046 唯、距離をはかりかねる。
―――ふむむ…あとちょっと…。
何度目かわからない気持ちを、心のなかで呟く。
数メートル先すら確認できないような吹雪。冒険者の強靭すぎる体力でもって、凍えることはないみたい。でも、雰囲気に押されて口数が減ってしまう。道すがら村の様子を伺おうと思っていた予定も変更。遭難したら一大事なので、コウゾウさんに全幅の信頼を寄せて、先導をお願いしている。
前を歩くガーネット姫の帽子、雪が積もってコックさんの帽子みたいになっている。雪国田舎育ちの私でも、経験したことのないレベルの雪…。異世界、怖い。とはいえさすがは異世界。服が濡れようが帽子が濡れようが、すぐに乾いてキレイな状態を維持。改めて魔法のすごさを感じる今日このごろ。
『ガーネットさん、ユイさん。あそこに見えているのがタケノコの村です。』
コウゾウさんの声に顔を上げる私。ガーネット姫もコウゾウさんが指差した先を見ているようだけど…。
「あの…どちらに…?」
見えない。雪が入ってきそうで目が開けられず、余計に見づらいというのもあるけど…。
『ほら、あそこです。黄色の明かりが見えませんか?』
「えーっと…あっ、わかりました!黄色い点々が…3つほど見えるところですね。ユイ、もう少しですよ!」
「そ、そなの?」
ちっともわかりません。
『あと数分です。もう少しがんばってくださいね。』
再び歩き出す。ゴールが見えない数分は、ずいぶんと長かった…。降り積もる雪がもとの世界とリンクして、ちょっぴりメランコリー。
『到着です。ようこそ、タケノコの村へ!』
■
腰まであろうかという雪を抜けた先、木製の柵が囲う村がそこに。
ログハウス風の家々がたちならび、煙突からのぼる煙が雪の空白地帯をつくりだしている。幻想的な雰囲気に心奪われる私。ヒマワリの町に比べると小規模だけど、ここからわかる範囲だけでもギルド、お料理屋さん、お洋服屋さんが確認できる。利便性を重視したまちづくり…そんな感じ。
『私は一旦、家へ向かいます。薪はギルドに報告していただければ、村の奥にある倉庫を案内してもらえると思いますので。手続きが終わりましたら、ぜひ我が家へお越しください。』
「すみません、ありがとうございます。」
大通りをはずれて村の西側へと向かったコウゾウさん。ガーネット姫と私は大通りを直進。ギルドの紋章が掲げられている大きな建物…ギルド・タケノコの村出張所へと向かった。
―――ヒマワリの町と思うと…。
失礼ながら、冒険者さんでにぎわっている…というわけではなかった。ギルドホールは閑散としていて、受付には「ご用の方はこちらを押してください」と手書きされた紙が。押してはみたけど、うんともすんとも。仕方ないので声をかけてみる。
「あの、すみませーん。」
「はーい。」
のれんの奥から届く声。
「はい。あ、すみません…その呼び出し鈴、壊れてるんです…。何か御用ですか?」
そうなんですか。バグステータスの力で壊したかと思いました…。それはさておき、なんだかとっても疲れてるご様子のお姉さん。この大雪でいろいろと大変なのかな…。
「薪を運んできたのですが、倉庫や手続きのご案内をいただけないかと。」
「そうですか…はい。…え?薪…?今、薪とおっしゃいましたか!?」
テンションが急旋回した受付のお姉さん。ガーネット姫もびっくり。ふたりして固まっちゃった。先に我に返ったのはガーネット姫。横で固まっている私にかわって、お姉さんの問いに答えを。
「は、はい。下の倉庫から…運んできました。」
「ありがとうございます、ありがとうございます!寒かったですよね!あ、あっついコーヒー持ってきますよ!どうぞどうぞ、奥の部屋で手続き、痛っ!?」
お姉さんのテンション、ストップ高。よかった、喜んでもらえているようで何より。そして、あの…やっぱりドアの押す引くは確認すべきだと思うんです。クロックさんもそうでしたけど…。




