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影狼ノ忍  作者: 次男坊
第4章「夜叉衆暗躍編」
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第108話「増援の忍」

地下迷宮が揺れ続けていた。


ゴゴゴゴゴ……。


壁の奥から浮かび上がった黒い術式が、次々と通路へ広がっていく。


蒼真は風影刀を構え、玄岳と向かい合っていた。


その背後では、凛が迫り来る石壁を水壁で押し返している。


「くっ……重い!」


水壁が軋む。


人質たちはその後ろで身を寄せ合っていた。


「凛、まだ持つか!」


「まだ……大丈夫!」


一方、蓮司とレイは黒い管を挟んでいた。


管の中を流れていた黒い光は弱くなっている。


だが、完全には止まっていない。


「まだ流れてる」


レイが短刀を抜き直す。


「この管だけじゃない」


蓮司が周囲を見る。


「他にもあるってことか?」


「おそらく」


その瞬間。


シュッ!


二人の頭上から苦無が飛んできた。


「!」


蓮司が刀で弾く。


キィン!


「来たぞ」


レイが短刀を構える。


通路の奥から足音が聞こえた。


一つ。


二つ。


三つ。


そして――


十人近い黒装束の忍が姿を現した。


全員が夜叉衆の印を身につけている。


その先頭に立つ忍が手を上げた。


「第二段階に入った」


黒装束の忍たちが一斉に構える。


「侵入者を排除する」


蓮司が刀を握る。


「また増えたのかよ……」


レイは二本の短刀を低く構えた。


「数は問題じゃない」


「だな」


二人が同時に踏み込んだ。


「行くぞ!」


敵の忍が印を結ぶ。


「火遁・火矢!」


無数の火の矢が飛んでくる。


蓮司が前へ出た。


「任せろ!」


刀を振る。


火矢の軌道を次々と逸らしていく。


しかし――


「水遁・水弾!」


横から水弾が飛んできた。


蓮司が横へ跳ぶ。


ドンッ!


地面が弾ける。


「火だけじゃないのか!」


敵は複数の属性を使っていた。


別の忍が印を結ぶ。


「土遁・土壁!」


ドォン!


巨大な土壁が蓮司とレイを分断する。


「レイ!」


「問題ない」


レイは壁へ向かって走った。


だが壁の向こうから敵が飛び出してくる。


「雷遁・雷刃!」


雷を纏った苦無が振り下ろされた。


レイは右の短刀で受ける。


バチィッ!


「……!」


痺れが腕へ伝わる。


左の短刀で相手の腕を狙う。


敵は身体を捻ってかわした。


「速いな」


「お互い様だ」


レイの目が鋭くなる。


一方――


蒼真と玄岳の戦いも続いていた。


玄岳が黒雷を纏って突っ込む。


「黒雷遁・黒雷走!」


「風遁・風纏!」


蒼真も風を纏い、迎え撃つ。


二人の姿が一瞬で交差した。


ドンッ!


蒼真の肩に拳が入る。


同時に風影刀が玄岳の脇腹を掠める。


二人とも距離を取った。


「……やはり速い」


玄岳が傷口を押さえる。


蒼真は肩を回した。


「お前もな」


「ならば、さらに上げる」


黒雷が玄岳の身体を覆っていく。


バチバチバチッ!


蒼真は風の流れを読む。


黒雷が動くたび、空気が僅かに乱れる。


「見える……」


「何?」


「お前の動きが」


蒼真は風影刀を構えた。


玄岳が消える。


「黒雷遁・瞬雷走!」


一瞬で蒼真の背後へ回る。


だが――


蒼真は振り向かない。


風影刀を後ろへ振る。


キィン!


黒雷を纏った玄岳の腕を受け止めた。


「なに……!」


「風が教えてくれる」


蒼真は刀を押し込む。


「お前がどこにいるかをな!」


玄岳が後退する。


しかし、その直後。


ゴゴゴゴゴ……。


地下迷宮がまた動いた。


蒼真たちの足元が傾く。


「くっ!」


玄岳もバランスを崩した。


その瞬間――


「蒼真!」


凛の声が響いた。


振り向くと、水壁が限界を迎えていた。


「もう持たない!」


「凛!」


蒼真が駆け出そうとする。


だが玄岳が立ちはだかる。


「まだ終わっていない」


「仲間を優先する!」


「それでは、この戦いには勝てない」


玄岳が黒雷を放つ。


蒼真は風で受け流した。


「仲間を見捨てて勝つくらいなら――」


風影刀を強く握る。


「俺は勝たなくていい!」


蒼真の風が一気に膨れ上がる。


「風遁・風環!」


巨大な風の輪が玄岳を押し飛ばす。


「ぐっ……!」


玄岳の身体が壁へ叩きつけられた。


蒼真は凛の元へ走る。


「凛!」


「蒼真!」


水壁が崩れかける。


蒼真は風を地面へ叩きつけた。


「風遁・風圧!」


風圧で迫る石壁の動きを一瞬だけ止める。


「今だ!」


凛が水を操る。


「水遁・水流陣!」


大量の水が石壁の下へ流れ込み、壁の動きを押し返す。


ギギギギ……。


石壁が止まった。


凛が息を切らす。


「……止まった」


「よし」


しかし――


「蒼真!」


レイの声が飛んだ。


蒼真が振り返る。


レイの周囲には、複数の忍が集まっている。


「こっちも増えた」


蓮司も土壁の向こうから姿を現す。


「俺もいるぞ!」


だが、その背後にも敵がいた。


「囲まれたな」


蓮司が笑う。


「笑ってる場合じゃない」


レイが短刀を構える。


「いや」


蓮司は刀を握り直した。


「こういう時こそ、やるしかないだろ」


蒼真が仲間の位置を見る。


凛と人質。


蓮司。


レイ。


そして自分。


敵の忍たち。


動く地下迷宮。


制御核。


蒼真はゆっくり息を吸った。


風が地下を巡る。


その風が、迷宮の奥から一つの異変を伝えてきた。


「……待て」


蒼真が目を細める。


「奥から風が来てる」


レイが反応する。


「出口か?」


「違う」


蒼真は首を振った。


「何かが……こっちへ向かってる」


その直後。


ドンッ!


地下迷宮の奥から巨大な音が響いた。


壁が砕ける。


黒い煙が通路を埋め尽くす。


その煙の中から、一人の忍が歩いてきた。


黒装束。


夜叉衆の印。


そして、両腕に巨大な鉤爪を装備している。


「第二段階の守護役は俺だ」


男が鉤爪を鳴らす。


ガキンッ。


「名は、鉤爪の獅堂」


玄岳が立ち上がった。


「……獅堂か」


蒼真が風影刀を構える。


「新しい敵……」


獅堂が笑った。


「四人まとめて相手をしてやる」


その背後で、さらに黒い術式が開いていく。


第二段階は、まだ始まったばかりだった。


第108話 完

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