065 唯、小さくなる。
意を決して、コース作成を始めた私。万が一にも王城を突き破ったりしないように、進みながら延ばす作戦で進めることにした。氷魔法の扱いにも慣れてきて、カーブはもちろんループだって作れちゃうくらいだけど。
もうお馴染みとなった板を取り出して、氷の上に設置。防御魔法で周囲をガチガチに固めて、タケノコの村でもらった座布団を敷く。乗り心地も重視した、ユイ特製ジェットコースターの完成。
「ユ、ユイ…頼んでおいてなんですが…できるだけゆっくりな感じで…。」
「大丈夫!氷魔法はとけないってわかったし。」
「そう…ですね。はい。お願いします。」
『ぴぴよ』―――えーっと…ボクは自分で飛ぶから大丈夫だよ。あはは…。―――
普通、氷魔法はとけるはずなんだけど、私のそれはとけなかった。実験のため、昨日の夜に作った雪だるまさんもまだ消えていない。たぶんバグステータスのせい…だとは思うんだけど、フリルさま曰く、「魔法削除」で消さない限りは残り続けるとのことだった。
―――【魔法削除】アウス・シャルテン
魔法の効力を消し去る魔法。使用者自らが発動した魔法については、コストなく削除することができる。それ以外の場合には、削除しようとする魔法と同等の魔法の力を必要とする。魔法は時間経過とともに消滅するため、使用する機会は限られている。なお、魔法攻撃を受けた際には、防御魔法で対抗する方が効率的である。
―――
―――でも…それならなんで、最初に作った氷のコースは消えちゃったんだろう…?
魔王軍の指揮者だったハゼンさんを、恐怖のどん底におとしてしまったあのコース。正確なタイミングまではわからないけど、消えていたのはたしか。
「ユイ…?どうかしましたか?」
「…ふぇ?あ、ごめんね。ちょーっと考えごとを…。」
「らしくないですよ。ユイは…あっけらかんとしてるところが良いんですから。」
「…そ、そだね。」
―――ん…?いじられてる、私?
でも、たしかに。考えてもわかんない。基本書を熟読してみたけど、特に気になるところもなかったし。王都に着いたら偉い先生がたくさんみえるらしいし、いろいろ聞いてみよう。
「さてと。じゃあ、出発しまーす。ガーちゃん、フリルさま…ちゃんとつかまっててね。」
「お願いします。あの…ゆっくり…ゆっくりで大丈夫ですから…。」
ちょっとだけ慣れた様子のガーネット姫。覚悟を決めて私の頭上に陣取ったフリルさま。三者三様の思いを乗せて、即席ジェットコースターは動き始めた。
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上空数十メートルの旅路は、とっても快適だった。最初は目をつぶっていたフリルさまも、途中からはガーネット姫と一緒に、あっちを見て歓声、こっちを見て歓声のくりかえし。見晴らし最高だし、防御魔法のおかげで気温もベスト。
―――ずっと活用したいけど、高低差がないと使いづらいんだよね…。
風魔法でコントロールしているとはいえ、のぼり坂は結構つらかったりする。のぼれないわけじゃなくて、力加減が難しい。あんまり力をかけすぎると、それこそジャンプ台みたいになっちゃうし…。
「ユイ!ここが王都です!」
「わぁー、すごーっ!」
私の心配なんてどこ吹く風、ガーネット姫の元気な声がこだましてる。そして私の語彙力も絶賛崩壊中…いつものことだけど。情景描写はどこいっちゃったんだろ…。
コホン…。ところせましと立ち並んだ建物。さすがに高層ビルみたいなものはないけど、かなりがっちりとしたつくりに見える。そんな王都のど真ん中、アニメに出てきそうな雰囲気の王城が、これでもかと威厳を放っていた。
―――なんか…本当にアニメの世界に来たみたい!
自然と心が踊る。王都を囲む塀に支柱をつくらせてもらって、王城まで一直線のコースを形成した私。衛兵さんらしき人がびっくり眼で見上げているので、しっかりと微笑みを返しておく。敵意はありませんよオーラましましで。
「ガーちゃん、どこにおりれば良い?」
「えっとですね…向かって左側に、広場があるので…その辺りにお願いします。」
「オッケー。えーっと…あ、あそこの芝生がはえてるとこ?」
「そうです。あらっ?」
こちらに手を振っている人たちがいた。ちょっと強面のお兄さん、衛兵のタンクさんたちだった。お出迎えしてもらえたみたい。よかった…攻撃されないかと内心ひやひやしてたもん…。
そのままゆっくりとヘアピンカーブを作り、少しずつ高度を下げる。推進力である風魔法も弱めて、安全な速度で王城へと降り立った。
「とうちゃーく…でございます。」
タンクさんと目が合い、語尾だけ敬語っぽくした私。
「姫さまっ!」
「タンク。」
「ご無事のご帰還…タンク…うぅぅ…。」
心配から解放されて、泣いちゃったタンクさん。なぜか私までもらい泣き。涙ドバーッ。
「ユイさん、ありがとうございました。」
「いえ…ガーちゃん…じゃなかった、ガーネット姫と一緒に冒険できて、とっても楽しかったです。」
「ユイ、すぐに迎賓館を案内させますので、しばらくはそちらに。お見合いが終わり次第…その、お話したいこともありますので…。」
「…?うん…じゃなくて、はい。ありがとうございます。」
慣れない敬語にてんやわんやの私。ガーネット姫は苦笑い、タンクさんは涙を必死にこらえている。そしてここまできて、やっとガーネット姫の言葉を理解できた。
―――げいひんかん…?賓客を迎える館…迎賓館!?
「ガーちゃん、大丈夫だよ!?私、宿屋さん探すの得意だし!?」
驚きのまま遠慮しようとした結果、自分でも謎な言葉が出てしまった。宿屋さん探すの得意って…。
「大丈夫ですよ。ユイは、私はもちろんこの王国にとっても、大変に重要なお客さまですから。ね。」
視線を向けられたタンクさんは、あごが外れてた。あ…ガーちゃんって呼んじゃったからですよね。…ごめんなさい。
そんなこんなで私は迎賓館に案内された。想像を絶する豪華さに気圧され、お部屋のすみっこで生活することにした私。メイドさんから不思議そうな視線を向けられたのは、ちょっぴり悲しい思い出だったりする。




