070 唯、お揃いをもらう。
「それでな、ユイ。そなたに何か褒美をとらそうと思う。そなたの働きは勇者のそれにも勝るもの…いかなるものでもとらせようと思っておる。何かのぞみはあるか?」
「…いえ…私は、冒険者としての仕事をしただけでして…報酬もちゃんといただきましたし。」
―――本音は「お肉ください」なんだけど、そんなこと言えないよ…。
「そうか…やはり娘の言うとおりの人物だな。しかし、褒美をとらせんというわけにもいかん。こちらで適当なものを用意しよう。タンク、タンクはおるか?」
「陛下!タンク、これに。」
「タンク。宝物庫にある杖のリストを用意してまいれ。」
「はっ!」
スゴい勢いで部屋を飛び出していったタンクさん。遠慮しなきゃなんだけど、杖をもらえるのは素直にうれしい。なんでか知らないけど、杖なしで魔法を使えちゃってる私。ガーちゃんの杖を見てて、ちょっぴりうらやましく思ったこと…ないこともない。
「さてと、ところでユイ。これは提案なのだが、魔法会議の賢人と会ってみるつもりはないか?」
「魔法会議…ですか?」
わからない単語が飛んできて、困っちゃったよさあ大変。ガーネット姫に助けてくださいの視線を送る。
「ユイ。私もお会いしてみた方が良いと思います。魔法会議は、魔法に関するさまざまな決定を行う機関でして、高名な魔法学者の先生方で構成されております。ユイの悩みも解決していただけることと思いますし。」
「うむ。娘の言うとおりだ。多くの疑問を解決してくれることだろう。」
「…わかりました。よろしくお願いします。」
「うむ。会議まではしばらくある。それまでゆっくりしておるとよかろう。」
「ありがとうございます。」
国王様が扉の方へと向かわれた。ガーネット姫にならって、私も頭を下げる。扉の閉まる音が響いて数秒…力が抜けちゃった私。へなへなと座り込む。
「ふ、ふへぇ…緊張したぁ…。」
「ふふふっ、ユイ、大丈夫ですか?」
「…うん。あ、さっきありがとね。それって何ですか…なんて聞けないし…。」
「いえ。わからないことがあれば、何でも聞いてください。魔法会議には私も出席しますので。」
「よかった…ありがと。」
学者先生にいろいろ聞かれたら、絶対にぼろが出ちゃう。異世界から来たこと、隠すことでもないとは思うんだけど…。
―――研究対象とかにされちゃったら…大変だもんね。もう手遅れなくらい目立っちゃってる気もするけど…。
「失礼します。ユイさん、こちらが宝物庫にある杖のリストになります。」
「ありがとうございます。えっと…本当に良いんですか?」
「ユイ、遠慮することはありません。宝物庫の全てでも良いと、父も申しておりましたし。」
「そ、そんなに!?…それなら…えっと…ガーちゃんと一緒の杖ってありますか?」
「姫様の杖ですか…?そうですね…あ、ありますね。ダンジョンにて発見された杖でして、装飾が若干異なりますが。こちらまでお持ちしますね。」
そのまま宝物庫へと取りに行ってくれたタンクさん。そして「ガーちゃん」呼びには慣れてもらえたみたい。国王様にもオッケー貰えたし、これからは堂々とガーちゃんって呼べる。むふふ。
「ユイ、よかったのですか?私はユイと一緒ならばうれしいですけど…もっと高価な杖もありますよ?」
「うん。ガーちゃんとおそろが良いんだ。それに…私、杖使わないし…。」
「おそろ…?」
「お揃いってことー。」
「おそろ…!ユイとおそろです!」
キャッキャと女子会トークがスタート。あ…ジャイアントさん、ほったらかしてごめんなさい。
■
それから少しして、ガーちゃんとおそろな杖をいただきました。使わないけどかわいさ満点。どうも、力自慢大会では「美少女魔法使い」と紹介してもらえた、22歳のユイです。杖のかわいさに負けないよう、善処します。…じゃなくて…。
「ユイ、ここが魔法会議の会場になります。」
「…は、はい…。」
「緊張しなくても大丈夫ですよ?」
「いや、だって…先生だよ、先生。絶対緊張するもん。」
緊張に限界量ってないのかな。これだけ緊張したら、もう緊張しない…みたいなのが欲しいです…。バグステータスのおまけかなんかで、もらえたりしないかな…なんて。
「大丈夫ですよ。ユイの噂、皆さんご存知ですから。世界最強の魔法使いを敵に回すようなこと…誰もされませんから。ね。」
「う、うん…。」
―――それって…怖がられてるってことだよね…。それはそれで悲しいんだけど…。
「では、参りましょう。タンク。」
「はい。」
タンクさんによって開けられたドア。荘厳な音が響くなか、私は右手と右足を同時に進めるのだった。




