表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/156

030 唯、支えられる。

突然の丸太早切り大会優勝から1週間。遅れて(おそ)ってきた筋肉痛もどこかへ消えつつある今日このごろ。




「さてとぉ、薬草をー探すぅ―。」




変な節回(ふしま)しと鼻唄(はなうた)混じりで橋を進む。橋といっても、ぬかるみを避けるために設置されただけの木の板。平均台みたいな感じ。バランスをとるために両手を広げているだけだけど、そんな少しのことから体育の時間を思いだす。跳び箱でキャッキャ言ってた時代が懐かしい。




―――年…とったよね。




まだ若いと自分に言い聞かせてはいるけど、筋肉痛が遅れてやってきたという事実に、なにか恐怖を感じている。テンションに合わせるように変化する鼻唄の調子。もともと得意じゃないけど、音程(おんてい)が次元を飛び越えてしまった。




「…。」




前を歩くガーネット姫の肩が揺れている。




「…ガーネット、もしかして笑ってる?」




全く怒ってないけど、ちょっと声色(こわいろ)を変えて。こんなノリができるほどには距離が縮まった。私の大切な友だちは、この国のお姫さま。




「ふふっ、ユイはいつも明るいなぁと思って。」



「おいしいものいっぱい食べてるからね!」




鼻高々(はなたかだか)に胸を張って、えっへんのポーズ。




「っととと…うわっ!?」




見事にバランスを(くず)し、横の水たまりにダイブ。せっかくのワンピースが台無し…とならないのがこの世界。服が一瞬でキレイになる。おっちょこちょいで洗濯(せんたく)が苦手な私にとって、チートみたいなシステム。バグステータスによって、痛みもない。やっぱり異世界最高。




「大丈夫?」




ガーネット姫が手を差し伸べてくれる。




「えへへ…ちょっと油断した…。」




苦笑いを浮かべつつ、立ち上がる。支えてくれるガーネット姫、支えられる私。同い年のはずなんだけど、私が妹ポジションを突っ走っている。




「あ、薬草みつけた!」




怪我(けが)功名(こうみょう)。起き上がった視線の先、同じ高さに独特の光が。今回の目的、薬草を見つけた。テンションに身を任せて一歩を踏み出す私。




「あぶな…」




ガーネット姫の警告もむなしく、私は逆サイドの水たまりにダイブした。さすがの私もショックを受ける。後ろを見ようとまでは言わないけど、せめて前ぐらいは確認すべきだと思う。




「…。」




ガーネット姫が静かに手を差し伸べてくれた。ガーネット姫の優しさをもってしても、かける言葉が見つからなかったらしい。なんだか申し訳ない。



そんなドタバタを続けること1時間。無事に薬草採取とメタル・ラビットの討伐が終わった。最近では複数のクエストを受けても大丈夫になってきた。私だけなら絶対に忘れるけど、ガーネット姫が一緒だから安心。えっへん。











ギルドまで後少しにせまったところ、入口付近にギルドマスターの姿が見えた。遠くからでもわかるほどに忙しそう。職員の方がひっきりなしに案件を持ってきているようだ。書類がギルドマスターの腕に積み重なっていく。



モンスター異常発生の影響で、ここ数日ギルドはてんやわんや。ギルド本部から派遣された調査班の調査によると、何らかの襲撃が起きる可能性を否定できないとのことだった。丸太早切り大会の雰囲気は一変し、防衛(ぼうえい)設備の再確認や食料の備蓄(びちく)など、緊急時への備えが着々と進められているここ数日。




「あぁ、ユイ殿にガーネット姫。無事の帰還、何よりです。外の様子はどうでしたか?」




いつもなら弟子にしてくださいの集中攻撃を受けるんだけど、ここ数日は違う。それほどの異常事態らしい。




「モンスターの数は増えていると思います。あと、モンスターがまとまって行動しているところが気になります。」




ガーネット姫の的確な受け答えに、ただ(うなづ)く私。




「なるほど…やはり何か起きそうな雰囲気ですね。モンスターが集団的な行動をするなど…滅多にあることではありません。」




基本書にも同じことが書いてあった。統率(とうそつ)のとれた行動ができるのは、高レベルモンスターに限られているそう。ここは「はじまりの町」なので、周囲にいるのは低レベルモンスターのみのはず。




―――だとすると…操ったりしてるモンスターがいるのかな?




異世界ファンタジー的な思考をすると、そんな答えにたどり着く。もちろん理論的根拠があるわけではないので、胸の内にとどめてはいる。




「あれから詳細な分析が行われまして、指揮者(コンダクター)が背後にいる可能性が指摘されています。私もその可能性が高いと思いますが、ユイ殿はどう思われますか?」




話を振られたけど、わからない言葉が一つ。助けてガーネット姫、みたいな目線を送る。最近頼りっぱなし。ごめんなさい。




指揮者(コンダクター)は、災厄(さいやく)の魔王に従っているモンスターのなかでも、かなり上位に位置するといわれています。特殊なアイテムでモンスターを操ることで集団を形成し、町を攻めた歴史もありますね。やっぱり、さっきユイが言っていた通りになってます。」




ガーネット姫のありがたい助け船に乗っかった。もちろんそんな話なんてしていない。お姉ちゃんに頼りっぱなしの妹です。




「さすがはわが師、ユイ殿。しかし、ガーネット姫の冒険に関する造詣の深さ、このクロック、感服するばかりです。」




ふたりしてちょっと照れる。そしてやっぱり「師」扱いされている。訂正しようと口を開きかけたとき、初めて聞くレベルの轟音(ごうおん)が届いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ