078 唯、朝陽に向かって。
翌朝。
―――うーん…こっちも良いよね…。あ、白に合わせるか。いや、季節感がな…。
旅立ちの日ということで、おめかしに気合い入りまくりの私。服をあわせてみては、鏡の前で唸り続けてる。
『ぴよよー』―――ユイちゃん、行こうよー。ごはんの時間だよー。
「ごめんね、もうちょっとだけ…。」
退屈な様子のフリルさま。迎賓館の皆さんにも申し訳ないので、そろそろ決めよう…。
―――帽子はこれにしたいんだよね。色的には…。
ライトブラウンなベレー帽、王都に来てからの記念すべき衝動買い第1号品。あとは自分のセンスを信じて…チェック柄のロングワンピースに、デニム地のジャケットを羽織ってみた。振りむきながら、フリル様にむかってポーズを決める私。どやー。
『ぴよ?ぴよよ』―――うん?あ、いいじゃん!
「ほんと!?」
『ぴよぴよ』―――似合ってるー!
「むふふふっ、ありがと。」
くるりと回転しつつ、広げっぱなしのお洋服を片付ける。魔法の収納はとっても便利で、適当に放り込んでもシワひとつつかない。洗濯不要といい、ズボラな私にとっては本当に最高の異世界。ベレー帽も一旦しまって、そのまま迎賓館内のレストランへ。
■
「ほわぁぁぁぁっ!」
オムライスにコーンスープ、シーザーサラダにオレンジジュース。私の大好物ばっかりのお品書きに、思わず声が漏れてしまった私。
「ユイ様のお好きなものをと…思いまして。」
「ユミさん、ありがとうございます!とっても嬉しいです!」
「最後にケーキもご用意しておりますので。」
あぁ、なんという甘美な響き。おなかまわり?大好物の前にそんなこと言っちゃいられませんぜ。
「ほ、本当ですか!?」
「はい。ごゆっくりお召し上がりください。」
「ありがとうございます。いただきます!」
バランスよくもぐもぐ。とーってもおいしい。フリル様の食べ過ぎ注意報もなんのその。
『ぴよ!』―――えいっ!
「ふひゃっ!?」
気づかないフリしてたら、おなかをつっつかれた。フリル様に視線を向けると、ジト目で返されちゃった。
「…ちゃんと、運動するから…ね?」
『ぴよー?』―――ほんとー?
「ほんとほんと。野菜もちゃんと食べるし、ほら。」
『ぴよよ』―――うーん…おっけー!
「やった!」
許可をいただいたので、思う存分。デザートまでちゃんといただきました。え?ホールケーキの残りはどうしたかって?…こほん…食べちゃいました。
『ぴよよ…』―――ユイちゃん…。
運動、がんばります…。がんばりますから、あたたかい目で見守ってくだしゃい…。
■
「皆さん、お世話になりました。」
「ユイ様…あの、私どもが申し上げられることではないのですが…機会がありましたら、また、ぜひお越しください。」
「ありがとうございます。あ、お土産もこんなたくさん…ありがとうございます。」
お土産ということで、お菓子を紙袋いっぱいにいただいちゃった。やっぱり子ども扱いされてる感が否めないけど、とっても嬉しい。当然ながらフリルさまの管理下に置かれました。…異存はないです…。
「いえ…では、お気をつけていってらっしゃいませ。」
「はい!」
またみんなで焼肉パーティーしたいな。ガーネット姫にお願いしとこ。そんなことを想像しながら、食欲で満ち溢れた頭をふりふり。転んだりすると恥ずかしすぎるので、地面に気をつけつつ、ゆっくりと。
―――ん?あれは…。
門のあたりにちらちらと見え隠れするバラの装飾。見慣れたそれに、歩くスピードが上がる。おそろな杖を持ち直して、そわそわしてる笑顔に急接近。
「ガーちゃん!」
「ユイ!おはようございます。」
「おはよ!」
緑色を基調としたワンピースに、銀色の防具。幅のある茶色のベルトが、良いアクセントとなってる。さすがのおしゃれセンスに脱帽の私。
「さすがガーちゃん。おしゃれだねー。」
「ふふっ、ありがとうございます。ユイのお帽子も、すっごく似合ってますよ。」
「えへへ…ありがと。」
『ぴよよ…』―――コーデ…すっごい時間かかったけどね…。
褒められた。うれしい。フリル様が何か言っていたみたいだけど、聞こえなかったもん。
「ユイ…。」
「うん。」
「これからも、よろしくお願いします。」
「こちらこそ…おっちょこちょいな『妹』ですが、どうぞよろしくお願いします。えへへ。」
「ふふふっ、はい。」
ベレー帽をかぶりなおして、そのまま太陽に向かって駆け出す私。
「ガーちゃん!行こう!」
「はいっ!」
こうしてガーネット姫の私の大冒険、その第二章が始まったのでした。




