第104話「四本の導線」
地下室の中央。
巨大な起爆装置から伸びる四本の黒い導線が、それぞれ別の通路へ続いている。
北。
東。
西。
南。
その四本を守るように、黒雷が床を走っていた。
「四本を同時に止める」
蒼真は風影刀を握り直した。
「それしかない」
蓮司が頷く。
「なら、俺は北だ」
レイが東を見る。
「俺は東」
凛は西へ視線を向けた。
「私は西」
蒼真は南の導線を見る。
「俺は南」
玄岳が黒雷をまといながら笑う。
「簡単に言うな」
「簡単じゃないのは分かってる」
蒼真が玄岳を睨む。
「だから、やるんだ」
四人が一斉に走り出した。
その瞬間、四人の敵も動く。
「逃がすか!」
風遁使いが蒼真へ風刃を放つ。
蒼真は横へ飛ぶ。
「風遁・風纏!」
そのまま南の通路へ向かう。
だが玄岳が目の前に現れた。
「お前の相手は俺だ」
黒雷をまとった拳が迫る。
蒼真は風影刀で受け流す。
ガキィン!
「くっ!」
二人の攻撃がぶつかる。
「お前がここを離れれば、四人の作戦は崩れるぞ」
「だったら――」
蒼真は風を纏う。
「お前をここで止める!」
風影刀を振り抜く。
風刃が玄岳へ迫る。
玄岳は黒雷で受け止める。
ドンッ!
衝撃が地下室を揺らした。
その間に蓮司は北の導線へ向かっていた。
「行かせるか!」
土遁使いが追う。
「土遁・岩槍!」
地面から岩が突き出す。
蓮司は飛び越える。
次の岩。
その次の岩。
「しつけぇな!」
蓮司は着地すると同時に振り返る。
敵の拳が迫っていた。
ガキン!
刀で受ける。
「ここから先は通さない!」
「俺も同じだ!」
土遁使いが地面へ手をつく。
「土遁・土牢!」
土の壁が四方から迫る。
蓮司は周囲を見る。
「またこれか!」
以前と同じように閉じ込められる。
しかし今回は違った。
蓮司は壁に刀を突き刺す。
「同じ術なら……!」
力を受け流す。
「同じように破れる!」
土壁の一部が崩れる。
蓮司は隙間から抜け出した。
そして北の導線へ到着する。
「見つけた!」
導線の根元には黒い札が貼られていた。
蓮司が手を伸ばす。
その瞬間――。
黒雷が走る。
「ぐっ!」
手を弾かれる。
「触れるだけでも黒雷が来るのか!」
蓮司は刀を構えた。
一方、東。
レイと雷遁使いの戦いは、さらに速度を増していた。
「雷遁・雷走!」
敵が消える。
レイは目を閉じた。
「……」
次の瞬間。
背後。
レイが振り向く。
ガキィン!
雷刃を短刀で受け止める。
「また読んだか!」
「同じ動きならな」
レイがもう一本の短刀を振る。
敵は後ろへ飛ぶ。
「なら、これはどうだ!」
敵の身体が三つに分かれた。
「雷遁・雷分身!」
三人の雷遁使いが同時に走る。
レイは二本の短刀を構えた。
「分身……」
三方向から攻撃が来る。
右。
左。
正面。
レイは一本目を弾く。
二本目を受ける。
そして三本目を――。
「そこだ」
身体を沈める。
背後へ回る。
短刀の柄で敵の腕を打つ。
「ぐっ!」
雷分身の一体が消えた。
「本体は……」
レイは一瞬で見抜いた。
「お前だ」
敵の目が見開く。
その隙にレイは東の導線へ走った。
「させるか!」
敵が雷を放つ。
「雷遁・雷槍!」
レイは短刀を一本投げる。
雷槍の軌道を逸らす。
そして導線の前へ滑り込んだ。
「ここか」
導線に触れる。
バチィッ!
強烈な雷が身体を走った。
「……!」
レイの身体が震える。
それでも手を離さない。
「これくらい……」
歯を食いしばる。
「耐えられる」
西。
凛は火遁使いと激しく戦っていた。
「火遁・黒炎弾!」
「水遁・水壁!」
黒炎が水壁を突き破る。
凛は横へ避ける。
「まだ!」
床の水を操る。
「水遁・水槍!」
水槍が敵の足元を狙う。
敵は跳ぶ。
そのまま火遁を放とうとする。
だが凛は手を広げた。
「水遁・水縛!」
水の縄が空中の敵へ絡みついた。
「なっ!」
敵の動きが止まる。
凛は西の導線へ走る。
「今!」
水を導線へ巻きつける。
黒雷が水を伝ってくる。
「きゃっ!」
腕が痺れる。
それでも水を維持する。
「これで……止める!」
南。
蒼真と玄岳の戦いは続いていた。
「黒雷遁・雷鳴煙!」
黒煙が広がる。
蒼真は風を感じる。
「……そこ!」
刀を振る。
ガキィン!
玄岳の拳を受け止めた。
「やはり風を読んでいるか」
「お前の黒雷も、空気を動かす」
蒼真は一歩踏み込む。
「だから分かる」
「ならば、これはどうだ!」
玄岳が両手を地面へつく。
「黒雷遁・黒雷柱!」
床から黒雷の柱が次々と立ち上がる。
蒼真は避ける。
一本。
二本。
三本。
黒雷柱が南の導線を守るように並んでいく。
「これじゃ近づけない……!」
玄岳が笑う。
「導線を止めたいなら、俺を突破してみろ」
蒼真は風影刀を見る。
そして――。
刀身へ風を集中させる。
「……だったら」
風が一点へ集まる。
「一気に行く!」
「来い!」
蒼真が駆ける。
玄岳も突っ込む。
ガキィィン!
黒雷と風が正面衝突した。
その衝撃で南の導線を守っていた黒雷柱が一本崩れる。
蒼真はその隙を逃さない。
「今だ!」
風を纏い、導線へ向かう。
玄岳が追う。
しかし蒼真は振り返らない。
導線へ手を伸ばす。
「風遁……!」
風が導線を包む。
黒雷が暴れる。
「ぐああっ!」
蒼真の腕に電撃が走る。
それでも離さない。
北。
蓮司も導線へ力を込める。
東。
レイも耐える。
西。
凛も水で導線を押さえる。
四人の導線が、同時に揺れ始めた。
「いまだ!」
蒼真が叫ぶ。
四人が同時に力を込める。
バチィィィッ!
四本の導線から黒雷が一斉に消えた。
地下室が静まり返る。
玄岳の表情が変わった。
「……!」
中央の起爆装置。
赤い光が一瞬消える。
「止まった……?」
凛が呟く。
しかし――。
カチッ。
小さな音がした。
中央の黒い球体が、今度は青白く光り始める。
風遁使いが叫ぶ。
「まずい!」
蒼真が振り返る。
「何がだ!」
「導線を切ったことで、制御核が単独稼働に入った!」
「単独稼働?」
「最後の段階だ!」
玄岳が静かに言った。
「第二段階は終わった」
黒い球体から、青白い光が地下全体へ広がっていく。
「ここからが第三段階だ」
蒼真たちは起爆装置を見つめた。
そして――。
中央の球体から、巨大な黒雷が噴き出した。
第104話 完




