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053 唯、楽しい冒険を。

―――(まき)の運搬を手伝うガーネット姫




「ユイ…。」



もちろん信じています。大変に失礼ながら、おそらくここにいらっしゃる冒険者の方々…(たば)になっても(かな)わないでしょう。それほどにユイの強さは(ぐん)を抜いています。その強さ、信じていますが…心配です。私には何もできない…その歯がゆさが表情を暗くしてしまいます。



―――でも…決めたのです。私のちっぽけなプライドより大切なこと、この村を守ることを。



「ありがとうね。年寄りばっかりの村だから、薪を運ぶだけでも大事でね…。」


「いえ、冒険者として当然のことですから。」



暗さに()まっていた心が、少しずつ光を取り戻してきました。ユイがユイの戦場で戦っているように、私も私のできることを見つめます。



―――ふぅ…少しあつくなってきましたね。コートを脱ぎましょうか…あら?



久しぶりに顔を上げて気がつきました。さっきまでの猛吹雪が嘘のような静けさです。差し込んだ柔らかな日差し、雪も降ってはいますが、風情(ふぜい)を感じる程度。皆さんも気づかれたようで、空を見上げる方が増えてきました。ユイが何とかしてくれたようです。







除雪作業が進むタケノコの村。一生懸命にスコップを振る後ろ姿を見つけた。お仕事モードのポニーテールも似合ってる。さすがはお姫さま。私も髪の毛…伸ばそうかな。




「ガーちゃん。」


「ユイ!」




安堵(あんど)したようなガーネット姫の表情に、私も頬が緩む。出たとこ勝負の作戦だったけど、気温も雪もいつも通りに戻った。フリルさまも無事だったし、タケノコの村も元通りの賑わいを取り戻すと思う。よかった。大穴開けちゃったのだけは…ごめんなさい。ちゃんと直しておきます…。そんなこんなをとりあえず報告しよ。



「心配かけてごめんね。無事に解決できたみたい。」


「ユイはやっぱりすごいです!私の憧れ…おっちょちょいなところも含めて。」



いたずらな微笑みを浮かべたガーネット姫。反論不可能な事実(おっちょこちょい)に、声にならない声が漏れた。憧れなんて言ってもらえてうれしいけども。



「ありがとうございました。この村を助けていただいて。」


「えへへ…冒険者だからね!」



お姫さまの顔に戻ったガーネット姫に、今度は思いっきりのブイサインを。とびっきりの笑顔も添えて。



『ぴよよー!』


「わっ!?」



すごい勢いでとんできたフリルさま、それに驚いたお姫さま。



「ユイ…その、小鳥さんは…?」



私の頭上に陣取(じんど)る水色の小鳥。その正体に興味津々のガーネット姫。寒波の原因…っていうとちょっと悪いかな…風邪ひいてた影響みたいだし…。



「あ…えーっと、フリルさまです。」


「フリル…さま?…フリルさま!?」



驚いたときの表情は、異世界でも共通みたい。



『ぴよ。ぴよよー。』―――そだよー。はじめまして。


「は、はじめまして。ガーネットと申します。」



ぺこりと会釈したガーネット姫。フリルさまも羽を前に出して会釈?なのかな。



『ぴよよ?ぴよ、ぴよよぴよ。』―――ガーネットさん?あ、お姫さまかー。


「え?フリルちゃん、知ってるの?」


『ぴよ。ぴぴよ。』―――うん。前、王都に遊びに行ったときに見かけたよ。


「そうなんだ。てか、フリルちゃんも旅行とかするんだね…。」


「あの…できれば内緒にしていただけると…。」


『ぴよ?ぴよぴよ。』―――そなの?うん、わかったよ。実はね、ユイちゃんにお仕えすることにしたの。


「へ?」


『ぴよぴよ。ぴよ。』―――ユイちゃんが無自覚賢者(むじかくけんじゃ)さまだからね。ガーネットさんもよろしくね。


「はい…よろしくお願いします…。」



ガーネット姫の頭上に、クエスチョンマークが飛び回っている。たしかに説明にはなっていない気がするので、私が補足してみる。そういう私も無自覚だからあれだけど。…ん?やっぱり私、悪口言われてない?



「私のスキルが賢者さまのスキルと似ているみたいで…フリルちゃんが賢者さまに…あっ…あとからしっかり説明するね。」



コクリと頷いたガーネット姫。これ以上混乱させるのは申し訳ないし、うまく説明できる自信もない。生活が大きく変わるというわけでもないし、もう少し時間のあるときにしよう。ちなみにフリルさま、姿はかわいらしい鳥だけど、生き物…ではないらしい。魔法で形作られており、この世界を守っている特別な存在だそう。詳しく説明してもらったけど、私にはよくわからなかった。



「おーい!」



ギルドの方から声が聞こえる。右手にスコップ、左手にスコップという二刀流で登場したのは…。



「カノンさん!」


「ギルドで聞いたよー!ユイちゃん凄いね!助かったよ、ありがとう。あと…ガーネットさんも。」


「え?」



突然のご指名に驚くガーネット姫。



「村の皆さんがお礼言ってたよー。ガーネットさんが薪や資材を運んでくれたって。さすが英雄の冒険者さんは違うなーって。」


「そそそそそんな…私は、ただ…。」



謙遜(けんそん)では隠しきれなかった笑顔が広がってる。耳まで真っ赤にして、よっぽどうれしかったんだと思う。そうだよね。ありがとうを言われると、やっぱりうれしいもん。



「さぁさぁ、ユイちゃんもガーネットさんも…今日は村のみんなでお疲れ様会だって!」


『ぴよよー!』―――やったー!



私たちより喜んでいるフリルさま。えへへ、またまた楽しい冒険になりそう。

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