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影狼ノ忍  作者: 次男坊
第4章「夜叉衆暗躍編」
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第102話「風遁・風刃の極み」

地下室を覆う風が、さらに激しくなる。


蒼真と風遁使い。


二人の間を、無数の風が渦巻いていた。


「風を支配するだと?」


風遁使いが苦笑する。


「口だけなら誰でも言える!」


両手を素早く組む。


「風遁・裂空刃!」


無数の風の刃が、四方八方から蒼真へ迫った。


前。


後ろ。


左右。


逃げ場がない。


蒼真は目を閉じた。


「……」


風の音を聞く。


風が壁にぶつかる。


天井へ抜ける。


床を這う。


そして――。


一本だけ、逆方向へ流れる風があった。


「そこだ!」


蒼真が踏み込む。


シュッ!


風刃の隙間を抜ける。


一枚。


二枚。


三枚。


身体を捻りながら、次々と風刃をかわす。


風遁使いが驚く。


「馬鹿な……!」


蒼真は風影刀を構えた。


「お前が風を動かしているなら……」


刀身に風が集まる。


「俺は、その流れに乗る!」


風影刀が風をまとった。


「風遁・風刃!」


一閃。


巨大な風の刃が走る。


敵も同時に風刃を放った。


「風遁・旋風刃!」


二つの風刃が正面から激突する。


ズドォン!


衝撃で蒼真の身体が後ろへ吹き飛ぶ。


「くっ……!」


風遁使いも膝をついた。


だが、先に立ち上がったのは敵だった。


「まだ終わっていない!」


敵が一気に加速する。


「風遁・風走!」


蒼真も迎え撃つ。


ガキィン!


刀と苦無。


互いの武器が何度もぶつかる。


敵の蹴り。


蒼真が避ける。


風刃。


蒼真が刀で弾く。


再び敵が懐へ入る。


「終わりだ!」


苦無が蒼真の胸へ迫る。


蒼真は身体を捻った。


刃が服を裂く。


「……!」


そのまま敵の腕を掴む。


風を流す。


「なっ……!」


敵の身体が大きく回転した。


蒼真は投げ飛ばす。


ドンッ!


敵が地面へ叩きつけられた。


しかし、すぐに立ち上がる。


「まだだ!」


敵の周囲に風が集まる。


「風遁・大旋風!」


巨大な竜巻が地下室に発生した。


蒼真の身体が持ち上げられる。


「ぐっ!」


壁へ叩きつけられそうになる。


だが、蒼真は風影刀を構えた。


「……風は、流れる」


刀身に風が集まる。


「だったら……流れを変える!」


蒼真は刀を地面へ突き刺した。


「風遁・風環!」


円形の風が広がる。


竜巻の流れが変わった。


「何だと!」


巨大な竜巻が徐々に崩れていく。


風遁使いが後退する。


「俺の術を……崩した?」


蒼真は立ち上がった。


「支配するんじゃない」


風影刀を構える。


「利用するんだ」


一気に踏み込む。


「風遁・風刃!」


敵も最後の力を振り絞る。


「風遁・裂空刃!」


二人の攻撃が正面からぶつかった。


ガァン!


地下室に衝撃が響く。


風が消える。


静寂。


敵の苦無が床へ落ちた。


カラン。


風遁使いは膝をついた。


「……負けた」


蒼真も肩で息をする。


「まだ戦えるか?」


敵は首を横に振った。


「俺の役目は……ここまでだ」


蒼真はすぐに起爆装置へ向かおうとする。


しかし――。


「蒼真!」


蓮司の声。


振り向くと、蓮司が土遁使いに追い込まれていた。


「まだ終わってねぇ!」


蓮司は土の拳を受け流す。


だが、足元が崩れる。


「しまった!」


土遁使いが腕を振る。


「土遁・岩砕!」


巨大な岩が蓮司へ迫った。


蓮司は刀を構える。


「避けたら、後ろの装置に当たる……!」


起爆装置がすぐ背後にある。


攻撃を受け止めれば、自分が吹き飛ぶ。


避けても装置が壊れる。


蓮司は一瞬迷った。


その瞬間――。


「蓮司!」


蒼真が駆け出す。


しかし距離がある。


間に合わない。


蓮司は歯を食いしばった。


「だったら……!」


刀を構え直す。


「俺が受け流す!」


岩が迫る。


蓮司は真正面から受け止めた。


「ぐあああっ!」


身体が沈む。


両足が床にめり込む。


それでも刀を離さない。


「まだ……だ!」


岩の向きを少しずつ変えていく。


そして――。


ドォン!


岩が壁へ逸れた。


蓮司は膝をついた。


「はぁ……はぁ……」


土遁使いが驚く。


「その身体で……!」


蓮司が立ち上がる。


「俺は……仲間を守るって決めたからな」


その頃、レイ。


雷遁使いの攻撃がさらに速くなる。


「雷遁・雷走!」


「……!」


レイが短刀で受ける。


だが、次の瞬間には背後。


「雷遁・雷牙!」


レイの肩が切り裂かれる。


「っ……!」


血が落ちる。


雷遁使いは距離を取った。


「速度では俺が上だ」


レイは傷口を押さえた。


そして短刀を構え直す。


「……なら」


目を細める。


「速度以外で戦う」


凛の戦いも続いている。


黒炎が水流を焼き尽くす。


「水遁だけでは、俺の炎は止められない!」


凛は息を整えた。


「そうね」


周囲を見る。


「だから、止めるんじゃない」


床には大量の水。


壁には水滴。


天井にも蒸気。


凛は両手を広げた。


「全部、使う」


水が一斉に動き始める。


一方、玄岳は静かに起爆装置を見ていた。


そして――。


カチッ。


中央の黒い球体がさらに赤く染まる。


玄岳が呟いた。


「……残り三段階」


蒼真が振り返る。


「三段階だと?」


玄岳は答えない。


その代わり、黒雷を再びまとわせた。


「急げ」


「……!」


「お前たちが仲間を助けたいならな」


蒼真は拳を握る。


「だったら、全部止める!」


風影刀を構えた。


しかし、その前に――。


倒したはずの風遁使いが、ゆっくり立ち上がった。


「待て……」


蒼真が振り向く。


「まだ何かあるのか?」


風遁使いは起爆装置を見た。


「その装置は……破壊するだけじゃ止まらない」


蒼真の表情が変わる。


「どういうことだ?」


「中央の黒い球体を壊せば……」


風遁使いが言葉を止める。


「地下全体に、逆流する」


玄岳が静かに笑った。


「ようやく気づいたか」


蒼真たちは起爆装置を見つめる。


破壊すれば爆発する。


放置すれば誘爆印が完成する。


その二つの選択肢しかないように見えた。


しかし――。


蒼真は風影刀を見る。


「……なら、壊し方を変える」


第102話 完

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