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092 唯、デザートを確保する。

それからしばらく、カエデの町でショッピングに明け暮れた私たち。昨日は魔王軍(まおうぐん)とのドタバタで、しっかりみてまわれなかったし…。


「ユイ!これ、かわいいです!」

「ブレスレット?」

「はい!」


キャッキャしながら左腕に通したガーネット姫。オレンジを基調(きちょう)とした、優しい印象のつくり。普段使いするにもオッケーな感じの一品。


「私も何か買おうかな…ふへっ!?」


うーん…想像よりゼロが2つくらい多かった。実は「魔王軍捕縛の特別報酬」なんてのをもらったので、ふところ具合だけは絶好調の私。買えないことはないんだけど、ちょっと私には贅沢すぎる気がする。


「こちらのブレスレットには、状態異常効果を90パーセント近くカットする魔法が付与されております。冒険者の方々垂涎(すいぜん)の一品。当店としても、自信をもっておすすめできるものになっております。」

「9割も!?すごいんですね…。」


この世界、ゲームみたいに状態異常の概念がある。ビリビリの麻痺(まひ)とかスヤスヤの睡眠(すいみん)とか…基本は魔法使いがモンスターにかけるみたいだけど、モンスターが使ってくることもある。アイテムを使えばすぐに解除できるそうだけど、厄介なことには変わりない。


―――90パーセントなら、かかっていないのと同じくらいだし。


垂涎の一品という表現…ただのセールストークじゃないみたい。ところで私のバグステータス、唯一の弱点は状態異常…だと思ってたんだけど、この前衝撃の事実が発覚した。


私が優勝した力自慢大会…2回戦であたったひと、ズルをしてたっぽい。仲間の魔法使いと共謀して、対戦相手に麻痺の魔法をかけて邪魔してた。私、ちーっとも気づかなかったけど…。疑わしい点があったみたいで、誰かが調査を求めたそう。それで行われた聞き取りに対し、ズルを認めたらしい。


―――私…そんなに鈍感(どんかん)なのかな…。


なんてちょっと落ち込んだんだけど、実際は効いてないだけだったみたい。私のよくわからないスキルの影響か、それとも防御力が高すぎるためか…理由はわかんないけど、状態異常…私には無効。


―――でも、ガーちゃんにはあった方が良いよね。


ガーネット姫、冒険者としては超強いけど、状態異常は効いちゃう。というか、それが普通。私がおかしいだけ。


「店員さん、店員さん。」

「はい、なんでございましょう?」

「あの、完全に防げるアイテムなんて…ないですよね?」


ダメもとで聞いてみた。90パーセントカットでもすごいけど、もし100パーセントカットがあれば、そっちの方が良い。どうせ買うならなんとやら。普段からお世話になりっぱなしだし、必要なものをプレゼントしたほうが喜んでもらえると思う。


「…ございますが、その…。」

「あるんですか!?」

「はい。しかしですね…。」


奥歯にものでもつまったかのよう。どうも歯切れが悪い。


「あの…?」

「大変失礼ですが…当店、分割払いは受けつけておりませんので…。」


あ、そういうことか。仕方がない。こんなことしたくないけど。


「これで足りますか?」


とりあえずお財布から白金貨を3枚取り出してみた。白金貨1枚は10万ゴールドと一緒。ちなみに私の金銭感覚で換算すると、1ゴールド10円くらい。


「…!?しょ、少々お待ちください。」

「ユイ?」

「100パーセントカット、持ってきてもらえるみたい。」

「そんなすごいものがあるのですか!?」

「あるみたい。」


数分後、奥の部屋に通された私たち。そこにはフリルちゃんの色よりも…少し濃い感じの水色をしたブレスレットが。


「ガーちゃん。」

「はい。」


っと、その前に。


「フリルちゃん。」

『ぴよよ』―――任せて!…うん、大丈夫!スゴイ魔法だよ。


フリルさまのお墨付き、いただきました。心配しすぎかもしれないけど、アニメとかで良く出てくる「(のろ)いのアイテム」的なものだと…ものすっごく困る。そうじゃなくても…強すぎるアイテムには、デメリットがつきものだし。


「なんだかひんやりしていて…不思議な感じです。」

『ぴよぴよ』―――魔法の力が強いからね。すぐに慣れると思うよ。

「そうなのですか。せっかくですし…これにします。あの…お会計の方を…。」

「あ、いや、えーっと…私が買ってあげる!」


値段がバレないうちにカットイン。せっかくのプレゼントだし、できればわかんないようにしたい。後から買いに来ても良いけど、万が一売れちゃったりしたら…それはそれでショック。


「ありがとうございます。でも、大丈夫ですよ?ユイは…あれですし、私しか使いませんし…。」

「いいよいいよ。頼りっぱなしの私だし。お金はほら、昨日ギルドからもらえたのがあるから。」

「そうですか。では…お言葉に甘えて。」

「うん。」


というわけでこそこそとお会計。白金貨3枚で支払って、両手でギリギリ持てるくらいのゴールドが戻ってきた。どうせすぐに装備するものだけど、それらしいラッピングもお願いした。





店員さん総出の見送りにペコリと会釈(えしゃく)を返し、そのままカエデの町の散策を再開した私たち。ガーネット姫の右腕には、水色のブレスレットがキラリと光ってる。


「ガーちゃん、昨日の八百屋(やおや)さん寄ってみようよ。リンゴ、食べちゃったし。」

「ですね。魔王軍もいなくなったことですし、ゆっくりお買い物しましょう。」


ちょっと前なら「もう食べちゃったんですか!?」って驚かれるパターンだったんだけど…最近は慣れてもらえたというか…諦められたというか…。特段の驚きなく受け入れられている私。


―――王都からの帰り道…おなか空いちゃって…つい。


ひとりで話し相手もいなかったし、もぐもぐしながら寂しさを紛らわしてた。


「へいらっしゃい!」

「こんにちは。」

「おや?あ、昨日の冒険者さん。毎度。」

「リンゴ、買いに来ました。」


山盛りになってる真っ赤っかのリンゴ。シャキシャキしてて、とっても美味しかったんだよね。やっぱりデザートは別腹ですよ、うんうん。そう自分に言い聞かせつつ、買い物かごに次々と入れてく私。バグステータスのおかげで、重くないんです。えっへん。


「賑わいが戻りつつあるようで…良かったですね。」

「はい。何でも通りすがりの冒険者さんが、魔王軍のやつらを捕まえてくれたみたいで。いやー、本当に助かりましたよ。もうダメかと思ってましたが、これで一安心です。それに、あいつらが盗んでいった分の補償も受けられるそうで…ありがたい限りです。」

「それはそれは。」

「それにしても通りすがりの冒険者さんって…。」

「…。」


私たちのことだけど、自分たちから言うのも…なんか違う気がする。


「勇者さまのパーティーだったりして!わはははっ!」

「あ、あははは…。」


よかった…のかな?まぁ、良いよね。この町に日常が戻ってきた、それだけで十分というもので。


「えっと、これください。」

「毎度あり!」


リンゴを40個ほど買いました。またまた食べ物で収納がいっぱいになりそう。えへへ。

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