。


落下する力を横へ流した。


ドォン!


岩が人質から離れた場所へ落ちる。


「今度は俺が守る!」


レイも周囲を見る。


「上」


さらに複数の石が落ちてくる。


レイが走った。


二本の短刀で小さな破片を弾く。


キィン!


ガキッ!


ザッ!


しかし肩の傷が響く。


「……っ」


動きが僅かに遅れた。


大きな岩が一つ、レイへ落ちる。


「レイ!」


蓮司が駆ける。


その前に――


ガキィィン!


巨大な鉤爪が岩を受け止めた。


レイが顔を上げる。


獅堂だった。


「……」


「勘違いすんなよ」


獅堂が力を込める。


「俺まで生き埋めになるのは御免なだけだ!」


岩を横へ投げる。


ドォン!


レイは短く答えた。


「助かった」


「礼はいらねぇ」


獅堂は再び天井を見る。


「来るぞ!」


さらに崩落が始まった。


『00:02:11』


『00:02:10』


二分十秒。


誘爆印は三分の二ほど白くなっている。


凛が首元を見る。


「あと少し……!」


だが――


「蒼真!」


蓮司が叫ぶ。


「何だ!」


「さっきの管!」


床下から黒い光が漏れている。


これまで流れを乱した管とは別の場所。


一本。


さらに一本。


地下迷宮の奥から黒い光が制御核へ戻り始めていた。


玄岳の表情が変わる。


「最終処理が流れを作り直している」


「せっかく止めたのにか!」


「制御核が残った経路へ力を集中させている」


レイが黒い光を見る。


「止める」


「待て!」


蒼真が叫ぶ。


「今、管を壊したら白い光まで乱れるかもしれない!」


レイが止まる。


「なら?」


蒼真は周囲の風を読む。


白い光。


黒い光。


凛の水。


玄岳の黒雷。


すべてが制御核の周囲で交差している。


「……流れを分ける」


凛が蒼真を見る。


「できるの?」


「やる」


蒼真は風影刀を地面へ突き立てた。


両手を開く。


「風遁・風環!」


二つの風の渦が生まれた。


一つは白い光を人質へ。


もう一つは黒い光を制御核から逸らす。


「ぐっ……!」


蒼真の腕が震える。


二つの流れを同時に操る。


これまで以上に細かな制御が必要だった。


玄岳が驚いたように見る。


「二つの風を……同時に?」


蒼真は答えない。


集中が切れれば終わる。


黒い光が少しずつ逸れていく。


白い光は誘爆印へ流れ続ける。


『00:01:39』


「一分四十秒!」


蓮司が叫ぶ。


誘爆印。


残る赤い部分は三分の一以下。


「間に合う!」


凛が水量を増やす。


「焦るな!」


蒼真が叫ぶ。


「急に増やしたら流れが崩れる!」


「……分かった!」


凛は呼吸を整える。


少しずつ。


確実に。


白い光を導く。


だが制御核は限界だった。


ピシッ。


ピシッ。


バキッ!


黒雷壁にも亀裂が入る。


玄岳の膝が落ちた。


「ぐっ……!」


獅堂が振り向く。


「玄岳!」


「来るな!」


「でもよ!」


「お前は崩落を止めろ!」


獅堂は舌打ちする。


「面倒な仕事ばっかり増やしやがって!」


鉤爪を天井へ向ける。


「煙遁・黒煙陣!」


黒煙が上空へ広がる。


落ちてくる小さな石の位置が煙の動きで浮かび上がる。


獅堂が次々と鉤爪で弾いていく。


その横で、蓮司とレイも人質を守る。


誰も戦っていない。


だが全員が必死だった。


『00:01:02』


『00:01:01』


一分。


誘爆印に残る赤い部分は僅か。


凛の顔に希望が浮かぶ。


「もう少し!」


蒼真も叫ぶ。


「そのまま!」


『00:00:59』


『00:00:58』


制御核から大きな音が響く。


バキィィッ!


玄岳の黒雷壁が砕けた。


「ぐあっ!」


玄岳が吹き飛ばされる。


制御核の亀裂が一気に広がった。


白い光が暴れ始める。


「蒼真!」


「分かってる!」


風で押さえる。


しかし強すぎる。


「ぐっ……!」


蒼真の足が地面を滑る。


『00:00:41』


人質の誘爆印。


残る赤い部分はほんの僅か。


「消えろ……!」


凛が歯を食いしばる。


『00:00:30』


三十秒。


制御核の表面が崩れ始める。


破片が浮き上がる。


白い光が地下全体を照らす。


『00:00:20』


「あと少し!」


『00:00:15』


誘爆印の赤が消えていく。


『00:00:10』


蒼真が叫ぶ。


「凛!」


「いける!」


『00:00:09』


『00:00:08』


『00:00:07』


白い光が最後の赤い部分へ流れ込む。


『00:00:06』


『00:00:05』


バチッ!


誘爆印が完全に白く染まった。


そして――


スッ。


人質の首元から印そのものが消えた。


「消えた!」


凛が叫ぶ。


『00:00:04』


だが数字は止まらない。


『00:00:03』


蒼真の表情が変わる。


「待て……」


『00:00:02』


蓮司が制御核を見る。


「印は消えたんだろ!?」


『00:00:01』


玄岳が目を見開く。


「制御核の最終処理は――」


『00:00:00』


数字が止まった。


一瞬。


完全な静寂。


次の瞬間。


ドォォォォォン!!


制御核から凄まじい白い光が噴き出した。


「全員伏せろ!!」


蒼真の声が地下迷宮に響いた。


第113話 完

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