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影狼ノ忍  作者: 次男坊
第4章「夜叉衆暗躍編」
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第109話「鉤爪の獅堂」

ガキンッ!


巨大な鉤爪同士を擦り合わせ、獅堂がゆっくりと歩いてくる。


その一歩ごとに、地下の石床が軋んだ。


蒼真は風影刀を構える。


「鉤爪の獅堂……」


「名前なんて覚える必要はねぇ」


獅堂が笑う。


「すぐに倒れるんだからな」


蓮司が前へ出る。


「随分と自信満々だな」


「試してみるか?」


獅堂が一瞬で距離を詰めた。


「っ!」


ガキィン!


蓮司が刀で鉤爪を受け止める。


重い。


腕が大きく沈む。


「ぐっ……!」


「その程度か!」


獅堂がもう片方の鉤爪を振り上げる。


蓮司は身体を捻ってかわした。


ザンッ!


鉤爪が石床を深く切り裂く。


「こいつ……!」


蓮司が距離を取る。


獅堂は追撃しない。


「力だけだと思ったか?」


「……何?」


獅堂の足元に黒い煙が広がった。


「煙遁・黒煙陣」


黒煙が一気に広がる。


「全員、見えなくなるぞ!」


蒼真が叫ぶ。


視界が完全に消えた。


「凛、人質から離れるな!」


「分かってる!」


「レイ!」


「いる」


「蓮司!」


「こっちだ!」


声だけが頼りだった。


その時。


シュッ!


黒煙の中から鉤爪が飛び出した。


「蓮司!」


ガキィン!


蓮司が受け止める。


だが――


「そこだ!」


別の鉤爪が横から迫る。


「くっ!」


蓮司が身を低くする。


鉤爪が頭上を通過した。


「二本……いや」


蓮司は目を凝らす。


「もっといるのか?」


煙の中で鉤爪が何度も石を削る音が響く。


ガキッ。


ガキンッ。


ザシュッ。


敵の位置が分からない。


「この煙……音まで狂わせてる」


レイが呟く。


その直後。


「レイ!」


ガキィン!


レイの二本の短刀が鉤爪を受け止めた。


獅堂が目の前に現れる。


「お前は速そうだな」


「……」


レイは無言で刃を滑らせる。


獅堂が腕を引く。


レイの左の短刀が鉤爪の装甲を掠めた。


「ほう」


獅堂が笑う。


「二刀流か」


レイが一歩踏み込む。


右。


左。


交互に刃を繰り出す。


獅堂は二本の鉤爪で防ぐ。


キィン!


キィン!


キィン!


「悪くない」


獅堂が鉤爪を振り下ろす。


レイは後ろへ跳んだ。


しかし、着地地点に黒煙が集中する。


「……!」


足元が見えない。


そこへ獅堂が迫る。


「終わりだ!」


レイは片方の短刀を地面へ突き立てた。


「……そこ」


短刀を支点に身体を回転させる。


鉤爪が空を切った。


レイはそのまま獅堂の脇へ入り込む。


ザッ!


獅堂の腕に浅い傷が入る。


「やるじゃねぇか!」


獅堂が笑う。


一方、蒼真は風を探っていた。


黒煙で視界は奪われている。


だが――


風までは消えない。


「……」


蒼真は目を閉じた。


地下を流れる空気。


人質の位置。


仲間の位置。


そして――


「そこだ!」


風影刀を振る。


「風遁・風刃!」


風の刃が黒煙を切り裂く。


ザァン!


煙が一瞬だけ割れる。


獅堂の姿が見えた。


「見つけた!」


蒼真が踏み込む。


獅堂も鉤爪を構える。


ガキィン!


風影刀と鉤爪が激突した。


「風を使う忍か!」


「お前の煙も、風なら読める!」


蒼真は刃を押し込む。


獅堂が力で押し返す。


「なら、風ごと潰してやる!」


獅堂が両腕を振る。


「煙遁・黒煙爆!」


黒煙が一気に膨張した。


ドォン!


蒼真が吹き飛ばされる。


「蒼真!」


凛が叫ぶ。


その声を聞いた獅堂が振り向いた。


「女は後回しだ」


獅堂が凛へ向かって走る。


「凛!」


蒼真が立ち上がる。


だが、玄岳が前に出る。


「お前の相手は私だ」


「くっ……!」


玄岳の黒雷が迫る。


「黒雷遁・黒雷走!」


蒼真は風を纏う。


「風遁・風纏!」


二人が交差する。


ドンッ!


蒼真は玄岳の拳を肩で受けながら、風影刀を振る。


玄岳の腕に傷が走った。


だが玄岳も蒼真の脇腹へ黒雷を叩き込む。


「ぐあっ!」


蒼真が膝をつく。


その頃、凛の前には獅堂が迫っていた。


「人質を守りながら戦うんだろ?」


「……そうよ」


凛は人質の前に立つ。


「だから、あなたをここから通さない」


獅堂が笑う。


「その水で俺を止めてみろ!」


鉤爪が振り下ろされる。


「水遁・水壁!」


水の壁が展開される。


ガキィィン!


鉤爪が水壁を突き破ろうとする。


凛は両手に力を込めた。


「まだ……!」


水壁が押される。


人質の背後に石壁。


逃げ場はない。


「凛!」


蓮司が駆けようとする。


しかし土遁の忍が立ちはだかった。


「お前の相手は俺だ!」


「邪魔すんな!」


蓮司が刀を振る。


土壁が立ち上がる。


「土遁・土牢!」


ドォン!


蓮司の周囲を土の壁が囲む。


「くそっ!」


壁を斬る。


だがすぐに別の土壁が現れる。


「このままじゃ……」


蓮司が周囲を見る。


そして気づいた。


土壁の一部に黒い管が埋まっている。


「……これか」


制御核へ向かう黒い光。


蓮司は刀を構え直す。


「こいつを利用する!」


土遁の忍が叫ぶ。


「何をする!」


蓮司が壁へ向かって走った。


「お前の土ごと――」


刀を振り下ろす。


「流れを変えてやる!」


ガキィン!


黒い管に亀裂が入った。


黒い光が大きく揺れる。


その瞬間。


制御核の輝きが一度だけ弱くなった。


蒼真がそれを見逃さなかった。


「……やっぱりだ」


玄岳の動きが止まる。


「何?」


蒼真は笑った。


「制御核に力を送ってる管を壊せば……」


風影刀を構える。


「最終処理を遅らせられる!」


玄岳の表情が変わった。


「気づいたか」


「だったら、全部壊す!」


蒼真が風を纏う。


その瞬間――


制御核から赤い光が走った。


地下に新たな文字が浮かび上がる。


『最終処理・第二段階 残り時間――』


数字が表示される。


「……!」


凛が目を見開く。


「時間が表示された……!」


蓮司が叫ぶ。


「あと何分だ!」


数字が一つずつ減っていく。


そして――


『00:09:59』


蒼真の表情が険しくなる。


「十分……」


玄岳が笑った。


「十分もあると思うか?」


黒雷が再び膨れ上がる。


「それとも、十分しかないと思うか」


獅堂も鉤爪を構え直した。


「どっちにしろ――」


黒煙が再び広がる。


「急がねぇと間に合わねぇぞ」


第109話 完

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