第103話「起爆装置の仕組み」
「……壊し方を変える?」
蒼真の言葉に、風遁使いは黙っていた。
その背後では、起爆装置が赤く明滅している。
カチッ。
蒼真は風影刀を下ろさない。
「知ってることを話せ」
「話したところで、お前たちに止められるとは限らない」
「それでも聞く」
風遁使いは少しだけ目を細めた。
「……中央の黒い球体は、起爆装置そのものじゃない」
蒼真が装置を見る。
「じゃあ、何だ?」
「制御核だ」
風遁使いが続ける。
「地下に仕掛けられた起爆札は、あの制御核から流れるチャクラによって繋がっている」
「だから、壊せば逆流するのか」
「そうだ」
蓮司が近づく。
「じゃあ、どうすりゃいい?」
風遁使いは装置の周囲を指差した。
「四つの導線がある」
蒼真たちは目を凝らす。
黒い管が四方向へ伸びていた。
それぞれ別の通路へ繋がっている。
「この四本を同時に止めれば、制御核を切り離せる」
凛が問う。
「同時って……」
「一人では無理だ」
レイが短く答えた。
「四人必要」
風遁使いが頷く。
「四つの導線を同時に遮断し、その直後に制御核へ風の流れを送り込む」
蒼真が風影刀を見る。
「風……」
「そうだ」
風遁使いは蒼真を見る。
「制御核の内部には、一定方向へ流れるチャクラの循環がある。風遁なら、その流れを逆転させられる」
玄岳が口を挟んだ。
「ずいぶん喋るようになったな」
風遁使いが振り返る。
「もう俺の役目は終わった」
「そうか」
玄岳の黒雷が膨れ上がる。
「なら、黙らせる」
「待て!」
蒼真が前へ出る。
玄岳が黒雷を放った。
「黒雷遁・雷鳴煙!」
黒い煙が一気に広がる。
視界が消える。
「みんな、離れるな!」
蒼真の声が響く。
だが――。
ドンッ!
強烈な衝撃。
蒼真の身体が吹き飛ぶ。
「蒼真!」
凛が叫ぶ。
玄岳が煙の中から現れた。
「話し合いをしている時間はない」
「だったら……!」
蓮司が突っ込む。
土遁使いが立ちはだかる。
「お前の相手は俺だ」
「まだやるのかよ!」
「任務だからな」
二人の刀と拳がぶつかる。
一方、レイと雷遁使いも再び激突。
凛も火遁使いと向かい合う。
四人の戦いは、まだ終わっていない。
蒼真は風遁使いの言葉を思い出していた。
四本の導線。
同時に止める。
そして、風を送り込む。
「……だったら」
蒼真は装置を見る。
「俺たち四人でやるしかない」
凛が叫ぶ。
「でも、敵がいる!」
「だから、倒す!」
蒼真が風遁使いを見る。
「お前は戦えるか?」
風遁使いは傷を押さえながら立ち上がる。
「少しなら」
「じゃあ、導線の場所を教えてくれ」
風遁使いは四方向を指差す。
「北に一つ」
「東に一つ」
「西に一つ」
「南に一つ」
蒼真が頷く。
「分かった」
玄岳がそれを聞いていた。
「させると思うか?」
黒雷が地下全体へ広がる。
「黒雷遁・黒雷陣!」
バチバチバチッ!
床を走った黒雷が、四本の導線へ繋がる。
「導線そのものを黒雷で守るつもりか……!」
凛が驚く。
玄岳が笑う。
「四人の忍を倒して終わりだと思ったか?」
黒雷が四人の忍へ流れ込む。
風遁使いが苦しそうに膝をつく。
「これは……!」
「黒雷によって、四人の忍と導線を繋いだ」
玄岳が言う。
「お前たちが一人でも倒せば、その導線に黒雷が集中する」
蓮司が顔をしかめる。
「つまり……」
「一人を倒すだけでも、装置が危険になる」
蒼真が玄岳を睨む。
「……厄介な仕組みを作ったな」
「これが第二段階だ」
玄岳が拳を握る。
「お前たちは戦いながら、装置も守らなければならない」
玄岳が消えた。
「黒雷遁・黒雷走!」
蒼真の目の前へ現れる。
「速い!」
蒼真が風影刀で受ける。
ガキィン!
黒雷が刀身を伝わる。
蒼真はすぐに離れた。
「ぐっ……!」
左手が痺れる。
玄岳が追撃する。
蒼真は風を纏って回避。
そのまま風刃を放つ。
「風遁・風刃!」
玄岳が黒雷で弾く。
二人の戦いが再び始まる。
一方。
蓮司は土遁使いの攻撃を受け流しながら、導線を確認していた。
「北の導線……あそこか」
敵が岩拳を振る。
「よそ見するな!」
蓮司は身体を流す。
「よそ見じゃねぇ」
刀を構える。
「作戦を考えてんだよ!」
レイも雷遁使いの攻撃を避けながら導線を見る。
「東……」
凛は火遁を水壁で防ぎながら確認する。
「西……」
そして蒼真。
「南……」
四人の視線が一瞬だけ交わる。
それだけで十分だった。
蓮司が叫ぶ。
「蒼真!」
「分かってる!」
レイが続く。
「同時に行く」
凛も頷く。
「準備する!」
四人がそれぞれの敵を押し返す。
しかし玄岳が気づく。
「……作戦を立てたか」
玄岳の黒雷が強くなる。
「ならば、その前に潰す」
玄岳が蒼真へ突っ込む。
蒼真も迎え撃つ。
ガキィン!
黒雷と風がぶつかる。
「ここは通さない!」
「ならば、力ずくで通る!」
二人の攻防が激しくなる。
その横で蓮司が土遁使いを押し返す。
レイは雷遁使いの動きを読み始める。
凛は火遁使いの炎を水で削っていく。
四人の戦いは、少しずつ変わり始めていた。
敵を倒すためではない。
四本の導線を止めるために。
そして――。
起爆装置の赤い光が、また一段強くなる。
カチッ。
風遁使いが呟いた。
「……残り二段階だ」
蒼真は玄岳を睨む。
「次で終わらせる」
玄岳は黒雷をまといながら笑った。
「やってみろ」
第103話 完




