039 唯、やっぱり好きなことを。
ガーネット姫と私は、今、登山をしている。
お疲れ様会から数時間、平常運転で薬草採取に励んでいたんだけど、やっぱり「モンスターの彫刻」とやらが気になってしまった。このままだと…夜しか眠れなさそうだったので、ふたりしてお屋敷跡地にむかうことにしたのだ。
「ふぇー、結構遠いんだね…。」
ふたりきりの時はこんな感じのガーネット姫。私の「お姫さまイメージ」は、物語のなかから得た勝手なものだったと悟る。でも、そんな素を見せあえる関係になって、結構うれしい。ハラグロモードの存在を明かすのも、時間の問題かも。…ドン引きされないか心配だけど…。
「昨日はオオカミさんに乗せてもらったんだけど…そういうわけにもいかないし…。」
「ユイって、動物とすぐ仲良くなれるよねー。私、イヌさんにも吠えられるし、ネコさんにも噛みつかれるし…。」
ところどころで品が漏れるガーネット姫。私もオオカミ「さん」って言ってるから、きっと品がある。よっしゃ。
「な、仲良くというか…。」
怯えられていただけな気がする。バグステータスのデメリット堂々の第1位、こっちにその気がなくても、相手に恐怖を抱かれる。ちなみに第2位は、力加減がわからなくて物を壊しちゃうこと。グラス割ったの反省してます、ごめんなさい。
「あ、見えてきた!」
ガーネット姫が駆け出す。
「ふぎゃっ!」
好きな人には聞かれたくない声ナンバーワンを発し、見事なまでに運動不足を露呈する私。足ぃぃ、つったぁ。痛ぅいぃぃ。
「ユイ!?大丈夫…?」
直ぐに駆けつけてくれるガーネット姫。優しいお姉ちゃんです、はい。血はつながってないけど。それはさておき…いたたたたたたたたたた。
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「うーん…。」
お屋敷跡地に到着し、周囲を見渡す。大量のモンスターの彫刻は…なかった。殺風景。壊しちゃった壁が目立っているくらいで、特に昨日と変わった様子もない。
「きっと見間違いとかだったんですね。」
「そだね。さすがに半日も続くわけないし…。」
安心したけど、なんだか不安という不思議な感情に覆われる。バグステータスをもってすればできるかも…と淡い期待を持っていたのが原因かもしれない。ちょっと伸びかけていたであろう鼻先をへし折って、いつもの調子に戻ろう。平穏無事に暮らせればそれで。
「帰ろっか。」
「うん。」
朽ち果てたお屋敷以外、特に見るところもない。昨日の件をもって、モンスターも寄り付かない場所になってしまっている。今後来ることもなさそう。踵を返し、氷魔法を展開する私。大丈夫、ゆっくり降りるから、ね。だからそんな顔しないで、ガーネット姫。
ゆっくりと出発進行するユイ特製ジェットコースター。出発地点の草むらが若干焦げていたことに、この時は気づけなかった。




