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影狼ノ忍  作者: 次男坊
第4章「夜叉衆暗躍編」
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112/182

第112話「白い光」

ドクン。


制御核の奥から響いた音に、地下にいる全員の動きが一瞬止まった。


『00:04:58』


『00:04:57』


時間だけが減っていく。


制御核の亀裂から溢れる白い光は、次第に強くなっていた。


蒼真は玄岳を見る。


「説明しろ」


「……」


「お前も知らないのか?」


玄岳は答えない。


獅堂が鉤爪を下ろした。


「玄岳。俺にも聞かされてねぇぞ」


「当然だ」


「何?」


「この状態は想定されていない」


獅堂の顔から笑みが消える。


「じゃあ、あの白い光は何だ」


玄岳は制御核を睨んだ。


「分からない」


「は?」


「この装置は俺が作ったものではない」


蒼真の眉が動く。


玄岳が続ける。


「俺たちは、この地下に残されていた術式を利用しただけだ」


「……残されていた?」


「古い術式を起動し、夜叉衆の術式を重ねた」


凛が人質を守りながら制御核を見る。


「じゃあ……」


水面に映る白い光。


黒い力を押し返す流れ。


「白い光は、夜叉衆の術じゃない」


玄岳は答えなかった。


だが、その沈黙で十分だった。


ドクン。


再び鼓動。


ピシッ!


制御核の亀裂が広がる。


白い光が一気に噴き出した。


「っ!」


蒼真たちが腕で目を覆う。


その光が地下を走る黒い管へ触れた。


バチッ!


「何だ!?」


蓮司の近くにあった管から黒い光が逆流する。


一本。


二本。


さらに奥の管まで。


レイが目を細めた。


「黒い力が……戻っている」


「制御核から?」


「違う」


レイは白い光を見る。


「押し返されてる」


玄岳が印を結ぶ。


「まずい!」


「黒雷遁・黒雷壁!」


制御核の周囲に黒雷の壁が広がる。


白い光がぶつかった。


バチバチバチッ!


「ぐっ……!」


玄岳の腕が震える。


蒼真が驚く。


「お前……何してる?」


「これ以上広げさせない!」


「さっきまで制御核を守ってたお前が?」


「状況が変わった!」


玄岳が叫ぶ。


「このままでは、誘爆印まで制御不能になる!」


凛が人質を見る。


首元の誘爆印。


赤。


白。


赤。


白。


二つの光が交互に点滅している。


「印が不安定になってる……!」


人質の一人が震える。


「わ、私たちは……」


凛がすぐに振り返った。


「大丈夫です。動かないでください」


炎遁の忍も攻撃を止め、制御核を見ていた。


「玄岳様……」


「お前たちは持ち場を離れるな!」


「しかし!」


「命令だ!」


その瞬間だった。


ドォン!


制御核から白い衝撃波が放たれる。


「伏せろ!」


蒼真が風を広げた。


「風遁・風壁!」


風の壁が仲間と人質の前に展開される。


白い衝撃波がぶつかる。


ズドォォン!


「ぐっ……!」


蒼真の足が滑る。


凛も水壁を重ねる。


「水遁・水壁!」


風と水。


二つの防御が人質を包む。


蓮司は刀を地面へ突き立てた。


レイも低く身構える。


獅堂は両腕の鉤爪を床へ食い込ませた。


「なんつう力だ……!」


玄岳の黒雷壁にも亀裂が走る。


そして――


バァン!


黒雷壁が砕けた。


玄岳が吹き飛ばされる。


「ぐあっ!」


「玄岳!」


獅堂が叫ぶ。


蒼真はすぐに制御核を見る。


白い光はまだ止まっていない。


だが――


「……待て」


風の流れが変わった。


蒼真が目を閉じる。


「どうした?」


蓮司が聞く。


「この光……」


蒼真は制御核へ一歩近づいた。


「俺たちを狙ってない」


「何?」


「さっきから全部、黒い力がある場所に流れてる」


凛も気づく。


「じゃあ……白い光は……」


「夜叉衆の術式だけを押し返してる?」


レイが黒い管を見る。


管を流れていた黒い光が急速に弱まっていく。


『00:03:51』


『00:03:50』


時間は止まらない。


だが数字の減り方とは別に、誘爆印の赤い光が僅かに薄くなっていた。


凛が声を上げる。


「蒼真!」


「分かってる!」


白い光が誘爆印に触れるたび、赤色が薄くなる。


「これなら……誘爆印を止められるかもしれない!」


玄岳が身体を起こす。


「甘い」


「何?」


「白い光が完全に印へ流れれば、確かに誘爆印は消えるかもしれない」


玄岳は口元の血を拭った。


「だが制御核が先に壊れればどうなるか、誰にも分からない」


蒼真が制御核を見る。


亀裂はさらに広がっている。


ピシッ。


ピシピシッ。


このままでは長く持たない。


「だったら……」


蒼真が風影刀を下ろした。


「壊さずに、白い光だけを誘爆印へ送る」


蓮司が振り返る。


「そんなことできんのか?」


「分からない」


「またそれかよ!」


「でもやるしかない!」


蒼真は制御核へ近づく。


玄岳が立ち上がった。


「何をする気だ」


「風で流れを作る」


「馬鹿な。あれは普通の風では――」


「分かってる!」


蒼真が風影刀を握る。


「だから、直接触らない」


制御核の周囲を風が回り始める。


「風遁・風環!」


白い光の周囲に渦が生まれる。


蒼真は光そのものではなく、光が流れる周囲の空気を動かしていく。


少しずつ。


慎重に。


「凛!」


「うん!」


凛も理解する。


水を床へ流した。


白い光が水面に反射する。


「水で道を作る!」


細い水路が制御核から人質へ伸びる。


レイが周囲を見る。


「敵は?」


蓮司が刀を構えた。


「今だけでも止める」


三人の夜叉衆の忍も動けずにいた。


獅堂が鉤爪を構える。


「俺はどうすりゃいい?」


玄岳は数秒黙った。


そして――


「……待て」


獅堂が眉をひそめる。


「いいのか?」


「誘爆印が暴走すれば、我々も地下から出られない」


蒼真が玄岳を見る。


「今だけ休戦ってことか?」


「勘違いするな」


黒雷を纏った玄岳が制御核へ向き直る。


「お前たちを助けるわけではない」


「十分だ」


蒼真は再び集中する。


風。


水。


白い光。


三つが少しずつ一本の流れになっていく。


白い光が人質へ伸びる。


誘爆印が反応した。


バチッ!


「うっ……!」


人質が膝をつく。


「動かないで!」


凛が支える。


白い光が首元へ触れる。


真紅の誘爆印が激しく点滅する。


『00:02:59』


三分を切った。


そして――


誘爆印の一部が白く変わった。


「いける!」


蓮司が叫ぶ。


だが同時に。


バキッ!


制御核から大きな破裂音が響いた。


蒼真が振り向く。


亀裂が中央まで達している。


「まずい……!」


玄岳が叫んだ。


「制御核が持たない!」


残り三分。


誘爆印の解除が先か。


制御核の崩壊が先か。


蒼真は風影刀を強く握った。


「絶対に間に合わせる!」


地下迷宮を、白い光が駆け抜けた。


第112話 完

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