表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/156

059 唯、心配する。

―――バキッ


嫌な音がした。


「ユ、ユイ!?」


力加減を間違えまして、ドアノブが取れました。バグステータスはこういうときに厄介(やっかい)。ぴえん…。


「ご…ごめんなさい!」

「あ…いえ…老朽化していたので…はい。」


あっけにとられる女将さん。本当にごめんなさい。今日中にちゃんと直します。…っと、その前に。地図を頼りに捜索(そうさく)開始。窓のない物置のような一室で、ドアはここのひとつだけ。逃げられる心配はなさそう。


―――ここの(たな)の…かげ…。


バグステータスがあるけど、一応の警戒はしておく。基本書の説明欄にも「危険性はないが敵意がある」って書いてあったし。


「みーつけた!」


もぞっと動いた存在に気づき、反射的に声をかけた。


「うわっ!?」

「あ、待って!」


逃げ出そうと飛び出してきた存在と、暗闇のなかで大格闘。さすがに人相手なので、強引なことはしづらい。それに、さっきのドアノブの件があるので、力をセーブしまくってる。


「あ…ちょっと!どこ触って…ヘンタイ!」

「ふぎゃっ!?」


あ…ごめんなさい。力加減が…。


「ユイ、大丈夫ですか!?」

「うん。捕まえたよ!さー、ドロボウ、観念しなしゃい!」


()んだ。なぜここで。


「ひぃぃぃっ!ご、ごめんなさいーっ!」


―――ぐぎゅぎゅるるるぎゅ


「へ?」


盛大に鳴り響いたのは、おなかの音。あっけにとられる私。


「ユイ、明かりを!」


ガーネット姫が室内に明かりをくれた。ランタンに照らされた先、私が捕まえていたのは…。


「こ…子ども!?」


まだ5歳くらいの男の子だった。





「ごめんなさい…。おなかが空いて…お金もないし、もうどうしようもなくって…。」


宿屋のご夫妻に頭を下げている男の子。ホウキでもって追い払おうと息巻いていた女将さんも、まさかの事態に困り顔だ。


「うむ…。ちょっと出てくる。」

「あなた…。」


ギルドの職員さんを呼びに行ったんだと思う。ギルドは冒険者のための組織であって、厳密には国の組織じゃない。でも、実力と指揮系統が確立されている組織でもあるわけで…法執行機関としての一面も持ってる。この前の指揮者(コンダクター)の件もギルドが対応してるみたいに。


「ただいま。」


―――あれ…?


ものの数分。ギルドの出張所、そんなに近かったっけ?


「さぁ、食べなさい。」


テーブルに並んだのは、おにぎりや唐揚げ、サラダやプリンまで。


「…いいの?」

「プリンを盗んだのは悪いことだが…おなかが空いて困っているのとは別の問題だ。見ればひとりぼっちのようだし…ひとまず話を聞こう。ミチ…それで良いかい?」

「えぇ、もちろんです。」


おいしそうにおにぎりを頬張った男の子。それを柔らかい表情で見守っているご夫妻。宿屋に忍び込んだり、プリンを勝手に食べたり…たしかに悪いことだけど…。ギルドに突き出すかどうかは、この宿屋の人の胸一つ。私は…触られたけど…あれは不可抗力だったし…。


「ガーちゃん…。」


ひとつ気になることがあるとすれば、ガーネット姫がここにいること。国王家に名を連ねる存在なので、違法行為を見て見ぬふりというのは…。


「ふふふっ…ユイ、私、そこまでおかたい人間じゃありませんよ。安心してください。今は冒険者のガーネットです。」


心配事は筒抜けだったみたい。ガーネット姫はいつも通りの優しい微笑みを浮かべてた。





「それで…僕、名前は?」


おなかいっぱいになった男の子を確認し、女将さんがゆっくりと質問をはじめた。ちなみにプリンを盗んだ件については、ドアノブの修理を手伝うということで…今回だけ穏便に済ませてもらえることとなった。もちろん私が主体と修理します…壊したの、私だし…。


「カイル…です。」

「カイル君はどうしてここに?」


カイルくんの言によると、カイルくんは妹さんとふたり、王都の施設で暮らしているらしい。両親とは幼いころに生き別れたらしいんだけど、ガーネット姫曰く、おそらく亡くなられたのでしょう…とのことだった。そして年1回のカニ祭り…大きなイベントに行けば両親と再会できるのでは…そう考えた結果のひとり旅だった。


「そうだったのかい…。それで、妹さんは?」

「妹は…病気にかかっちゃって…それで、俺、妹を助けたいんだ!」

「お医者さまには()ていただいたのですか?」

「うん…でも、すごく強い魔法のせいみたいで…。お姉ちゃんたちって、冒険者なんだよね?」


急に話を振られた私たち。優しく頷いたガーネット姫とは対照的に、慌てて杖を探す私。…あ、杖…持ってないんだった。


「う、うん。そだよ。魔法使い。」


杖ないけど。


「じゃあ…どうやったら『魔王軍』に入れるか…俺に教えてほしいんだ!」

「えっ!?」


あまりにも想定外な、突然の闇落ちパターン。さすがにこれには驚いたようで、ガーネット姫も目を見開いてる。


「どうして…魔王軍なんかに?」

「だって…強いんでしょ?魔王って。だから、それくらい強くなれば…きっと、妹にかけられている魔法だって…。だから、お姉ちゃん!お願い、俺は魔王軍に入らなきゃいけないんだ!」


カイルくんなりに導き出した答えに、困ってしまった大人が4人。魔王軍のところなんか行かせるわけにはいかない。危ないし、悪の道におちてしまったら、妹さんだって悲しむ。ただ、王都からここまでひとり旅をする度胸を持った男の子。体よく断っても、またどこかで同じ思いを抱きかねない。


「うーん…。」


姿勢をかため、唸りながら考える。魔王軍…魔王…力…最強…病気…。関連ワードが頭を駆け巡るなか、ひとつの単語にピンとくるものを感じた。


「実はね…お姉ちゃんの知り合いに、すごい人がいるんだ。お手紙を書けば来てくれると思うから、会ってみる?」

「本当!?もちろん!」

「ユ、ユイ!?」


突然の請負(うけおい)に慌てふためいた様子のガーネット姫。大丈夫、大丈夫。私に任せといて。胸をポンと叩き、へたっぴなウインクを1回。紙とペンを取り出し、サラサラとお手紙を書き始めた。

お読みいただきありがとうございます!本話より、構成方法を一部変更させていただきました。試行錯誤の連続ですが、あたたかく見守っていただけますと幸いです。

評価・感想などいただけますと、パソコンの前でこっそり狂喜乱舞します(笑)

今後ともよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ