049 唯、猫になる。
薪の話はすぐに広まったみたいで、ギルドホールは村の方々で超満員状態。なぜか舞台まで用意されてしまって、壇上にて借りてきた猫状態の私。…にゃん。
「いやはや、助かりましたよ。しかし…これほどの薪をおひとりで運搬されたとは…驚きです。」
「いえ…冒険者としての仕事をしただけでして…その…報酬だっていただいてますし…。」
恐縮しっぱなしの私。褒められるのはうれしいけど、これはきっとバグステータスのおかげであって、私の力とかじゃないんです…。
「まぁ…ご謙遜を。」
「この村には英雄ありですな。まさに3人目の勇者様。」
「そうそう、カノンさんといい、今回のユイさんといい…冒険者の方々って本当に素晴らしい。」
「フリル様だけでなく英雄にも守られている村なんて…この村に住んでいてよかった!」
―――あの…皆さん…それくらいで勘弁してください…。顔が熱すぎてとけちゃいます…。
「そうなんです!ユイさんはもちろんですが、ガーネットさんもすごいんです!底なしの池にすみついていたモンスターのまやかし、それをいとも簡単に看破したのですから!」
―――あわわ…コウゾウさんまで…。
さっきまで「妹」の発表会を見守るみたいな微笑みをうかべてたのに、突然にして表舞台にひっぱりだされちゃったガーネット姫。
「なんと…!コウゾウを助け出したのもユイさんとガーネットさんだったとは…。ありがたや…ありがたや…。」
「ガーネットさんも…ん?ガーネットさんというお名前…どこかで?」
「うむ。そう言われてみると…お見かけしたことがあるような…。」
まずい。バレちゃう。借りてきた猫ふたりが顔を下に向ける。恥ずかしいのが大きいけど。
「おっ!こちらも英雄のご帰還だ!」
「カノンお姉ちゃんだ!おかえりなさいっ!」
どうやら話題がちょっとそれたみたい。カノンお姉ちゃん、ありがとう。…あれ?どこかで…。
「ただいまー。コウスケ、良い子にしてたー?」
「うん!この前のテスト、満点だったんだよ!」
「おーっ、すごいな!そんなすごい子には、はい、ドーナツ。」
「わぁー!ありがと!」
「カノンさん、いつもありがとうね。それでね、あちらの冒険者さんが薪を運んでくださったの!」
「いえいえ。あ、私もご挨拶を…ありがとうございました。しかし驚きましたよ…おひとりで運ばれ…?あれ?ユイ…ちゃん?」
「…カノンさん!?」
やっぱり異世界でも…世の中はせまいようで。
■
まさかの再会だった。少しの間だったけど、ヒマワリの町で一緒に冒険をしたカノンさん。宿屋を紹介してもらったり、効率の良い稼ぎ方…じゃなかった、効率の良い採取方法とかも教えてもらった。その節はとってもお世話になりました。
「やっぱりユイちゃんだったのかぁ。薪を17万本近く運べるなんて…絶対普通の人じゃないと思ってたけど…。私の知る普通じゃない人って、ユイちゃんくらいだし。やっぱり普通じゃない人は違うね!」
思いっきり普通じゃない認定されちゃった私。もう諦めます。自分でも普通じゃない自覚あります。はい。
「あれ…ユイちゃんがユイちゃんてことは…ガーネットさんは…ガーネットひ」
全力で唇に人差し指を当てるガーネット姫と私。…できれば内緒にしてほしいんです。
「「「ひ?」」」
会場中の視線と疑問が集まってしまう。訪れる静寂。息を止める私。
「ガーネット…ひ…ひ…さしぶりだね!」
なんとか搾り出してくれたカノンさん。ふぅ…。
「ご…ご無沙汰しております。えっと…カノン…さん。」
おそらくだけどガーネット姫、カノンさんのことは知らない。ガーネット姫が冒険者として本格始動する前に、カノンさんはタケノコの村へと向かったはず。そういえば薪の話題があったような…。
「おや、カノンさんとお知り合いでしたか。やはり英雄どうし、特別な人脈をお持ちなのですな!」
「あ…あはは。そ、そうなんです。ユイちゃんとはちょっとだけ一緒に冒険したことがあって。ガーネットさんとは…同じ地を歩いた仲間で…。」
カノンさんが掘りかけた墓穴を突貫作業で誤魔化した。冷静に考えてみると、同じ地を歩いた人なんて山ほどいる。…ものはいいよう。
「なんと…しかし、英雄がこの村に集結とは…これはやはり、あの件もお願いしてみては…。」
「そうだな。こんな機会滅多におとずれないだろうし…。」
「あの…皆さんにお話し…といいますか…お願いしたいことがありまして…。」
それは突然の依頼だった。




