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050 唯、バグを信じてみる。

村長さんのお家に案内された私たち。囲炉裏(いろり)を中心とした純和風なつくり、黒光りしている柱が荘厳な雰囲気を(かも)し出していた。要するに…自然と無言になっちゃうような、とっても緊張する雰囲気。右にならえ状態で、ガーネット姫の所作を必死に真似する私。またまた借りてきた猫状態になりそう。



「ようこそいらっしゃいました、どうぞおかけください。」



立派すぎる白いひげをたくわえたおじいちゃん…じゃなかった、村長さんに促される。ぺこっと頭を下げて、用意された座布団に…座って良いのかな?中腰のまま逡巡(しゅんじゅん)する私。謎の空白をつくるわけにもいかないし、あきらめて勢いで座ることにした。



「まずはカノンさん、いつもながら買い出しの件、ありがとうございました。おかげさまで肩もしばらくは大丈夫そうです。」



はにかみ顔で会釈したカノンさん。村長さんの右肩には湿布かな?薄茶色の布みたいなのが貼られていた。



「そしてユイさん、ガーネットさん。(まき)の運搬、ありがとうございました。これでしばらくはこの村もやっていけそうです。」



精いっぱいのおじぎで返す私。ガーネット姫は気品あふれる会釈で返していた。かっこいい…私もがんばってみよ。



「お礼もほどほどで申し訳ないのですが…村の英雄である皆さまに、お願いがございまして。我が家が代々お仕えしております、氷の姫鳥プリンチペッサ・フリル様をご存知でしょうか?」



たしか禁足地(きんそくち)に住んでいて、なんとかの三鳥に数えられている…とか。



鶯遷(おうせん)の三鳥で、永久氷結の加護(かご)をこの村に与えている存在と聞いています。その加護をもって、邪悪なる攻撃から守られているとか。」



そうだ、「おうせん」だ。どんな字書くかはわからないけど、さすがガーネット姫。「おう」だから…王?いや、黄?うーん…。



「そうなのです。フリル様の加護をもって、この村は魔王の侵攻から守られてきました。歴史にのこるような大侵攻をも乗り越え、安全を享受(きょうじゅ)してきました。そしてもうひとつ、フリル様の加護によりもたらされているものが、この雪です。」


「雪…ですか。」


「えぇ。この村が景勝の地として名高いのは、この国で唯一、雪景色をみることができるためです。温泉もありますし。」



ところが今、その雪に苦しめられてしまっている。雪国育ちの私から見ても、異常クラスの雪。そして寒さ。濡れた物なんか持ち出そうものなら、一瞬で凍っちゃうと思う。



「そんななかでの、今回の異常な寒波(かんぱ)です。私は幾度(いくど)となくフリル様のもとへ向かいましたが、その地は巨大な氷塊に閉ざされており、立ち入ることすらできませんでした。そこで英雄の皆さまにお願いしたいのです。フリル様を、この村をお救いおただけないでしょうか?」



難しいお話になってしまった。雪を降らせる、気候を変えちゃうレベルの存在に相対せるかと言われると…怪しい。それこそ人のレベル超えちゃってる気がする。



―――でも…。



できるだけのこと、やってみたい。そこに困ってる人がいるんだもん。せっかくもらったバグステータス。ここで使わずして。



「わかりました!どこまでできるかわかりませんけど…やれるだけのこと、やってみます。」


「もちろん私も…と言いたいところなのですが、きっと…私の手には負えません…。足手まといになるだけでしょう…。ユイ、都合の良いお願いですが…お願いします。」


「ガーちゃん…。」



両手を強く握りしめ、唇を噛むガーネット姫。できるかぎりのことをしたい、そう思っていると思う。その強い思いを、現実的な理性によって押しとどめている。たった3か月だけど、一緒に冒険してるんだもん。ガーネット姫の(つら)い気持ち、伝わってる。



「私も…この村でみんなを守るよ。除雪(じょせつ)とか薪の運搬とか…やらなきゃいけないこと、たくさんだし。…悔しいけど…これが私の実力…。でも、ユイちゃん、本当に大丈夫?」


「カノンさん、大丈夫です!無理そうなら…一目散に逃げかえってきますし…。そういうことでよかったですか?村長さん。」



モンスターの大侵攻にもひるまず、果敢(かかん)に町を守ったガーネット姫。身のすくむような巨大クマに相対し、懸命に立ち向かったカノンさん。勇敢で聡明(そうめい)なふたりをして、挑むことすらできないと思わせる相手…。とっても怖いけど、きっとバグステータスじゃないとどうにもできない。



「ありがとうございます。もちろん、ユイさんの安全が第一です。我々もできる限りの支援をいたします。どのようなものであっても、必ず用意します。どうか、よろしくお願いします。」







村長さんに用意していただいたお部屋。窓際に立ち、雪山を見つめる私。



―――うーん…どうするかなぁ…。



いろいろと考えてはみたものの、作戦なんて「行き当たりばったり」ぐらいしかない私。指揮者(コンダクター)を相手したときだって、とりあえず力押しで…くらいのことしか考えてなかった。でも、今回はそういうわけにもいかなそう。


村長さんによると、今回のような異常気象、数百年前にも一度あったらしい。フリルさまの力が暴走し、制御できなくなってしまうのが原因だったそう。村の伝承としてのこっており、その時は当時の勇者さまが解決に導いた。伝承が正しければ、氷塊をとかすことが唯一の解決策らしい。



「あの…ユイ。」


「ガーちゃん、どしたの?」


「…。」


「…大丈夫だよ。ガーちゃんの気持ち、わかってるから。」


「ユイ…。」



友だちだもん。どっちかっていうと、私の「お姉ちゃん」…かな?えへへ。

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