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045 唯、重さを考える。

「わぁー、雪だー!」



つめたくてふわっとした独特の感触、久しぶりのそれにテンションが急上昇する。道端にバタバタと近づき、粉雪をすくう。その温度になつかしさをおぼえる私。都会の大学に進んだ関係で、しばらく(えん)がなかった。仕事がら家に缶詰だし。



とりあえず軽く丸めてガーネット姫のおなかに…それっ!



「きゃっ!?やりましたねー、それっ!」


「ふぎゃっ!それーっ!」



懐かしい。近所の公園でこんなことしたっけ。まだ小学生のときだったかな。



『ユイさん、雪は初めてですかな?』


「あ…いえ…えっと、昔ちょっとだけ。」



あ…ごめんなさい。コウゾウさんがいらっしゃるの、すっかり忘れてました。


別の世界で…なんて言うわけにもいかず、苦笑いを浮かべて適当な返事をする。除雪作業にかりだされた幼少期、そう思うとちょっとではなかった。雪国の(さが)というやつかな。こっちはこんなに積もった…という謎のマウント精神が顔を出そうとしている。おさえておさえて。



「でも…たしかに多いですね。」



コートに着いた雪を払いつつ、あたりを見渡してみる。街道沿いにしか見ていなかったけど、木の上には大福みたいな雪がつもっていた。



「うん。これは…(まき)を運ぶにしても大変だね…。」



もとの世界なら除雪車とかに助けられていたけど、この世界には存在しない。もちろん車もない。今通っているこの道も…一応街道ではあるけど、人の足跡(あしあと)を見つけては進むような感じ。私はバグステータスをもって蹴り飛ばしながら進めるけど、普通に歩くだけでも大変だと思う。



―――あれ…?でも、収納して運べばそれで…。



解決しそうな気が。私もお洋服とか食べる物とか、あとおやつとか…たくさんしまってる。薪は収納できないなんてことはないだろうし。いや、それでも大変だとは思うけど。



『右手にある建物のなかで、王都から届いた薪を貯蔵しています。冒険者の方々に依頼して、ここから山の上の村まで運んでいただいているのですが…。』


「この坂は…かなり急ですし…この雪では…。」


『そうなのです。雪が増すほど薪が必要なのですが、運搬の負担が増えるという…。』


「あの…ガーちゃん。」


「どうかしましたか?」



変な質問をしてしまって、変な疑われかたをしても困るので、小声でガーネット姫に聞いてみる。



「収納して運んだら…1回で済んだりしないの?」


「もちろん収納して運ぶのですが、収納にも限界がありまして。特に薪のような非魔法物の収納量は少ないんです。あ…非魔法物というのは、魔法的な効果を持たないものを言います。薬草などは回復魔法の効果がありますので、魔法物という扱いになりますね。」


「そうなんだ…じゃあ、いっぱい運ぶの無理なんだね。」


「ええ。もちろん背負って運ぶよりは楽ですが…。」



知らなかった。収納にそんな制限があったとは。食べ物あんなに収納してるけど、ちょっと整理した方が良いかも。仕組みは知らないけど、腐ったりしないし、便利なんだよね…。おなか空いたらパッと取り出せるし…そりゃあ…おなかもこうなりますよ。あはは…。ぷにぷに。



『すみません、少しでも薪を持って帰りたいのですが…よろしいですか?』


「もちろんです。私たちも持ちますよ。」



雪をかきわけて道なき道を進む。()れても(よご)れても、すぐにキレイになるお洋服に(くつ)。本当に便利。







「わぁー、すごい量ですね。」



サッカーコートくらいの大きさかな、かなり奥行のある空間だった。そこに整然と積まれている大量の薪。圧迫感がうまれるほどの状況だった。



『魔法で量が計測されていますので、量に応じて村のギルドで報酬を受け取れます。依頼の受諾手続きは必要ありませんので。』


「わかりました。ユイ、とりあえずこのあたりから…。」


「そだね。よいしょっと。」



ぽん、ぽん、ぽん…とリズミカルに魔法収納の音が鳴る。ものに触れて「収納したい」と思うだけで良いので、簡単。よし、どんどん入れてこ。



―――本当、便利だよね。やっぱり、魔法ってすごいんだなぁ。



収納を初めて数分、目の前に積まれていた山が小さくなった。300本くらいかな?ある程度の薪を収納できた。これが何日分に当たるのかはわからないけど、少しでも足しになれば幸い。



「ふぅ…もう入らなそうですね…残念です。あとは背負いましょう。」


『すみません、ありがとうございます。助かります。』


「大丈夫ですよ。収納しているだけですし…。」



ポポン…という独特の音が鳴っている。どうやらこの音が限界を知らせてくれるみたい。ガーネット姫はそのまま10本ほど薪を束ね、リュックサックのように背負った。



―――あれ…私、まだ入るみたいだね。



ぽん、ぽん、ぽんと、あいかわらずリズミカルに響いている。



・・・数分後。


「あれ…まだ入るみたい。コウゾウさん、ガーちゃん、お待たせしてすみません。」


『いえいえ、助かりますよ。何なら全部収納してくださっても大丈夫ですよ!わはは!』


「そうですよ。たくさんあるに越したことはありませんし、座ってまっていますよ。」



・・・30分後。


「あの…まだ入る…みたいで…。」


『そ、そうですか。いや、た…助かります。』


「ずいぶん…建物のなか、すっきりしてきましたね…。」



・・・1時間後。


「どうしましょう…?そろそろ、やめた方が?」


『いや…。』


「えっと…。」



・・・2時間後。


「…。」


『…。』


「…。」



響き続けるリズミカルな音。どうなってるの…。







「ずいぶん広くなりましたね…あはは…。」



笑って誤魔化す私。建物のなかはすっきりした。薪は…残ってないです。はい。あ、申し訳なくなって1本だけ残しました…。



『あの…本当に人間ですか…?』



失礼なことを聞かれてしまう。もちろんです。人間です。サッカーコートサイズに積まれていた薪、全部収納しましたけど。何トンになるんだろう。もう想像すらつかないよ。



「…。」



ガーネット姫、せめて何か言ってください。まさか、ガーネット姫にまで…人間であること疑われてる?



「と…とりあえず村に向かいましょう。ユイ、熱とか出てませんか?大丈夫ですか?」



そう言われると気になっちゃう。前髪を避け、おでこに右手をぺたり。



「うん。大丈夫。平熱…だね。コウゾウさん、お待たせしました。行きましょう。」


『え、えぇ。そうですね。あの…えっと…はい。』



苦笑いを建物に残し、再びコートを羽織(はお)る。タケノコの村目指し、雪道をつきすすむ。

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