075 唯、たくさんお願いする。
それからしばらくして、すっかり体調も良くなった私。いくら何でも王城にお泊りするわけにはいかないので、そろそろお暇しよう。
―――このベッド…すっごい気持ちいい…。
名残惜しすぎて、最後のさいごまでもふもふしてる。後ろ髪を散々にひかれつつ、ゆっくりと起き上がった私。お布団が恋しいのはいつものことだけど…。
「ガーちゃん。そろそろ戻るね。」
「あ、ちょっと待ってください。ジャイアント様がお会いしたいとのことで…。」
ちょっぴり頬を赤らめたガーネット姫。つい数日前まで、どうしましょう…を絵に描いたみたいな表情だった。責任感が強くて無理を重ねちゃうガーネット姫。とっても心配してたけど…。
―――よかったね、ガーちゃん!
ヒマワリの町での防衛戦、あの時の一幕を私は聞いてる。もっとも、ガーネット姫の言葉だから、結構な色眼鏡だとは思うけど…。「颯爽と駆けつけて、私に迫っていた攻撃をはじき返してくださったのです!背後を任せ合いまして…窮地を乗り越えました!」なんて、すっごい笑顔で教えてくれた。顔真っ赤にして、もじもじしながら。ちょっぴり冷やかしちゃおうかな、って思っちゃうくらいだった。むふふ。
「うん。どこに行けば良い?」
「隣に会議室がありますので、そちらで。」
「わかったよ。フリルちゃんも一緒に行こ!」
『ぴよよ』―――ボ、ボクは隠れてる…。
「そっか…。」
そういって小さくなっちゃったフリルさま。そのまま私の髪飾りに隠れちゃった。よっぽどの事情があるんだね…。
「ユイ、すみませんがこれから予定がありまして…。明日の朝、迎賓館の方へ参りますので、よろしくお願いします。」
「うん。楽しみに待ってる!」
「はい!」
ガーネット姫に案内してもらって、会議室まで。…といっても隣だけど、私の方向音痴は次元が違う。数メートルでも迷子になる自信がある。えっへん。
「では、ユイ。ごきげんよう。」
「ご、ごきげんよう…で、す。」
「あっ!す、すみません…。」
「ううん。えへへ、なんか格好良い!」
そんな会話を終えて、私は会議室へ。
■
「ユイ様!」
すごい笑顔で手を振っているジャイアントさん。振り返そうかとも思ったけど、公爵家の次男さまという立場を思い出した。さすがにまずいような気が…。
「ジャイアントさ…じゃなくて、ジャイッアント様。」
慣れない敬称を使った結果、盛大に噛みまくった私。スタッカートが迷子になってる…。
「ジャイアントで大丈夫ですよ?」
「えっと…ジャイアントさんで…。」
「はい。」
簡単にあきらめた私。それはさておき、何かありましたか?という視線を送ってみる。
「実は…ユイ様にお願いがありまして。」
「…はい。何でしょうか?」
「ガーネット様との冒険のことなんですが…。」
「ああ、安心してください。危ないところには行かないようにしますし、ヒマワリの町にも顔を出しますし。」
そうだよね、新婚さんだもんね。そりゃ会いたいよね。心配だよね。いいなー、いいなー。私もそんな風に思われたいなー。
「いえ、そうではなくてですね。」
「ふえ?」
「ガーネット様に…いろいろな世界を見せてあげていただきたいのです。ユイ様と一緒ならば心配ありませんし、妻の夢…どこまでも追いかけさせてあげたいのです。」
「ジャイアントさん…妻って良いですね!ふふふっ。」
「あ!えっと…それはその…まだ…いえ。はい。大切な妻…になる予定の方ですので。」
こんながっちりしてるジャイアントさんが、すっごくふにゃふにゃしてる。このこのーってしちゃおっかなー。脇腹あたりをつっつくフリだけしてみる。えへへ。
「わかりました。でも、ヒマワリの町にはときどき戻りますね。皆さんと会いたいですし。」
「はい。ありがとうございます。あ、そういえば女の子が…という話を伺ったのですが。」
「女の子…?あ、カイルくんの妹さんですね。カイルくんと一緒に住むために、ヒマワリの町へお引越ししてもらったんです。ギルドの人たちにお願いして。魔法の力によって体調が優れないみたいで…すみませんが、サポートをお願いします。」
「それはもちろんです。お任せください。ヒマワリの町を守るということは、町の人たちを守るということ…不肖ジャイアント、しっかりとつとめさせていただきます。」
「ありがとうございます。お願いします。あとですね…。」
力自慢大会で出会った、オタツさんたちのこともお願いしておいた。あと、タンクさんのことも。たくさん丸投げしちゃってごめんなさいも一緒に…。




