038 唯、バグがないことを願う。
想像と記憶が一致するなか、冷や汗ダラダラの私。オレンジジュースをがぶ飲みして、心を落ち着かせる。…お屋敷跡地の周りにいたモンスター、凍らせたの…私だ。即席ジェットコースターを作って帰ることに夢中で、周りが見えていなかった。
「ガ、ガーネット…その彫刻って…私のせいかも…。」
もちろん彫刻じゃないんだけど。
「え?ユイの…ですか?」
「実は…かくかくしかじか…で…。」
昨日の顛末を話した。ちなみに、私と指揮者とのやりとりは割愛。隠すわけじゃないけど、ハラグロモードの私を出すのは…その、ちょっとまだ…難しい。
「そうだったんですか…って…あいかわらずユイはユイですね…。」
「あ、あははは…。」
たしかに「お屋敷をモンスターが取り囲んでいたので、全部凍らせました」なんて話、小説のなかだけだと思っていた。まさか私が実践することになるとは。しかもすっごい大魔法を使ってチートしました…というわけじゃなくて、基本書にあたりまえのように載っていた魔法を使っただけ。…あぁ…絶対、ステータスのせいだ…。
「でも、大丈夫だと思いますよ。魔法には効果時間がありますし、ユイが町に戻ってから半日ほど経ってからのお話みたいですし。」
「そだよね。うん。」
さすがにあんな魔法が半日も続くわけがない。そんなのチートになっちゃうもん。…ステータスは…まぁ、うん。
「さて、お集まりの皆さん。モンスターの大侵攻から町を守った勇気ある皆さんに、私パンプキンとギルドより、贈り物がございます。」
仮設の壇上にはパンプキンさん。とっておきの発表が始まるみたい。わくわく。
「皆さんに『スター』を1つ、贈呈いたします。」
一瞬の静寂が訪れたあと、どよめきが起きた。
「ス、スターを!?」
「すげー!俺、初めてもらう!」
「よかった…苦節5年、とうとう私もDランク冒険者に…ふぇーん…。」
とっておきの発表に歓喜する冒険者さん、泣き出しちゃった冒険者さん。スターへの思いは十人十色。それでも、冒険者が憧れるもの。
スターは冒険者のランクを決める要素。エリアボスの討伐とか、すっごい活躍をした冒険者に贈られるもので、冒険者の強さや信頼度の基準になっていたりする。町の人が依頼を出すときに、Dランク以上の冒険者にお願いしたい…みたいな感じで。もちろんランクが強さの絶対指標というわけじゃないけど、依頼するならランクの高い冒険者にお願いしたい気持ちも人情というもので。
ちなみに私、これでスターの数が4つになる。ジャイアントさんにもらった1つ、ガーネット姫から贈られた1つ、エリアボスだったオオイノシシの討伐で1つ。そして今回いただける予定の1つ、計4つ。あと1つ集めると、Cランク冒険者の仲間入り。冒険者になってまだ1か月くらいだけど、バグステータスのおかげで遠くまで来てしまった。
「これで私もBランク復帰です。『一番弟子』として、ユイ様に少しでも近づけるよう、精進を続けます。」
なぜかDランクの私にそう宣言するジャイアントさん。武者修行を経た結果、なぜか一人称まで変わってしまったらしい。もう、師匠呼びは諦めます。
「ユイ殿の『一番弟子』は、このクロックです。ユイ殿の魔法を肌で感じたのですから。」
あわわ…また始まっちゃった。ジャイアントさんとクロックさんの、一番弟子を巡る静かなバチバチ。あと…その、「肌で」って言うのは…ちょっと…うん。違った意味に…いや、なんでもないです。
「ユイも大変ですね…。」
「…うん。」




