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影狼ノ忍  作者: 次男坊
第4章「夜叉衆暗躍編」
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111/182

第111話「制御核の亀裂」

『00:06:58』


『00:06:57』


制御核に走った亀裂。


その隙間から、白い光が漏れ続けていた。


凛が人質を庇いながら目を細める。


「黒い光じゃない……」


蓮司も一瞬だけ制御核を見る。


「何なんだ、あれ?」


レイは答えず、白い光の動きを見ていた。


一方――


蒼真に考える余裕はない。


「黒雷遁・黒雷走!」


玄岳が正面から迫る。


「煙遁・黒煙爪!」


獅堂は横から鉤爪を振るう。


「風遁・風纏!」


蒼真が風を纏った。


黒雷の拳をかわす。


直後に身体を沈め、獅堂の鉤爪を避ける。


ザンッ!


背後の石壁が深く抉られた。


「まだだ!」


獅堂がもう片方の鉤爪を振り抜く。


蒼真は風影刀で受けた。


ガキィン!


「ぐっ……!」


重い。


腕が痺れる。


その隙を玄岳は逃さない。


「黒雷遁・黒雷掌!」


掌から黒雷が放たれる。


蒼真は風を足元へ集中させた。


「風遁・風圧!」


ドォン!


風圧で身体を後方へ飛ばす。


黒雷が胸元を掠めた。


バチッ!


「っ……!」


着地した蒼真の身体が僅かに揺れる。


「二人同時は……さすがにきついな」


獅堂が笑った。


「もう終わりか?」


「まさか」


蒼真は風影刀を構え直す。


「まだ六分以上ある」


玄岳が目を細めた。


「その六分が長いと思うか?」


「十分だ」


蒼真は仲間たちを見ない。


それでも風で位置は分かる。


蓮司。


レイ。


凛。


人質。


「俺が六分耐えればいい」


玄岳の黒雷が強くなる。


「できるものならな」


二人が再び踏み込んだ。


その頃。


蓮司は壁へ走っていた。


「蒼真が言ってた三本……この辺だな!」


土遁の忍が追う。


「行かせるか!」


「土遁・土槍!」


壁から岩の槍が突き出す。


蓮司は刀を横に構えた。


真正面から受けない。


槍の側面へ刃を当てる。


「ふっ!」


力の方向を変える。


岩槍が横へ逸れ――


ドォン!


そのまま壁へ突き刺さった。


石が崩れる。


その奥から黒い管が姿を現した。


「一つ!」


土遁の忍が顔色を変える。


「貴様!」


「ありがとな!」


蓮司が踏み込む。


敵が拳を振る。


蓮司は身体をずらし、腕へ刀の腹を添えた。


「その力も借りるぞ!」


勢いをそのまま流す。


土遁の忍の拳が黒い管へ叩き込まれた。


バキッ!


管に亀裂が走る。


黒い光が乱れた。


『00:06:11』


制御核の赤い光が僅かに弱くなる。


「次!」


蓮司が走り出した。


反対側。


レイは雷遁の忍と向かい合っている。


肩の傷はさらに開いていた。


血が腕を伝っている。


敵が苦無を構えた。


「その腕で、まだ戦うか?」


「腕は動く」


「なら折る」


「雷遁・雷走!」


敵が消える。


レイは動かない。


雷の音。


足音。


僅かな殺気。


「右」


ガキィン!


短刀で苦無を受け止める。


そのまま左の短刀を振る。


敵が後退した。


レイは追わない。


視線は天井へ向いていた。


「……上に一本」


蒼真が見つけた管。


天井を走る黒い線。


だが高さがある。


レイが二本の短刀を構えた。


雷遁の忍が笑う。


「届かない」


「自分では」


「何?」


レイが敵を見る。


「お前なら届く」


雷遁の忍の表情が変わった。


「まさか――」


「来い」


レイが僅かに構えを下げる。


挑発。


敵の額に青筋が浮かぶ。


「雷遁・雷刃!」


雷を纏った苦無が振り上げられる。


レイは走った。


敵も踏み込む。


「雷遁・雷走!」


高速の突進。


その瞬間。


レイは壁を蹴った。


身体を横へ回転させる。


敵の苦無が空を切り――


そのまま天井へ向いた。


「……!」


「そこ」


レイが敵の手首を蹴り上げる。


バチィィン!


雷刃が天井の管へ突き刺さった。


黒い光が逆流する。


「ぐあっ!」


雷遁の忍まで感電し、地面へ落ちる。


レイも着地に失敗し、片膝をついた。


「……っ」


肩を押さえる。


それでも顔を上げた。


「一つ、止めた」


『00:05:37』


残り時間が減っていく。


その時だった。


カチッ。


また音がした。


制御核の亀裂が広がる。


ピシッ。


ピシピシッ。


白い光が強くなる。


凛が気づいた。


「待って……」


人質を守りながら制御核を見る。


白い光は漏れているだけではない。


赤い光を押し返している。


「もしかして……」


凛は床へ水を流した。


薄い水が制御核の周囲へ広がっていく。


水面に光が反射する。


赤。


黒。


そして白。


凛は流れを観察した。


「違う……」


炎遁の忍が迫る。


「何をしている!」


「火遁・炎弾!」


複数の炎弾が飛ぶ。


凛は片手を向ける。


「水遁・水壁!」


ジュウウウッ!


水蒸気が広がる。


凛は防ぎながら叫んだ。


「蒼真!」


激しい攻防の中、蒼真が反応する。


「何だ!」


「その白い光!」


玄岳の拳をかわす。


「白い光がどうした!」


「制御核を壊してるんじゃない!」


凛が水面を見る。


白い光が黒い流れを押し返している。


「中から黒い力を押し出してる!」


玄岳の動きが一瞬止まった。


蒼真はそれを見逃さなかった。


「玄岳?」


「……」


「お前、知ってるな?」


玄岳は答えない。


代わりに黒雷を放つ。


「黒雷遁・黒雷槍!」


鋭い黒雷が飛ぶ。


蒼真は風影刀を振る。


「風遁・風刃!」


二つの術が激突する。


バァン!


蒼真は爆風の中から踏み込んだ。


「答えろ!」


ガキィン!


風影刀と玄岳の腕がぶつかる。


「制御核の中に何がある!」


玄岳が歯を食いしばる。


「お前には関係ない」


「だったら何で焦ってる!」


「……!」


蒼真の蹴りが玄岳の腹へ入る。


ドッ!


玄岳が後退する。


獅堂が横から襲いかかる。


「余所見すんな!」


鉤爪が迫る。


蒼真は風影刀で受けた。


ガキィン!


だが獅堂の力に押される。


「ぐっ……!」


「一人で二人を止めるんじゃなかったのか!」


「止めてるだろ……!」


蒼真の風が強まる。


「今もな!」


風が爆発する。


ドォン!


獅堂が数歩押し戻された。


その瞬間。


ピシィッ!


制御核の亀裂が大きく広がった。


白い光が地下空間を照らす。


そして――


人質の首元。


真紅だった誘爆印が、一瞬だけ白く点滅した。


凛の目が見開かれる。


「誘爆印まで……!」


玄岳が初めて大きく表情を変えた。


「まずい……!」


蒼真が振り向く。


「何がまずい!」


玄岳は制御核を睨む。


「その光を止めろ!」


「何?」


「今すぐ止めろ!」


獅堂も玄岳を見る。


「おい。どういうことだ?」


「予定と違う」


玄岳の額から汗が落ちる。


「制御核の内側が……目覚め始めている」


再び亀裂が走った。


ピシッ。


白い光がさらに強くなる。


『00:04:59』


残り五分。


だが蒼真たちの視線は、もう数字だけには向いていなかった。


制御核の中から――


ドクン。


まるで鼓動のような音が響いた。


第111話 完

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