表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
51/156

051 唯、バグをおそれる。

翌日、村長さんとミヤコさんの案内で、ギルドの裏手へとやってきた私。雪と石垣(いしがき)で囲われた場所、入口には黒い金属製の扉があって、どこか無機質な印象を受ける。



「ここが禁足地(きんそくち)の入口です。ミヤコさん、よろしくお願いします。」


「はい。」



村長さんから(かぎ)を受け取ったミヤコさん。そのまま扉についている雪をはらい、鍵をガチャリ。仕組みはわからないけど、重たそうな扉は自動で開かれた。



「わぁー!」



扉の先には銀世界が広がっていた。どこを見ても氷。そして空間の中心には、一段と大きな氷塊が鎮座(ちんざ)していた。全てを拒絶する…そんな雰囲気すら感じてしまう。



「禁足地の中心にフリル様がおられるはずです。もっとも、今は氷に覆われておりますが…。ユイさん、よろしくお願いします。」


「ユイさん…決して無理はなさらないでくださいね。」



深くゆっくりと(うなづ)く私。フリルさまは、魔王の攻撃からこの村を守っている。つまり、魔王よりも格上の存在。私がどうこうできるレベルじゃないかもだけど、ここはバグステータスを信じるしかない。私はゆっくと、それでもしっかりとした足取りで禁足地へと向かった。







―――ギギギッ…ガチャン!



「ほわっ!」



変な声でちゃった…。背後で鳴り響いた大きな音、どうやら扉が閉まったみたい。人が立ち入ると閉まるようになっている…そう聞いてはいたけど、自然と鼓動がはやくなる。



―――伝承(でんしょう)どおりなら…あの氷塊をとかしちゃえば良いんだよね。



村長さんによると、ここの中心に(ほこら)のような建築物があって、そのなかにフリルさまが住んでいるそう。祠の周囲には強力な結界がはられていて、なんとかの加護と同じく、魔王の攻撃をもたやすくしのぐそう。というわけで、なかのことは気にせずに氷をとかせる。



―――でも…この量が水に戻ったら…。



私、おぼれちゃう。いろいろ考えてはみたけど、地面を掘る以外の結論がでてこなかった。禁足地の地面を掘る…なんかやっちゃいけないことトップ5に入りそうだけど、ごめんなさい。私、泳げないんです…。


とはいえスコップは持っていないので、魔法でドッカンするしかない。パラパラと基本書をめくり、それっぽい魔法を見つける。




「よーし…突貫崩壊―――クラッシュ・アンド・ディグ!」




オレンジ色の光に包まれた地面。間をおくこともなく、半径数メートルが消滅した。



―――…。



やっちゃったよ。数十センチの穴を掘るだけって書いてあったのに…。バグステータスのデメリットその3、力加減がわからなすぎる。そしてもうひとつ問題が。



「どうやってのぼろう…?」



地面が消滅した結果、私は数メートル下へと真っ逆さま。バグステータスのおかげで着地には成功したけど、登り方がわからない。







数分後、断崖絶壁(だんがいぜっぺき)を普通によじのぼった私。バグステータス…怖い。



「これでとかしても大丈夫だね。よし、よし。」



指差し確認オッケー。全部とけても、この大穴におさまってくれるはず。あとは…まぁ、この寒さだし、きっと凍るでしょう。すごい、めずらしく完璧な私。明日雪かな…あ、もう雪だった。


さっきの反省を踏まえ、応用編に載っている魔法のなかで、一番威力が低そうなものを選んでみた。「爆発的な火力」と「災害級の火力」だったら…きっと前者の方が…。




「火焔の宴・赤日が照らす惨禍―――シャイン・オン・ザ・リアリティ!」




あ…使った瞬間にわかりました。またやっちゃったよ、私。


私の前に現れた深紅(しんく)の複雑な幾何学(きかがく)模様。魔法陣(まほうじん)…っていうのかな。私の身長をはるかに上回る大きさで、なんなら氷塊と同じくらい。絶対やばい…。



―――キュルルルル…シュパーン…



私の奮闘もむなしく、魔法はしっかりと発動した。これまた深紅の粒子が集中し、氷塊を包み込むサイズの極太レーザー光。



―――…。



当たり前のように氷塊は消滅した。水を飛び越えて、お空へとんでいったみたい。水の行き先として堀っておいた大穴はというと…ドロドロとマグマが流れ込んでいる。どうやら地形ごと変えてしまったらしい。さすがにあぶないので、氷魔法で急速冷凍。今度はやりすぎないように…慎重に…慎重に…。



「ふぅ…。」



なんとかおさめました。いろいろとごめんなさい。



「って…祠は!?」



ふさいだ大穴から勢いよく視線を右へ。祠は…無事だった。何事もなかったかのように、雪に包まれている。あれだけの熱量をもってしても、温度すら伝わっていないみたい。しかもよく見たら氷でできている。フリルさまの加護…すごすぎる。


礼儀作法その他もろもろわからないけど、とりあえず声をかけてみる。



「あの…お休みのところすみません。冒険者のユイといいます。村長さんが心配されていますが…大丈夫でしたか?」



返事はない。ちなみに祠の大きさは、私の身長ほどしかない。なかは異空間にでもつながっているのかな。暗くてよく見えないし。



 『ぴよ…?』―――なぁに?


「へ?」



鳴き声が聞こえた。そして、なんでかわからないけど、意味がわかる。



「あ…えっと、タケノコの村の村長さんに頼まれてきました。」


 『ぴよ、ぴよよ…』―――そっか。ごめんね、かぜひいちゃって、力が制御できないの…。


「そうだったんですか。大丈夫ですか?周りの氷、とかしちゃいましたけど…。」


 『ぴぴよ…ぴよよよ!?』―――うん。…え?氷、とかしたの!?


「ごめんなさい!戻した方が良いですよね。なんとかします…。」



言ってはみたものの、どうしよう。森でやらかしたときみたいに、氷魔法でなんとかなるかな。あんなにきれいな球体にはできないけど、それっぽくはなると思う。



 『ぴよ、ぴよよ』―――ううん、そのままでいいよ。かぜひいたら、どんどん寒く…それで、周りも凍っちゃったんだ。おねえちゃんが助けてくれたの?


「えっと…はい。とかしただけですけど…。」


 『ぴよっ、ぴよよよ、ぴよ』―――ぼくの氷とかすなんて、おねえちゃんすごいよ!そういえばすっかりかぜも治ってるし。おねえちゃんって、勇者さまー?


「いえ、私はただの冒険者で…ちょっとステータスが変なだけでして…。」


 『ぴよよ』―――見せてー。


「どうぞ。って、見えますか?」



ステータス画面を表示してはみたものの、これって私以外にも見えるのかな。そのまえに…。



―――か、かわいいっ!かわいすぎる…。



祠から出てきたフリルさま。淡い水色のからだ、透き通るように青い目。もふもふとした羽毛にぴょんとはねたアホ毛?が一本。お家で飼っていたインコの「ぴーすけ」くらいのサイズ感。パタパタと一生懸命に羽ばたいている。支えたくなっちゃうくらいに愛らしい。自然と姿勢を低くする私。



 『ぴよ』―――えーっと…。



どうやら見えているみたい。ガーネット姫には見えなかったから、フリルさまの能力なのかな。



 『ぴよ!?ぴぴよ、ぴぴよ』―――これは!?ゆいさん、ぼく、あなたにお仕えします。


「…へ?」



突然の申し出に、間の抜けた声が響いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ