098 唯、価値を知る。
焼きそば、かき氷、串焼き。どうも、一に食欲、二に食欲、三四も食欲、五も食欲。旅の目的はもっぱら食べ物、22歳のユイです。
「ガーちゃん!そっちから来てるよ!」
カエルぴょこぴょこみたいなモンスターと戦闘中の私たち。しかし、そんなことはお構いなしな私の食欲…頭の中は食べ物でいっぱい。さっさと倒して進もう、進もう。はやく海の家へ。
「任せて…くださいっ!」
『ぴよっ!』
流石すぎる連携攻撃を決めたガーネット姫とフリルさま。私はというと、あいかわらずの盾役。ガーネット姫やフリルさまに近づこうとする輩…じゃなかった、モンスターを、片っ端から弾き飛ばしていく。
「このっ、へりゃ!とぉーっ!」
なんだっけ…ゲームセンターにあった、ワニをバシバシするゲームみたい。ちょっと楽しい。両手をフル活用して、全方位に対応中の私。いまさらながらカエルはちょっと…というか、かなり苦手なんだけど、モンスターだと思えば…なんか大丈夫。
―――ぐにゅ…ってのだけ…やっぱり…。
感触がどうも…。まぁ、仕方ない。街道の安全を保つ…これも冒険者としての仕事だもん。それに経験値とかアイテムとか、わんさか入手できてるし。
「ユイ!雷魔法、使っても良いですか?」
「雷…うん、大丈夫だよ!」
「では…失礼して…。ライトニング・ウェーブ!」
ガーネット姫が放った電撃…みごとに周囲のモンスターを屠った。もちろん私も巻き込まれてるけど、バグステータスは最強。ちょっとビリッてするくらいで、痛くはないし、ダメージもゼロ。客よせパンダ…じゃなかった、モンスターよせパンダとして、役割を果たした私。えっへん。
―――見た目の…問題かな…?
どうもモンスターは私ばっかりに寄ってきてる気がする。理由はおそらく…。装備ばっちり強くてかわいらしい杖を構えるガーネット姫。ちゃんと警戒魔法とかも使っているそうで、隙がない状態。
それに対して、隣を歩く私はというと…およそ冒険者とは思えない格好をしてる。杖は普段しまってるし、装備だってつけてない。…服は着てるよ。そんな格好だし、狙いやすい方と認識されても…仕方ないよね。
「ふぅ…もう大丈夫そうですね。」
『ぴよよ』―――周りのモンスターも襲ってくる様子はないよ。
「よかったー。アイテム回収、アイテム回収。」
戦闘は一段落の模様。モンスターの攻撃もやんだし、そこらじゅうに散らばってるアイテムを回収する。
―――ちょっと少ないかな…。
ユニヘア100連戦を経験した結果、アイテムの数量感覚すらバグに染まった私。100近いアイテムを前にして、ちょっとものたりない感じがしてる。私…ヤバい。
■
「そういえばガーちゃん。あのカエルみたいなの、なんて言うの?」
攻撃を諦めてくれたみたいで、フリルさまと追いかけっこして遊んでる…一匹のカエルさん。急に戦闘が始まっちゃったせいで、情報とか聞けてなかったし。ちょっと落ち着いてきたし、カエルみたいなモンスター呼びも…ちょっぴりかわいそうな気がする。
「 ポイログ ですね。」
「ポイログ?」
「ポイズン・フロッグの略称だそうです。毒を持っているので。」
略称はお菓子みたいな名前でかわいかったけど、意味は恐ろしかった。毒だし。
「えっ、毒もってるの!?」
「はい。」
「ガーちゃん、大丈夫だった!?」
私は状態異常へっちゃらだけど、毒って危ない。バシバシ弾き飛ばしてたけど、何匹かはそらしちゃってたと思う。
「はい。ほら、ユイからのプレゼントがありますから。」
右腕を軽くあげて、キラキラ輝くブレスレットを見せてくれたガーネット姫。とっても似合ってる。かわいい。
「あ…そっか。」
コホン…数時間前のこと、忘れてた。
それにしても、しっかり効果あるんだ。状態異常を無効化する…ゲームの世界だと秘宝とか超絶激レアアイテムに分類されてると思う。たしかに高かったけど、普通に買えるとは…さすが商業の拠点、カエデの町。
「でも、すごいですよね。毒を受けるとステータス画面にマークが出るんですが…それすら出てないです。完全に防げるなんて…やっぱり不思議なアイテムですね。私、聞いたことすらありませんでした。」
「だよね。私も思った。カエデの町ってやっぱりすごいんだね。」
『ぴよ』―――そうだよね。ボクも キセキの装備 を町で買えるとは思わなかったよ。
知らない単語とエンカウント。ヘルプミー。
「フリル様、これ…キセキの装備なのですか!?」
『ぴよよ』―――そうだよ。あれ、言ってなかったっけ?
「あ…あの…。」
『ぴよ』―――あ、ごめんユイちゃん。おいてけぼりにしちゃった。えっとね、キセキの装備っていうのはね…すっごい装備のこと。
フリルさま、いくら私でも…そこまでレベル落としてくれなくて大丈夫です…。
「キセキの装備は、簡単に言うと…えーっと…簡単には難しいですね。順を追って説明します。」
「うん。お願いしますです。」
「はい。まず、私の杖を例にとってみますね。この杖、入手方法が限られています。具体的には…とあるダンジョンにて入手するしかありません。モンスターからのドロップに似た感じです。」
そういえばゲームでもそんなのあった。町の鍛冶屋さんとかで作ってもらえるのは、上級装備くらいまで。それをこえる…例えばストーリークリア後の裏ボスに挑むような装備…超上級装備とかは、クエストとかで入手するしかなかったりする。この世界でもそういうのがあるみたい。へー。
「これらは ユニーク装備 と呼ばれています。世界屈指の装備生産職人さんをもってしても、生産は不可能とされています。」
「世界にひとつ…みたいな感じなんだね。」
「そうですね。ですから、私の杖とユイの杖は…少し模様が違います。性能も…若干ですが、異なります。あとは付与されているスキルも違いますね。それぞれに個性あり…そんな感じです。」
たしかに装飾のお花が少し違う。ガーネット姫のは情熱キレイなバラ、私のは太陽サンサンなヒマワリ。
「鑑定…というスキルでわかるのですが、ユニーク装備にはランクというものがあります。私の杖はランク8相当ですね。ユイの杖も同じくランク8相当です。そして、ランクが最大値である10の装備を…キセキの装備と呼称しているんです。」
「ふぇー。じゃあ、すっごい装備ってことなんだ。」
『ぴよ』―――ユイちゃん、それボクがさっき言ったまんま。
「あ…。」
コホン。フリルさま…こんな不束者ですが、今後ともよろしくお願いします。
「キセキの装備は…王国の宝物庫にすら存在していません。勇者様の剣と 限界地エーデルワイス に封印されている杖…このふたつしか確認されていません。」
「つまり…。」
「みっつめが…ここに。」
「…。」
「ど、どうしましょう!?」
「え!?いや、良いんじゃない?だって、ちゃんと買ったし。お金、払ったし。」
てんやわんやの私たち。「お金払った」と「買った」って、ほぼ同義だし。てか、なんであのお店のひと、気づかなかったんだろう。世界に数個となれば、もっととんでもない額しそうな気がする。
『ぴよ』―――そうだよ。本当なら30兆ゴールドくらいの価値だと思うんだけど…きっと、99パーセント引きの超特大セールだったんだよ。よかったね。
「え…えぇ…。」
スーパーな理論によって、店員さん涙目な結論を得たフリルさま。あの…はい、王国の宝物庫行き決定です…。




