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影狼ノ忍  作者: 次男坊
第4章「夜叉衆暗躍編」
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第107話「動き出す地下迷宮」

ゴゴゴゴゴ……。


地下全体が大きく揺れた。


壁が軋み、天井から細かな石が落ちてくる。


蒼真は風影刀を構えたまま、周囲を見回した。


「……何だ?」


次の瞬間。


ズズズズズッ!


壁そのものが横へ動いた。


「なっ……!」


蓮司が飛び退く。


「壁が動いてるぞ!」


巨大な石壁がゆっくりと移動し、これまで存在しなかった通路が現れる。


反対側では、別の壁が閉じ始めていた。


「凛、人質を!」


「分かってる!」


凛が水を広げる。


「水遁・水壁!」


水の壁が人質たちの前に展開され、落下してくる石を受け止める。


レイは周囲を見渡した。


「……道が変わっている」


「制御核が迷宮そのものを動かしてるのか」


蒼真が呟く。


玄岳は黒雷を纏ったまま、動く壁を眺めていた。


「最終処理が始まった以上、ここはもう単なる地下施設ではない」


「どういう意味だ?」


「この迷宮そのものが、制御核を守る」


ゴゴンッ!


さらに床が動いた。


蒼真たちの立っていた場所が左右に分かれる。


「うわっ!」


蓮司が踏ん張る。


「蒼真!」


「全員、動くな!」


だが床の分離は止まらない。


蒼真と玄岳。


蓮司。


レイ。


凛と人質。


それぞれの足場が少しずつ離れていく。


「まずい!」


凛が叫ぶ。


蒼真は風を纏って跳んだ。


「凛!」


空中で風を操り、凛たちのいる足場へ着地する。


「大丈夫か?」


「私は大丈夫。でも……」


凛が人質を見る。


「この人たちを連れて移動するのは難しい」


「なら、俺たちが道を作る」


蒼真が前を見る。


新しく開いた通路の奥。


そこには無数の黒い術式が並んでいた。


レイが目を細める。


「術式が……動いている」


「動いてる?」


「ああ。さっきまで壁にあったものが、通路の奥へ移動している」


蓮司が駆け寄る。


「つまり?」


レイは短刀を抜いた。


「制御核へ力を送るために移動している」


蒼真は理解した。


「じゃあ、あれを止めればいい」


その時。


バチッ!


黒雷が目の前を横切った。


「そう簡単にはいかない」


玄岳だった。


蒼真が振り返る。


「玄岳……!」


「お前たちは、制御核へ近づくほど危険になる」


「なら、お前を倒して進む!」


蒼真が踏み込む。


「風遁・風刃!」


風の刃が走る。


玄岳は身体を沈めた。


「黒雷遁・黒雷走!」


黒雷が地面を走り、玄岳の身体が一瞬で加速する。


キィン!


風影刀と黒雷を纏った拳がぶつかった。


蒼真の腕に痺れが走る。


「くっ……!」


「まだだ」


玄岳が連続して拳を放つ。


蒼真は風を纏って後退しながらかわす。


右。


左。


上。


そして――


「そこだ!」


蒼真が風影刀を振る。


玄岳が腕で受ける。


ザッ!


黒い衣が裂け、腕に浅い傷が走った。


「……やるな」


玄岳が距離を取る。


その間に、蓮司たちが動き出した。


「蒼真! 俺たちは術式を止める!」


「頼む!」


蓮司が地面へ刀を突き立てる。


「ここだ……」


地面の奥から微かな振動が伝わってくる。


「下に何かある」


蓮司が力を込める。


「だったら、掘り出す!」


刀で地面を叩き割る。


ガンッ!


石が崩れ、地下に埋まっていた黒い管が姿を現した。


「これだ!」


管の中を黒い光が流れている。


凛が近づく。


「制御核へ向かってる……」


「切ればいいか?」


レイが尋ねる。


凛は首を振った。


「待って。これを切ったら、何が起こるか分からない」


レイが管を観察する。


「なら、流れを変える」


「できる?」


「試す」


レイは二本の短刀を管の左右へ突き立てた。


キィン!


刃が黒い光を弾く。


「……流れが変わった」


その瞬間。


制御核の光が一瞬だけ弱くなった。


蒼真が気づく。


「効いてる!」


玄岳の表情が変わった。


「……そうか」


黒雷が一気に強まる。


「ならば、先にお前たちを止める」


玄岳が蒼真を無視して、蓮司たちへ向かおうとする。


「させるか!」


蒼真が風を爆発させた。


「風遁・風環!」


渦巻く風が玄岳の進路を塞ぐ。


玄岳は黒雷で風を突き破ろうとする。


バチバチバチッ!


「邪魔をするな!」


「お前こそ、邪魔なんだよ!」


二人の攻撃が激突する。


その間に、凛が人質を守りながら叫んだ。


「レイ! まだ黒い光が残ってる!」


「分かっている」


レイが短刀を抜く。


「一本では足りない」


「じゃあ……」


蓮司が刀を構える。


「俺もやる」


二人で管を挟む。


レイが右。


蓮司が左。


「せーの!」


ガキィン!


二本の刀が同時に管へ食い込んだ。


黒い光が大きく揺れる。


制御核の輝きがさらに弱くなった。


だが――


ズズズズズ……。


地下迷宮が再び動き始める。


「まだ動くのか!」


蓮司が叫ぶ。


壁が閉じ始める。


凛と人質のいる場所へ向かって、巨大な石壁が迫っていた。


「凛!」


「分かってる!」


凛は両手を広げる。


「水遁・水壁!」


巨大な水壁が展開される。


ドォン!


石壁と水壁が激突する。


凛の足が少しずつ後ろへ滑る。


「くっ……!」


「凛!」


蒼真が助けに向かおうとする。


だが玄岳が立ちはだかった。


「行かせない」


「どけ!」


「ここで私を倒せなければ、仲間も人質も守れないぞ」


蒼真は歯を食いしばる。


その言葉に、風が揺れた。


蒼真は周囲の空気を読む。


玄岳の黒雷。


動く壁。


制御核。


仲間。


すべての位置を感じ取る。


そして――


「……分かった」


蒼真が風影刀を構え直した。


「一気に全部止める」


玄岳が構える。


「できるものならな」


地下迷宮が大きく揺れる。


壁の奥から、無数の黒い術式が浮かび上がった。


そして制御核の前に、新たな文字が刻まれる。


『最終処理・第二段階』


蒼真の目が鋭くなる。


「まだ……終わらないのか」


第107話 完

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