096 唯、連戦する。
「ユイ、おそらくこんな感じの戦いが…しばらく続くと思います。」
「そ、そなの…?」
さらっとすごいことを教えてくれたガーネット姫。できれば聞きたくなかったです…はい。
「でも…頑張りましょう!経験値がたくさん手に入りますし…いつまでもユイに頼ってばかりではいけません。」
「ガーちゃん…。」
『ぴよ!』
フリルさまがガーネット姫の肩に着地した。応援の意味なのかな。優しい。…ところでフリルさま、なんで私だと頭にドスンで…ガーネット姫だと肩に優しくシュタッて着地なの…。
『ぴよよ』―――ユイちゃんだから。
理由になってないし。あと、やっぱりフリルさまって、私の思考を読んでるよね…。それはまぁ、良いとして…いや良くはないけども。
「ほかにどんなモンスターが出てくるの?」
「そうですね…。」
出現するモンスターがわかってれば、それなりに対策がたてられると思う。ゲームとかだと攻略サイトがあるけど、ここは異世界。そんな都合の良いデータはないわけで…。
―――まぁ、対策たてたって…やることは一緒なんだけどね…。
角材やらドアやらを振り回して、魔法でドッカンドッカンやるだけ。それでもなんとかなっちゃうのが…バグステータスの恐ろしさだったりするんだけど。
「一番は ユニヘア ですね。さきほどのモンスターです。ユニヘアがたくさん出現するので、この街道はほとんど使われていません。」
「そうなんだ…。」
やっぱり先に言って欲しかったよ…それ。
「あとは バナナナ ですかね。」
「バ…バナナ!?」
「バナナ…ではなく、バナナナです。ナがひとつ多いんです。」
「バナナナ…。」
バナナみたいなモンスターなのかな。てか、バナナみたいなモンスターって…あ、黄色いとか?甘いとかかな。え、食べれるの…?
想像が妄想をよび、思考が食欲にそまった私。でも、食べれるならそれに越したことはないもんね。経験値のついでに食料まで手に入るんだから。うん。
「バナナナは、黄色いカニのようなモンスターです。」
「カニなんだ。」
「はい。見た目はほとんどカニですね。ハサミがとても大きいのが特徴です。ユイが角材を振り回すように、バナナナは巨大なハサミを振り回してきます。捕まると厄介なので、距離をとって魔法で戦うのが基本ですね。」
「なるほど。」
『ぴよよ!』―――ウワサをすれば…来たよ!
フリルさまが示した方向、街道の先。そこには。
「黄色い…。それより…大きくないっ!?」
カニ…って表現して良いのかな。たしかにフォルムはカニなんだけど、大きさがおかしい。馬車だって普通に通れる街道なのに、その道を普通に占拠してる。たった一匹で。
―――私より…大きいよね、あれ。
視力検査できそうな距離があるのに、若干見上げなきゃいけないくらい。私なんて比較にならないほど大きい。3メートルくらいはある…かな。ハサミをブンブン振り上げて、こっちを威嚇してきてる。
『バナナナッ!バナナナッ!』
「ユイ、バナナナは雷系の攻撃をしてくるので、それに気をつけてください。」
「うん、わかった!」
防ぎかた、わからんけども。
■
「ふりゃっ!」
角材を振り回して、巨大なハサミに立ち向かった私。さっきからバチバチと雷撃を浴びまくってるけど、どんとこいバグステータス。ちっとも痛くないし、なんならキラキラしててちょっと楽しい。
―――ボフッ!
ん?今なんか、変な音しなかった…?
「ユイ!?」
『ぴ、ぴよ!?』―――ユイちゃん!?燃えてるっ!
「へ?…おわーぁぁっ!?」
角材が燃えてた。ロウソクみたいにファイアーしてる。息ふーふーして消火をはかったけど、余計に燃えてるし…。そっか、私はバグだけど、角材はバグじゃないもんね。雷撃受けまくってたし、そりゃそうか。
―――えっと…作戦変更っ!
水魔法で消化して、角材を街道に置く。投げつけようかとも思ったけど、跳ね返されたら危なそう。
『バナナッ!』
独特すぎる威嚇とともに、バナナナがハサミを振り下ろしてきた。重力加速度の力も借りて、重さは力な攻撃が迫る。
「ガーちゃん!そのまま魔法お願いっ!」
「はいっ!」
本当は私が魔法でドカドカやれば一瞬なんだけど、それだと私の戦闘スキルが上がんない。ガーネット姫が入手できる経験値も減っちゃうし、このスタイルが一番だと思ってる。私が敵の攻撃を防ぎつつ、ガーネット姫が魔法で削る。我ながら完璧なフォーメーション…ほれぼれする。えへへ。
「よい…しょっ!」
膝を軽くまげて、上空に向かってジャンピングアタック。私のネーミングセンスはさておいて、スーパーマンみたいに右手を突き上げる。そのまま迫りくるハサミと対峙。
―――ドガッッ!
よし、割れた。巨大なハサミがひび割れて、困惑の表情を浮かべたバナナナ。表情…よくわかんないけど、たぶんそんな感じだと思う。そのまま勢いに任せて…。
『バナナナナッ!』
「フニャッ!?」
反対のハサミでつかまれちゃった。普通なら絶望的な状況だけど、そこはバグステータスの私。ガーネット姫は気にせず攻撃を続けてるし、私自身も別に焦ってない。
―――なまは…さすがに危ないかな…?
丁度おいしそうなハサミが目の前に。このままかぶりついちゃおうか…とも思ったけど、衛生面を考えて諦めた。いくらバグステータスでも、おなかとかは乙女なまま。おなか壊しちゃったら一大事だし。
というわけで…もう一度作戦変更。




