表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/156

091 唯、昔話をきく。

『よいしょっと。聞こえるー?』


テーブルの上でモコっと身体を(ふく)らませ、数回羽づくろいをしたフリルさま。かわいらしいサイズのくちばしをパクパク。


「うん、聞こえるよ。」

「私も大丈夫です。」


ぴよぴよ鳴き声は聞こえないけど、いつものかわいらしい声が響いてきてる。テレパシーみたいな感じなのかな、ちょっぴり不思議な感覚。


『ユイちゃん、ボクの名前って覚えてる?』

「もちろん。プリンチペッサ・フリルちゃんでしょ?」

『うん。鶯遷(おうせん)の三鳥、氷の姫鳥プリンチペッサ・フリルがボクの名前。そんなボクは、昔むかし大賢者(だいけんじゃ)さまにつくりだされた存在なんだ。』

「大賢者さま?」

『ガーネットちゃん、お願い。』

「お任せください。」


ポカンとしてる私に、ガーネット姫が説明してくれた。大賢者さまというのは、まだ魔王軍(まおうぐん)とかがいなかった頃に存在した賢人のことで、すごい魔法使いだったらしい。私が使っている魔法はもちろん、この世界にある魔法のほとんどが、大賢者さまによって発見されたそう。


―――超かしこい人じゃん。


なんだか適当なまとめかたしちゃったけど、いわゆる天才とかそういう次元(じげん)の人らしい。


「その大賢者さまが、フリルちゃんを魔法でつくったの?」

『そだね。もう少し詳しく説明すると…。ユイちゃん、地図持ってる?』

「あるよ。はい。」


一旦お茶の入った紙コップを片付けて、テーブルにドドンと地図を広げた。私は地図が苦手なタイプなので、新品同然。読めないわけじゃないんだけど、ガーネット姫に頼った方が…絶対安心。


『ここがタケノコの村ね。ボクがいた場所はこの辺り。』


フリルさまは、くちばしでタケノコの村の上あたり…方角で言うと北側をコツンとつっついた。


『昔はここに (いにしえ)(ほこら) っていうのがあって、そこに 魔法柱(まほうちゅう) ってのがあったの。』

「古の祠?魔法柱…?」


ちんぷんかんぷん。助けてガーネット姫。


「私も初めて聞きました。古の祠…ですか。」

『まぁ、もうないからね。それでね、簡単に言うと、魔法柱っていうのが…この世界を守ってたの。まだ村すらできていないような時代…魔法柱の力で、人々はこの世界を発展させてきたんだ。』

「なるほど…それがおさめられていたのが…。」

『古の祠。』

「…?」

「つまり、すごいアイテムがあって、それが大切に守られてきたということです。」

「あ、そういうこと。」


オッケー、完全に理解した。


『でね、その魔法柱っていうのが世界に4つあって、世界をうまい具合にカバーしてたんだ。それぞれ力の種類が違ってて、ボクのもととなってる魔法柱は… (まもり)の力 を持ってるんだ。』

「それで魔王の襲来とか防げてるんだよね。」


魔法柱はこの世界の(かなめ)で、発展と安全を支えていたらしい。この世界の四季がちょっぴり不思議な感じなのも、魔法柱が影響しているとのこと。例えばタケノコの村近くにあった魔法柱は、(ふゆ)の力を持っていて…だからタケノコの村の周囲にはずーっと雪が降っているそう。


『そゆこと。ちょっと話を戻して、まだ(ほこら)があった頃ね。強大な力を持つ魔法柱…悪用されることのないように、当時の人たちが幾重(いくえ)にも保護をかけたんだ。魔法で動く機械を設置したり、周囲を魔法で囲ったりしてね。』

「ダンジョン…みたいになったということでしょうか?」

『そんな感じかな?まぁ、ボクは覚えてないんだけど。』


右羽でアホ毛のあたりをなでたフリルさま。話にはなんとかついていけてる。…今のところ。


『それからすんごく時間が経ったあと、その保護が暴走しちゃったんだ。理由は知らないけど、たぶん魔法陣(まほうじん)の一部が風化(ふうか)した影響だと思う。』

「それ大変じゃん。だって、悪用されないようにすっごい強い魔法で囲ってたんでしょ?」


悪用されるのを防ぐためだから、超強力な対策がされていたはず。そんなのが暴走したら、上を下への大騒ぎ。せっかく築いた文明とか…無くなっちゃうかもしれない。


『うん。だから大混乱したみたい。そこで登場したのが…。』

「大賢者さま。」

『さすがガーネットちゃん。そゆこと。』

「…。」

『暴走への対処を頼まれた大賢者さま。その力をもって…4つの内3つの祠を攻略したんだけど、その後のことを考えたんだ。また封印(ふういん)みたいに強い保護をかけることもできるけど、また数百年後に同じ問題が起きちゃう。それで大賢者さまが考えたのが…。』

「魔法柱をもとにして、フリルちゃんをつくること…?」

『ユイちゃん…。』


絶妙な間が流れた。ガーネット姫にちょっとでも追いつこうと頑張ってはみたけど…的外れだったかな。


『ピンポンピンポーン!大正解。』

「やったー!」

「ユイ、さすがです。」

「えへへ…。」


()められた。


『魔法柱の力そのまま動けるようにしちゃえば、悪用されにくくなるでしょ?変なのが来たら、ボク自身で追い返せるわけだから。連れて行かれちゃっても、ピューって飛んで逃げ出せるし。』

「賢い…。さすが大賢者さま。」

『そして3つの魔法柱から、3匹の鳥がつくられたの。それが鶯遷(おうせん)の三鳥。』

「そうだったんだ。」

「その辺りのお話は、歴史書にものっています。私も先生方にご教授いただきました。」


―――ご教授…さすがお姫さま。


『でね、その内の1匹が…王都のそばにいるんだ。』

「王都のそば…?あ、それで近づきたくないの?」

『いや…近づきたくない…ってわけじゃなくて…。』


急にもじもじしだしちゃったフリルさま。普段は鈍感(どんかん)だけど、こういうときだけ頭の回転フルスピードな私。なんとなく察しがついた。


「フリルちゃん、そのこはなんていう名前なの?」

『プリンツ・キルシェくん。』

「プリンチペッサって、お姫さまって意味だったよね。」

『うん。』


氷の姫鳥と書いて、プリンチペッサ・フリル。


「プリンツは?」

『王子さま。…あっ。』


顔を両方の羽で隠しちゃったフリルさま。なんだ、それならそうと言ってくれれば良かったのに。お姫さまに王子さま…むふふ。


「フリルちゃん、会いたいけど会いたくないんだよね。わかる、わかるよその気持ち。」

『ユイちゃん…わかってくれる?』

「わかるよ、私もそういう気持ち経験してるもん。」

「ユイ…?」


私がガーネット姫に教えるという…世にも珍しい瞬間が訪れた。今日は雪かもしれない。


―――あ…またフラグたてちゃったかな…。


念のため、空を見上げる。うん、大丈夫そう。それはさておき。


「恋。」

「こい…?恋!」


気づいてくれたガーネット姫。優しい微笑みをうかべ、数回(うなづ)いてる。なんだか久しぶりに甘酸っぱい感情がおしよせてきた。


『コホン…。近くにいったらさ、やっぱり顔出さないと変じゃん…。』


すっかり恋する乙女(おとめ)モードのフリルさま。このままだと…みんなしてとけちゃいそうなので、ちょっと話題転換。


「それで、キルシェくんは…どんな力を持ってるの?」

『キルシェくんは、 ()の力 だね。大いなる(ひらめ)きを与えるって言われてるけど、詳しくはボクも知らないんだ。話そうとすると…その、テンパっちゃうし…。』


シュンと落ち込んじゃったフリルさま。よしよしとなでて、いつもの定位置に。


「フリルちゃん。一緒にがんばろう!私のジェットコースターならピュンってひとっとびだし、会いにいきたくなったら、いつでも言ってね。」

『ぴよ』―――ユイちゃん…。

「そうですよ。私も応援します!ゆっくり、一歩ずついきましょう!」

『ぴよよ』―――ガーネットちゃん…ありがと。


そんな甘酸っぱい思いを胸に、席をたった私たち。しばらくニヤニヤが止まんなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ