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影狼ノ忍  作者: 次男坊
第4章「夜叉衆暗躍編」
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第106話「最終処理」

地下全体に、低い地鳴りのような音が響いた。


ゴォォォォ……。


四つの術式が消えたことで、制御核の光がさらに強くなる。


蒼真は風影刀を構えたまま、中央の黒い球体を睨んだ。


「……何が始まった?」


玄岳が黒雷を纏った拳を握る。


「最終処理だ」


「最終処理……?」


「四つの術式を破壊したことで、この地下迷宮に残された力が、すべて制御核へ集まっている」


制御核の周囲を走っていた黒い光が、一本、また一本と中心へ吸い込まれていく。


そして――


ビキッ。


人質の首元に刻まれた誘爆印が、さらに赤く染まった。


「っ!」


凛が振り返る。


「印の色が……!」


「完全に赤くなってる!」


蓮司も叫んだ。


玄岳は淡々と答える。


「時間がない」


「なら、止める!」


蒼真が地面を蹴った。


風を纏い、一気に玄岳との距離を詰める。


「風遁・風刃!」


風の刃が横薙ぎに走る。


玄岳は腕を上げた。


「黒雷遁・黒雷壁!」


黒い雷が壁のように広がり、風刃と激突する。


バシュッ!


衝撃で周囲の砂埃が舞い上がった。


その隙に蒼真は横へ回り込む。


だが――


「読めている」


玄岳の姿が消えた。


「……!」


次の瞬間。


ドンッ!


蒼真の脇腹に黒雷を纏った拳が叩き込まれた。


「ぐっ……!」


吹き飛ばされた蒼真が壁に背中を打ちつける。


「蒼真!」


凛が叫ぶ。


「こっちはいい!」


蒼真は痛みを堪えて立ち上がった。


その間にも、三つの戦いは続いている。


蓮司は土遁の忍と激しくぶつかっていた。


「土遁・岩拳!」


巨大な岩の拳が振り下ろされる。


蓮司は真正面から受けず、身体を半歩ずらした。


「そこだ!」


岩拳に刀を添え、力の方向を変える。


ドォン!


岩拳が地面へ叩きつけられ、床が大きく砕けた。


だが土遁の忍は止まらない。


「土遁・土槍!」


地面から無数の槍が突き出す。


「くっ!」


蓮司は後退する。


足元の逃げ場が次々と消えていく。


一方、レイは雷遁の忍と刃を交えていた。


「雷遁・雷走!」


敵の身体が一瞬で加速する。


レイは二本の短刀を交差させた。


キィン!


雷を纏った刃を受け止める。


だが衝撃で肩の傷が開いた。


「……っ」


血が滲む。


それでもレイは表情を変えない。


敵が再び踏み込む。


レイは右の短刀で受け、左の短刀を低く走らせた。


ザッ!


敵の脚を浅く斬る。


「まだ終わらない」


レイが呟く。


そして凛。


凛は炎遁の忍から人質を守りながら戦っていた。


「火遁・火球!」


巨大な火球が飛んでくる。


「水遁・水壁!」


水の壁が立ち上がる。


ジュウウウッ!


大量の水蒸気が広がった。


視界が白く染まる。


凛はその中で人質の位置を確認する。


「全員……いる」


次の瞬間。


シュッ!


煙の向こうから苦無が飛んできた。


凛は水を操り、苦無の軌道を逸らす。


「この人たちは……絶対に傷つけさせない!」


炎遁の忍が笑う。


「ならば、お前は攻撃できない」


「……そう思う?」


凛の足元に水が広がった。


「水遁・水縛!」


水が敵の足へ絡みつく。


「なにっ!」


凛はそのまま水流を引き寄せる。


敵の身体が大きく傾いた。


しかし――


制御核から黒い光が放たれた。


バチィッ!


水が弾き飛ばされる。


凛も数歩後退した。


「制御核が……攻撃してる?」


蒼真が叫ぶ。


「全員、気をつけろ!」


その瞬間。


地下の壁一面に黒い紋様が浮かび上がった。


玄岳が口元を上げる。


「気づいたか」


「何だ、あれは……」


「最終処理では、制御核が周囲の忍力を吸収する」


「だったら止めればいい!」


「簡単ではない」


玄岳が黒雷を纏う。


「制御核はもう、俺たちの戦いすら利用している」


蒼真の表情が変わった。


「……俺たちの戦いを?」


「そうだ」


玄岳が拳を突き出す。


黒雷が地面を走った。


「攻撃すればするほど、忍力が制御核へ流れる」


「……!」


蒼真は制御核を見る。


確かに、先ほどよりも光が強くなっている。


蓮司も気づいた。


「じゃあ……俺たちが戦えば戦うほど、あれが強くなるってことか!」


「そういうことだ」


玄岳が答えた。


「そして制御核の力が最大になった時――」


人質の誘爆印が、さらに赤く輝いた。


「この地下全体が終わる」


「ふざけるな!」


蓮司が土遁の忍を押し返す。


「だったら戦い方を変える!」


蒼真も風影刀を下ろした。


玄岳が目を細める。


「……どうする?」


蒼真は制御核を見つめた。


戦って壊す。


それでは駄目だ。


四つの導線を切った。


四つの術式も破壊した。


それでも、最後の処理は止まらなかった。


ならば――


「制御核そのものを攻撃するんじゃない」


蒼真が言った。


「周りから流れ込んでいる力を止める」


玄岳の表情が僅かに変わった。


「ほう……」


「凛!」


「うん!」


「人質を守りながら、制御核へ流れてる水を探してくれ!」


「分かった!」


「蓮司!」


「おう!」


「地面の下だ。力が流れてる場所を探してくれ!」


「任せろ!」


「レイ!」


レイが短刀を構える。


「制御核の周囲を見てくれ。見えない術式があるかもしれない」


「了解」


そして蒼真は玄岳を睨む。


「俺はこいつを止める」


玄岳が笑った。


「一人で私を止めるつもりか?」


「違う」


蒼真は風影刀を握り直した。


「四人で終わらせる」


制御核の光が一段と強くなる。


ゴォォォォ……!


誘爆印は真紅に染まり、地下全体が激しく揺れ始めた。


玄岳が黒雷を纏う。


「ならば、見せてもらおう」


「お前たちが、この最終処理を止められるか」


蒼真も風を纏う。


「やってみる!」


二人が同時に地面を蹴った。


その瞬間――


制御核の中心に、巨大な赤い光が灯った。


最終処理、開始から残りわずか。


そして地下迷宮の壁に、新たな文字が浮かび上がった。


『最終処理・第一段階』


蒼真の目が見開かれる。


「……まだ第一段階だと?」


第106話 完

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