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099 唯、移動手段を提供する。

 状態異常完全無効のブレスレット、その本当の価値を知ってしまった私。

 ガーネット姫も私もてんやわんやなんだけど、フリルさまだけは至って冷静なまま…私の頭上にどっしりと座り、アホ毛を突っついて遊んでる。


―――さすが…なのかな…。


 さすが大物フリルさま。


「と…とりあえず、このまま冒険(ぼうけん)しよっか。ガーちゃんが持ってるぶんには大丈夫だと思うし。」

「そうです…ね。そうですよ。宝物庫(ほうもつこ)にあるものを私がお借りしたということで、はい。それで大丈夫な…はずです。」


 そうそう…ガーネット姫はお姫さま。

 王国の物を持ってても、特に問題ないと思う。


『ぴよよ』―――買ったのユイちゃんだし、別に大丈夫だよ。

「そだね…。」


 相変わらず冷静なフリルさま。

 30兆ゴールドだよ。


―――もとの世界的には…300兆…。


 国家予算ですか。


 たまには知的なツッコミもしてみたいお年頃。

 どうも、22歳のユイです。


「どうも、こんにちは。」

「あ、こんにちは。」

「こんにちは。」


 通りすがりのご婦人から突然のあいさつを受け、ちょっとびっくりしちゃった私。

 ガーネット姫はお(しと)やかな様子であいさつ…さすが。


「冒険者の方ですか?」

「はい。えっと…ユイと言います。」

「ガーネットです。」

「ユイさんに、ガーネットさん。」

「はい。」

「はじめまして。私、ハナミズキ・タウンで暮らしております、クララと申します。」


 クララさんからのご丁寧なあいさつに、背筋がピンとのびた。


「クララさん。この先はモンスターがたくさん出ていて、危険なんです。もしカエデの町や王都へと向かわれるのであれば、遠回りにはなりますが…ハナミズキ街道の方から向かわれた方がよろしいかと…。」


 そうそう。

 私はバグステータスだから大丈夫だったけど、普通に考えたら危なすぎる。

 クララさん、私と同じ感じで私服姿だし、モンスターに対峙するのは…。


「あら、これはご親切にありがとうございます。でも、ご安心ください。昔、何度も通った道ですので。」

「そう…ですか。」


 言葉に詰まったガーネット姫が、私に目線を送ってくれた。


―――た…頼られてる…!


 世紀の瞬間がやってきた。

 テンション、爆上げ。


「クララさん。もしよかったら、私たちと一緒に行きませんか?」

「よろしいのですか?何もお支払いできるようなものはありませんが…。」

「ご心配なく。ね、ガーちゃん。」

「はい。ユイはこう見えても、とってもすごい冒険者なんです。その気になれば、カエデの町までひとっ飛びですし。」

「…そうですか。では、お言葉に甘えて。」


 クララさんが優しく微笑んで、軽くおじぎをしてくれた。

 私はというと、そのまま氷魔法を展開。

 そう、即席ジェットコースターの準備。


―――今回は…とばさないよ。超低速運転。


「これは…最近の冒険者さんはすごいのね。」

「えへへ…あの、クララさんはどちらまで?」

「カエデの町に用がありまして。」

「わっかりました!」


 ちょっと噛んだけど、元気よく返事した私。

 そのまま氷のコースに、改良済みの座席を設置した。


「ユイ…なんか前より進化してませんか?」

「うん。便利な移動手段だし、たくさん乗れた方が良いかなって思って。」

「さすがですね。」

「えへへ…。」


 前は本当に板一枚って感じだったけど、そこに木で作った座席とかを設置…後ろにも板をくっつけて、つめれば4人くらい乗れる感じに仕上がった。

 ちなみに図工の評価「がんばりましょう」だった私に、そんなセンスはない。


―――前、クロックさんに会ったとき…ちょちょっとね。


 お願いしてみたら、ものの数分で仕上げてくれた。

 ギルドマスターに何を頼んでるんだ問題はさておいて、こうするしかなかった。

 私がカナヅチなんか振ろうものなら、それこそバグの力で地面に大穴があいちゃう…。


「どうぞ、ここに座ってください。ガーちゃんもここに。」

「あら、ありがとうございます。」

「はい。」


 モンスターわんさかいる街道だし、ある程度高度をとりたいところなんだけど…万が一のとき危ない。

 うんうん考えた結果、高度2メートルくらいを維持することにした。


―――モンスターが出たら、魔法バンバンすれば良いし。


 というわけで出発準備。

 ちなみに、安全のためのバーみたいなのもつけてもらった。

 本格的なジェットコースターになりつつある私の乗り物…さすがクロックさん。


「少し揺れますけど…魔法で囲っているので、安心してください。」

「はい。えぇ、素晴らしい防御魔法ですね。」

「…?」


 防御魔法を褒められた…のかな?

 なんだかよくわかんないけど、とりあえず自転車くらいのスピードを意識して…。


「では、出発しまーす。」


 風魔法を少しづつ展開し、ゆっくりとスピードをあげる。

 最小の状態からスタートすれば、大惨事にならないことを、今更(いまさら)ながら学んだ私だった。





「あの…差し支えなければ、おひとりでカエデの町へと向かわれた理由を…お聞かせいただけませんか?」


 そういえば私も気になってた。

 クララさん…少なくとも冒険者って雰囲気じゃないし、ギルドの人って感じでもない。

 町の人がこんなに危険な道を利用…それもひとりで…何か事情があるとは思ってるけど…。


「はい。実は、ハナミズキ・タウンで問題が起きておりまして…。」

「問題…ですか?」

「魚が…とれなくなってしまったのです。」

「え…お魚が!?」


 ショックを受けた私。

 食欲全開、お魚大好きの私にとって…辛い現実。


「ここ数日のことです。実は旦那が漁師をしておりまして…私にも何かできることはないかと…。」

「それで…カエデの町へ。」

「はい。カエデの町は商業の町、きっと良いエサや仕掛けが売ってあると思いまして。」

「なるほどです。」


 その後もクララさんに聞いてみたけど、理由は全くわからないらしい。

 突然、お魚がとれなくなっちゃって…海に潜ってみたら、お魚が一匹も見つけられなかったみたい。

 ガーネット姫もすっごく不思議がってた。


「そろそろ到着です。」


 カエデの町が見えてきた。

 途中、モンスターには何度かエンカウントしたけど、風魔法でキレイにお掃除しておいた。

 モンスターを右へ左へ上空へ…お掃除、お掃除。

 えへへ。

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