095 唯、振り回される。
『グワウッ!』
来た。鋭利なツノを構えて一直線、ウサギ…じゃなかった、ユニヘアが突撃してきた。先陣をきってきたユニヘアAを、振り回した角材で吹き飛ばす私。速さは力…両手で構えて、そのまま草むらへと突き進む。
「とりゃ!それっ!とぉーっ!」
角材でコンボを決める。角度をつけてきたユニヘアBを受け止めて、勢いそのままにぐるぐると振り回す。ユニヘアC、D…なんだか面倒になっちゃった…片っ端から巻き込んで、吹き飛ばす。テンポ良く…右回し、左回し…持ち上げてズドン。その繰り返し。
荒ぶりまくった角材の急襲により、ユニヘアは光の粒子となった。キラーンという独特の効果音とともに、アイテムがポトリ。
―――うにゃにゃん…目が回るぅぅぅ…。
角材を振り回してた結果、自分まで回ってることに気づかなかった。バグステータスでもさすがにこれは防げない。千鳥足になりながら、なんとかして後ろを振り返る。
「ふにゃなにゃん…ガーちゃん、大丈夫ぅ?」
「はいっ! 荒ぶる風の導き―――コンダクト・ストーム! 」
街道にて応戦中のガーネット姫。走りながら距離をとって、風魔法をビュンビュンと飛ばしてる。コンダクト・ストームは、中級に分類される風魔法。杖を中心に竜巻みたいなのが発生して、ブロアーみたいなかんじで敵を吹き飛ばしていく。通称、お掃除魔法。
―――よーし…私も!
角材をユニヘアの大群めがけて投げつける。何匹かはアイテムに変わったけど、さすがの俊敏性でかわされちゃった…。でも大丈夫。そのまま取り出すは、ガーネット姫とおそろな杖。両手でしっかり構えて、何度も練習した魔法を唱える。
「 行き交う電光・内なる剛雷―――サンダーボルト・スフィア! 」
50匹ぐらいかな。ユニヘアを無色透明な球体が包む。そのなかをバリバリと…とんでもない音をたてて、雷撃が跋扈してる。感謝感激雨霰で混沌としている球体のなか…絶対入りたくない。あと、感謝と感激はないと思う。あるとしたら恐怖一択…。
数秒で球体のなかは静かになった。残ったのは大量のアイテム。どやっ!
「きゃっ!?」
「ガーちゃん!?」
ユニヘアの捨て身突撃をかわそうとして、石に躓いちゃったみたい。まずは防御魔法…そして…。
『ぴよよ!』―――任せて!
「フリルちゃん!」
私のアホ毛をバネにして、素早く空を支配したフリルさま。羽を大きく広げ、キラキラとした輝きを纏う。
『ぴよーぴぴよっ!』―――鶯遷・瞬間氷結!
ガーネット姫に迫ってた20匹近いユニヘア。瞬間的に絶対零度環境と化した現場…ピンで留められたように、空中で静止している。そのまま重力に従い、ボタボタと落下。
『ぴよ?』―――大丈夫だった?
「はい!ありがとうございます。」
「フリルちゃん、さすがだね。」
8割以上のユニヘアをアイテムに変えた頃、突撃してくる敵はいなくなった。そりゃ怖いよね。風でビュンビュン、雷バリバリ…あげく氷でカチンコチンだもん。
『ぴよ!』―――えっへん!
「ユイもさすがですね!」
「いや、ガーちゃんもすごいよ。私、あんな上手にかわせないし…。」
そうそう。ガーネット姫はちゃんと「戦闘」をしてるけど、私は…うん。ぶつかってきたのを吹き飛ばしてるだけ。バグステータスたよりきりの影響で、戦いのスキルとかは悲しいことになってる私。かわすのとかめっちゃ苦手だし。
「ユイの足をひっぱるわけにはいきませんから!」
「そんなことないよ…えへへ。」
今だから言えるけど…冒険を始めたばっかりの頃は、 アピール・ボム を隠れて使ってた。敵の注意を引きつける魔法。ガーネット姫に攻撃の矛先が向かないよう、私を的にしてた。でも最近はもう、その必要がないような状況。
―――やっぱりガーちゃんって…すごいなぁ。
語い力不足で、適切な表現ができなかった私。それはさておき…アイテムの回収を開始。丸っこいメダルみたいなのと、ツノがちらほら。モンスターを倒して手に入るアイテム、基本的にはギルドで買い取ってもらえる。ゲームみたく、武器とか装備品の素材になったりもするので、とっておいた方が良いものもあったりするらしい。
ちなみに強いモンスターほど、良いアイテムをドロップ…つまり、落としていってくれる確率が高い。レアアイテムを手に入れたいときは、何度も繰り返し同じモンスターと戦うことになるそう。この辺はゲームのシステムに似てるかも。
「あっ、レアアイテムですよ!」
「ほんと!?」
現金な私。レアと聞けば飛んでいく。
「ほら、これです。こっちがよくドロップする銀メダルで…これがレアドロップの金メダルです!」
「色が違う!」
金色と銀色を見比べて、当たり前すぎることを…とーっても大きな声で叫んじゃった私。恥ずかしさをバグの力で吹き飛ばすべく、真面目な質問を考える。
「それ…お高いの?」
下世話な質問しか思いつかなかった。ぐすん…。
「そうですね…買い取っていただくとなると…30万ゴールドくらいでしょうか。」
「さ、さんじゅうまんごーるどっ!?」
目ん玉飛び出すかと思った。私の感覚換算で、300万円くらい…おそろしい。モンスター1匹から、300万円…冒険者、ヤバい。
『ぴよよ』―――すっごい貴重なんだよ。ユニヘアの大群を数回相手して、1個入手できるかどうかくらいだから。
「そうなんだ。」
『ぴよ』―――コンマ1パーセント以下くらいだね。でも、売らない方が良いと思うよ。
「そなの?」
フリルさま曰く、金メダルは高レベル装備の作成における、必須級アイテムだそう。私に装備が必要かどうかはさておいて、買うとなると…倍くらいするらしい。それを聞いて、絶対に売らないと心に決めた…現金な私だった。




