068 唯、みんなで楽しむ。
バグステータスの力を思う存分発揮して、順当に勝ち進んだ私。力自慢大会の会場はというと、上を下への大騒ぎになっちゃった。
「あり得ない…この俺が負けるなんて…。」
「全く歯が立たない…こんなことが…。」
「うぉーっ!僕の血のにじむような練習が…。」
―――なんというか…ごめんなさい…。
でも、優勝は譲れないんです。賞金はもちろんなんだけど、副賞の「牛肉3キロ」に心を奪われている私。モンスターのお肉が主に流通しているこの世界、牛肉とか豚肉とかは高級品だったりする。それがロハでもらえるなんて…ひとのお金で食べさせてもらう焼肉って…余計においしいもんね…ぐへへ。
―――久しぶりの焼肉…焼肉…!
食欲のためにバグステータスを解放しました。どうも、焼肉はお肉だけでお腹いっぱいになりたい乙女、22歳のユイです。
「それでは決勝戦を始めます!まずは今大会の台風の目、ダークホースの美少女魔法使いユイ選手!」
歓声のなかを駆け抜ける私。焼肉、焼肉。
「対するは前回優勝者にして王都一の力自慢!通算10回目の優勝なるか、マサル選手!」
ひときわ大きな歓声を浴びた肉体美、力こそパワーといった感じの巨体が目の前に。若干の恐怖を感じたけど、私の目には「焼肉」という二文字しか入ってません。焼肉。
「それでは参りましょう…レディー…ファイッ!」
―――焼肉っ!
■
どうも。第87回力自慢大会優勝者にして、3キロのお肉を手にした22歳、ユイです。
『ぴよよ…』―――ユイちゃん…やっぱり賢者さまより強い…。―――
「ん?フリルちゃん、なんか言ったぁ?」
『ぴよよ、ぴよ』―――なんでもないよ。それより、ユイちゃんって料理できるの?―――
「…あっ…。で、できる、できるよ!」
できる、できますとも。味付けが苦手なのと、火を使うと暗黒物質を生成しちゃうだけだもん。それ以外なら問題ないし…。
―――迎賓館のスタッフさんにお願いしよ…。
高いお肉だしね…今回だけ、今回だけ。
「ユイさん!」
「ふわっ!?」
急に呼ばれてびっくりジャンプ。振り返るとそこには見覚えのある方々が。
「お控えなすって!手前、生国と発しますはカエデの町にござんす。商売繁盛には縁もなく、流れながれてハナミズキ…冒険の道も王都の水も性に合わない旅暮らし…宵闇のオタツと二つ名のじゃじゃ馬小娘にござんす。」
「その道連れはハナミズキ、宵闇の姉御に惚れにほれてのこの稼業。誰が呼んだかでくのぼう、右腕の古傷はご愛敬…ゴウトと申す青二才で。」
「姉御と兄者を追いかけて、よちよち歩きの旅路地を。旅は道連れ世は情け、転んでばかりの人生街道…未熟者ゼウトにございます。」
「以後、お見知りおきのほど、お頼もうします。」
力自慢大会でもお見かけした、屈強なお兄さんたちとお姉さん。えっと…その、そんなキラキラの目で見つめられましても…。フリルさまも固まっちゃってるし…。
「あの…。」
「へい!」
「私に…何か?」
「ユイさん、弟子入りをお願いしたく!」
「ふぇっ!?」
「王都が誇る屈強な戦士をばっさばっさ、赤子の手をひねるかのようなそのおふるまい…最強の存在とお見受けしました。世界は広いと知り、真っ当な道を歩むことを決めたは良いものの…。頼るあてもなく…手前どもにどうか、手ほどきを。」
今までなら困っちゃうところだったけど、さすがにもう慣れた。私がとやかく言えることなんて何もないんだけど、ヒマワリの町には強い人たちがたくさんいる。というわけで。
「私がお世話になったところで良ければ…ご紹介しますが…?」
「まずはそこで学べということでございますね!わかりました、ぜひ、お願い申し上げます!」
「わ、わかりました。旅立の街道をずっと進んだ先に、ヒマワリの町というところがあります。冒険者を目指すのであれば、そこのギルドで…。」
「どこの馬の骨ともわからぬ手前どものために…ありがとうございます!早速出立します。ユイさんに認めていただけるよう、精いっぱい頑張ります!行くよ、お前たち!」
「姉御、どこまでもついていきますぜ!」
「がってんだ!」
元気いっぱいに駆け出して行ったオタツさんご一行。…クロックさん、ごめんなさい。お願いします。
■
「おかえりなさいませ、ユイ様。王都はいかがでございましたか?」
迎賓館に到着し、メイドのユミさんに迎えられた私。最初は20人くらいのお見送りとお出迎えがあったんだけど、さすがに申し訳なさすぎて…。粘り強く遠慮した結果、なんとかお出迎えのみにしてもらえた。
「はい!とっても美味しかった…じゃなくて、楽しかったです!お買い物もいっぱいできましたし、おいしいものもたくさん食べられました。」
「左様でございますか。王都は眠らない町とも呼ばれております。ご夕食の後、よろしければ夜の街並みなどもおすすめでございますよ。」
「そうなんですか。あ、あの…実はお願いがありまして…。」
「なんなりとお申し付けくださいませ。」
副賞のお肉を取り出し、両手で抱えた私。
「牛肉をもらっちゃいまして…5キロほど。もしよかったら、迎賓館の皆さんと焼肉パーティーとか良いかな?と思いまして…。」
副賞は3キロだったけど、賞金使って買い足しちゃった私。焼肉、焼肉。
「…あの…そのお肉、たしか力自慢大会の副賞だったと記憶しておりますが…?」
「はい。なりゆきで参加しちゃいまして…。あ、もしかして迷惑だったりしますか…?予定とかありますもんね…。」
「いえ!このようなお誘いをいただけることなど…初めてのことでございまして…。すぐに準備させていただきます!」
というわけで始まった焼肉パーティー。ガーネット姫の一声のおかげもあって、スタッフさんのご家族も参加しての大賑わい。お世話になったお礼もこめて、エビとか貝とかもたっくさん買ってきちゃった。えへへ。とーっても美味しかった。
今度はガーネット姫も一緒に…そんなことを思った楽しいたのしい休日だった。




