067 唯、休日を楽しむ。
今日は休日。せっかくの王都だし、ショッピングにしゃれこもうと決めた私とフリルさま。天気は上々、気分も上々。からし色のお財布を握りしめ、王都を上へ下への大移動。
「わぁー、この服かわいいっ!」
チェック柄のオーバーサイズシャツに目を奪われた私。ヒマワリの町でもらった一張羅、水色のワンピースは大好きなんだけど、だんだんと季節的な問題が出てきてた。おしゃれは我慢って聞いたことあるけど、異世界で無理はしたくない。
『ぴよ?ぴぴよ』―――秋っぽい感じかな?似合うと思うよー!ユイちゃんかわいいから。―――
「ほんと?じゃあ…買っちゃおうか…。」
フリルさまの褒め上手に乗せられて、さっきから買いまくり。ごはん目当てのおせじだと知ってるけど、褒められるとやっぱりうれしいもん。えへへ。どうも、すっかりフリルさまの虜になりました。22歳、乙女なユイです。
「ありがとうございましたー!」
荷物片手にへたっぴなスキップ、慣れない鼻唄を添えて町を練り歩く私。魔法で収納しちゃえば良いんだけど、なんか持ってた方が雰囲気でるもんね。
『ぴよぴよ』―――ユイちゃん!あっち行ってみようよー!―――
「右の道?」
『ぴよ』―――うん。おいしそうな匂いがするよ!―――
食欲に完敗した私とフリルさま。匂いにつられて横道へとそれていく。
「いらっしゃーい!おいしいシュークリームはいかがっすかー?」
―――しゅ…しゅーくりーむっ!?
買います、買います。箱で買います。おなかまわり?シュークリームの前に、そんなこと気にしちゃいられませんぜ…フリルのだんな。謎のドヤ顔を決めて、そのまま甘さの魔力に吸い込まれていった私。お風呂で悲鳴を上げることになるんだけど…それはもう少し先のお話…。
『ぴよよ!』―――ボクも食べたーい!―――
「食べても大丈夫…なのかな…?」
『ぴよ?ぴーよ』―――心配してくれてるの?大丈夫だよ、ボク、魔法の鳥だからね。―――
「そだったね。はい、どーぞ。」
『ぴよよ』―――わぁ!ありがとー!―――
羽を使って器用に食べ始めたフリルさま。私も隣に座ってぱくり。
「むぅふふぅぅぅ…しあわせぇー。」
『ぴよよー』―――あまぁーい。―――
「…もう一つだけ…。」
『ぴよ…』―――ユイちゃん…。―――
フリルさまのジト目に怯えつつ、箱の中へとこっそり手を伸ばすのでした。
■
買い物して、観光して、おやつも食べて、大満足の私。木陰に設置されてたベンチに腰をおろして、ちょっぴり休憩タイム。
「楽しかったねー、フリルちゃん。」
『ぴよ!ぴぴよぴよ』―――うん!…でも、ユイちゃん、食べ過ぎだよ…。―――
「あ、あははは…。」
おなかをさすりつつ、現実を受け入れる私。たしかに…ちょっと…いや、かなりヤバいかな…。
「今年こそは絶対優勝だ!」
「いや、勝つのは俺だ!ランクじゃ敵わないが、この名誉だけは譲れない!」
「何をぉーっ!?」
「こーら!ふたりとも、道でケンカしないの!」
「あ、姉御…すいやせん。」
「ほら、もう少しで締め切りだから、早く行くわよ。」
「へい。」
び…びっくりした…。バグステータスの私でも、心はかよわい22歳女子。屈強なお兄さんたちのケンカは怖いです。フリルさまもびっくりして固まってるし。
―――でも…さっきからたくさんだよね。
ケンカじゃなくて、屈強なお兄さんたちが。なんか皆さん気合い入ってる様子だし、何かあるのかな。固まっていたフリルさまをよしよししつつ、ベンチから立ち上がる。好奇心に連れられて、屈強なお兄さんたちの後をついていった。
「第87回…力自慢大会…?」
王都の広場に掲げられていた看板には、そう書かれてた。私の背丈くらいあるトロフィーの周囲には、いかにも力自慢ですって感じの人たちがたくさん集まっている。掲示されているポスターには、「腕相撲一本勝負」と書かれてた。どうやら腕相撲チャンピオンを決めるみたい。
―――ヒマワリの町だと…丸太の早切り大会だったよね。
ちょっぴり懐かしい思い出にひたった私。まだ半月も経ってないのに、ノスタルジーな感じ…。
「さぁさぁ、今年も始まりました王都商店街主催、力自慢大会!参加受付はただいまを持って締め切りとなります。参加者の皆さん、対戦カードの抽選を行いますので、受付までおこしくださーい!」
いよいよ始まるみたい。観客席もあるみたいだし、せっかくなら…。
「フリルちゃん、見ていこっか…うわっ!?」
『ぴよ!?』―――ふぎゃ!?―――
「お、押さないでくだ…。」
『ぴぴよ…』―――ユ、ユイちゃん…。―――
参加者さんの列に巻き込まれてしまった。前に人、後ろに人、右に人、左に人…なんなら身長の関係で、上まで人。四方八方を囲まれてしまった私。流れに身を任せるしかなくなっちゃった…。
「はい、じゃあ、お姉さんは14番になりまーす。」
「え!?わ、わたしは…。」
「はい、次の方どうぞー!」
―――受付されちゃったよ…。
■
「では続いて…13番と14番の方、ステージへとおあがりください!」
『ぴぴよ!』―――ユイちゃん、呼ばれたよ!行こ、行こ!」
周囲の筋肉量に恐怖を感じる私。対してなぜかノリノリなフリルさま。見れば観客席にはあふれんばかりの人だかりが。引くにひけなくなり、おそるおそる立ち上がった私。
「…子どもが参加?」
「いや、冒険者なんじゃないか?わざわざエントリーしたくらいだし。」
「でも、服装…それに、頭に鳥のせてるし。」
ざわつき始めた会場。ごめんなさい、出るつもりなんてなかったんです…。
「お嬢ちゃん…賞金を必要とするよっぽどの事情があるんだろうが、手加減は出来ねー。悪く思うなよ。」
「ひゃ…ひゃい。」
怖。怖すぎる。ハゼンさんとはまた違った角度の恐ろしさを感じる。さっきまでの元気はどこへやら…フリルさまも固まってる。
「準備はよろしいでしょうか…。」
無理。無理です。まだです。まだまだ。私、かよわい女の子なんです。無理です。
「レディー…ファイッ!」
「ふんなーっ!」
―――きゃぁぁぁぁぁっ…?
あ、忘れてた。私、バグステータスだった。
「…?すげぇ、ドンドンさんの力を受けて、微動だにしてない…。どうなってるんだ…!?」
「おーっと!?これは想定外の事態!前回準優勝のドンドン選手、その力を涼しい顔で受け止めている!?」
「手加減してやってるんだろ…さすがに?」
「いや…でも、ドンドンさんの顔、どんどん真っ赤に…。」
「ふおぉぉぉっ!ぐぐぐっ…お嬢ちゃん…やるじゃねーか…。ただ、受け止めるので精いっぱいじゃあ…勝てねーぜっ!」
ごめんなさい。まだ、力いれてないんです…。というわけで。
「よいしょーっ!」
「ほわっ!?」
「勝負あり!勝者、ユイ選手!」
「まじかよっ!?」
「ドンドンさんが…あんな簡単に!?」
「や…やばすぎるだろ…あのお嬢ちゃん…。」
『ぴよよー!』―――やったー!―――
ぐへへ、これがバグステータスでさ。




