089 唯、支えられる。
カエデの町まではあと少し。風魔法を調整して、ちょっとずつスピードを緩める私。
―――突っ込んじゃうと…まずいし。
またまたギルドを壊しちゃったら、それこそ魔王軍と私…どっちが悪者がわかんなくなっちゃう。バグステータス…こういうときは気をつけないと、変な迷惑のかけかたをしちゃう。
「ん?」
ガーネット姫を見つけた。ギルド前でぴょんぴょんフリルさまと遊んでる。かわいい。
「ガーちゃん!フリルちゃーん!…うわっ!?」
嬉しさのあまり、ちょっと着陸角度をミスった私。華麗にシュタっと降り立つつもりだったんだけど…その予定は完全崩壊。台座ごと地面に突き刺さった私…。
「だ、大丈夫ですか!?」
『ぴよ!?』―――ユイちゃん!?
「…大丈夫…。えへへ、ごめんね。」
ズボッと台座を引き抜いて、苦笑いでおっちょこちょいをごまかした私。いや、ごまかしきれてはなかったと思う…。と、とりあえず、氷のコースを消そう。
「魔法削除。」
■
「それで…どうでしたか?」
「うん。本部ギルドにお任せしてきたよ。こっちにも応援が来てくれるはず。」
「そうですか…良かったです。」
ギルドのドアに手をかける私。
「あれ?直してくれたの?」
「はい。時間もありましたし、ドアはもちろん、ホール内もギルドの皆さんと直しておきました。…天井は…ちょっと時間がかかりそうですが…。」
「ありがとう…。あと…ご、ごめんなさい。」
天井は私がなんとかするとして…。
―――なんということでしょう。私がマーズごと吹き飛ばした入口…そこには素材の味をいかした無垢材のドアが。掲げられていた看板も、デコレーションが施されたモダンなものへと変わっていました。デコピンが巻き込んだテーブルとカウンターは…なんということでしょう。新品同然にレストアされているではありませんか。隙間風が寂しかったボロボロの壁も…フリルさまの氷で完璧に覆われています。
テレテレテレテレテーン…コホン。
「あ、ユイさん!」
「皆さん。ありがとうございました…私が壊しちゃったのに…。」
「いえ、これくらい、なんということはありません!それで、魔王軍の連中は…?」
「ギルドに引き渡してきました。これ、王都ギルドからギルドマスター宛てです。」
「ありがとうございます。早速確認します。」
預かっていた手紙を手渡した私。忘れないうちに。今回の一件は王城にも報告が上がるみたいだし、きっと良い風になっていくと思う。
「ガーネットひ」
「コホン!」
「ガーネット…さん。ユイさん。本当にありがとうございました。我々の力が足りないばかりに…魔王軍に支配されてしまうところでした。まずは町の復旧に全力を尽くしたいと思います。」
「よろしくお願いします。」
「はい。お任せください。復旧のための資金も…王都ギルドから補助していただけるとのことですし、早速町の皆さんに知らせてきます。」
そういってギルドを飛び出していったギルドマスター。カエデの町が本来の姿を取り戻す日も…きっと近いと思う。
■
その後も感謝の言葉をたくさんもらった私たち。途中から…気恥ずかしさでいっぱいいっぱいになっちゃった私。月も見え始めたし、そろそろお暇しよう。
「では、これで失礼します。」
重ねられる言葉を笑顔と会釈で乗り切って、街道付近まで戻ってきた私たち。
「あ、忘れてた!ガーちゃんにもお手紙が…。」
「私…ですか?ありがとうございます。」
「報告書…みたいなのだって。」
ガーネット姫のことは話してないんだけど、やっぱり情報は共有されてるみたい。そりゃそうだよね。王国のお姫さまが冒険に出るとなれば…ある程度の情報を伝達しとかないと、何かあったとき困るもん。もちろんガーネット姫のことは私がちゃーんと守るから、大丈夫だけど。えっへん。
『ぴよよ…』―――ユイちゃんのおっちょこちょいは…折り紙つきだからね…。
「…何か言った?」
『ぴよよ』―――なんでもないよ。
なんかフリルさまに思考を読まれた気がする。気のせいかな。気のせいだよね。
「やはりいろいろと事情があったのですね。たしかに…常に王都ギルドが手を出せるとなると…それはそれで問題ですもんね。」
「まぁでも、困ってる人がいたら、私たちで助ければ良いよ。難しいこともあるかもだけど、私バグステータスだし、なんとかなるよ。」
「そうですね!頼りにしてますよ、ユイ!」
「うん!任せて!」
「あっ!」
「えっ?ふぎゃっ!?」
「せめて…前は見ましょう…。」
案内標識に激突した私。当たり前のように粉砕しちゃった。案内標識が…。
「あわわわわっ…なおさないと…。」
『ぴよぴよ』―――ボクに任せて。
「う、うん。」
『ぴよー!』―――よいしょーっ!
魔法の光に包まれて、粉々だった案内標識が、本来の姿を取り戻した。なんということでしょう。
「おぉーっ!すごっ!」
「すごいですね!フリルさま。」
『ぴよ』―――へへーん!ユイちゃんがしょっちゅういろんな物を壊すから、修復魔法をおぼえたんだ。ユイちゃんが直接壊したのにしか使えないけどね。
「そうなんだ。ありがとう。」
「そうですね、ユイが歩くと…だいたい何かが壊れますからね。」
「うぐっ…。」
犬も歩けばみたいな扱いをされた私。自覚がありすぎて言い返せない。フリルさまも、うんうん頷いてる…。悲しい。
「あの、カエデの町が襲われたのは…どういう理由だったのですか?」
「うん。やっぱり食料が目的だったみたい。魔王の命令的には、カエデの町に拠点を作って、物品の横流しみたいなのを企んでたんだって。」
最初はマーズも口を噤んでたんだけど、私がデコピンの素振りを始めたら、洗いざらい話してくれた。隣でハゼンさんまでびくびくしてたのは…申し訳なかったけど。
「横流し…ですか。」
「本当に厄介だよね、魔王軍って。」
「そうなんですよ…。ユイにとってはデコピンできるサンドバックかもしれませんが、普通の冒険者にとってはかなりの脅威でして…。」
「…う、うん。」
そんな話をしつつ、宿屋を探す私たち。空きがなくて、ツインルーム一室でチェックイン。友だちどうしだし、なんてことないはずなんだけど…なぜかテンパった…。




