041 唯、ちょっと旅へ。
「よし…行きましょうか!」
靴ひもをかたく結びなおし、つま先でコンコンと地面を2回。長い髪をポニーテールにまとめ、準備万端といった様子のガーネット姫。本当は一緒に出発の挨拶をするつもりだったけど、「泣いちゃうと思うので、お手紙で失礼します」という事情をもって、私がお手紙の配達屋さんとなった。
「ガーネットさん、ユイさん!」
声をかけられ、振り返るガーネット姫と私。そこには。
「み、皆さん!?」
町の皆さんが勢ぞろい。あれ、クロックさんたちも。訓練場に飛び込んでいったはずなのに。
「もー、見送りくらいさせてくださいよ。お手紙でもうれしいですけど…やっぱりこういうのも良いかなぁって…クロックさんが。」
「何っ!?いや、私は…その、こういう機会は滅多にないからして…。」
「なんだクロック。泣いてるのか?」
「な、泣いてはいない。ちょっと寂し…いや、訓練のし過ぎで目からも汗が出ているだけだ!
」
「目から汗は出ないでしょ。」
「冷静にツッコむのはかわいそうだよ、お姉ちゃん。」
たった3か月、されど3か月。本当にいろいろなことがあった。ガーネット姫は正真正銘、町のアイドル。私は町一番の末っ子的な扱いをしてもらってきた。指揮者を捕えてきた頃はともかく、だんだんと私のおっちょこちょいが露呈した結果。たくさん助けてもらったし、ありがとうございますの言葉しか出てこない。
「ふぉふぉふぉっ。旅立つ2人に町からの贈り物を。大侵攻の件はもちろん、日々多大なるご尽力をいただきました。『コート』と『導きの石』です。使い方はこちらに。」
もふもふが付いたあったかそうなコートと、キラキラと青光りする不思議な石。
「ありがとうございます。町長さん、皆さん。なんだか…私まで目から汗が…。」
「うぅ…ふぇーん…ありがどうございばず…。」
嬉しすぎて大泣きの私。
「ユ、ユイ…そんなに泣かれると…私まで…。」
私たちが歩むのは旅立の街道。とっても素敵な名前の道を、とっても素敵な皆さんに見送られながら。
■
「ひぐっ…ぐすっ…ふぅ…。」
お姉ちゃん…じゃなかった、ガーネット姫によしよしされながら歩くこと数分、やっと涙が止まってきた。ひとり暮らしを始めるときだって、こんなに泣かなかったのに。
「…えへへ、もう大丈夫…ぐすっ、ケホッ…うん。」
「ユイ…。あ、そういえば…どうしてコートだったんでしょうか…?」
たしかに今は夏真っ盛り。太陽ギラギラの夏模様。私も真っ白な半袖シャツにプリーツスカート、夏の装い。でも、理由らしきものを私は知っている。
「タケノコの村がすっごく寒いみたい。薪も不足してて、大変なんだって。」
「そうだったのですか。そういえば私が泊まったときも…えぇ、たしかに寒かったです。あの村は年中雪が降ることで有名ですが…薪が不足するほどとは…。」
クロックさんの話によると、ここ数か月の寒さは異常なレベルだそう。薪は王都からの緊急支援がなされているそうだけど、山間の村という立地が影響し、支援が行き届いていないとのこと。たしかに山の上に薪を届けるって、かなりの重労働だと思う。
―――そういえばカノンさんも薪が…って言ってたよね。
…とすると、冒険者さんが薪の運搬を請け負っているのかも。モンスターの討伐、アイテムの採取から運搬、護衛任務まで、冒険者の仕事は多岐におよんでいる。運搬中にモンスターとバッタリ…なんてこともあり得るから、冒険者が適任という事案。
「少しの間お世話になるつもりですし…ちょっとでもお手伝いしていきましょう!」
「うん。そだね。薪なら…って、運んだことなかった…。」
もとの世界、都会生活のストーリーに「薪」は登場しなかった。もちろん存在は知っているし、イメージもつくけど…実物を見たことはなかったりする。そういえば、雪もあんまり見たことがない。まさかの異世界で雪初体験…雪だるま、いっぱい作ろ。
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