029 唯、異変を察知する。
ちょっと食べ過ぎたお腹をいたわりつつ、ガーネット姫とギルドへ。
「うぅ…食べ過ぎました…。」
どうやらガーネット姫も食べ過ぎたらしい。ごはん、おいしいもん。仕方ない。お腹をさすりさすり歩く2人。
「あれ…?なんだか静かですね。」
「そう…ですね。何かあったのでしょうか?」
ギルドまであと数十メートルといったところで、ちょっとした違和感。こんな朝早くに訪れるのは初めてだから何とも言えないけど、ギルドは町の中心地。やっぱりおかしいと思う。入口に警備のお兄さんはいるけど、他に誰も見当たらないのだ。
「行ってみましょう。」
回復しかけたお腹から手を離し、小走りでお兄さんに近づく。
「あ、ユイさんにガーネット姫ではありませんか。おはようございます。」
お腹がちょっと無理だったので、途中でペースダウン。誤解されると申し訳ないので、元気に挨拶だけは返しておく。
「おはようございます。」
「朝早くにすみません。」
すると何かを思い出したような表情で、お兄さんが続ける。
「ちょっとここでお待ちいただいてもよろしいですか?ギルドマスターを呼んできますので。」
ガーネット姫と一緒にぺこりと頭を下げると、警備のお兄さんはギルドのなかへ。やっぱりいつもと様子が違う。何もなければ良いんだけど。
しばらくお腹をさすっていると、ギルドマスターのクロックさんが裏口から出てきた。あいかわらず扉にぶつかりながら。もう、扉自体をなくしちゃう方向が良い気すらしてしまう今日このごろ。
「ユイ殿!おはようございます。すみません、ちょっと会議と準備でてんやわんやでして…。」
―――やっぱり、何かあったんだ。
「あの、それで大丈夫なのでしょうか?」
先に言葉が出たのはガーネット姫だった。私も続く。
「状況はどんな感じなんですか?」
質問の嵐に困惑したクロックさんは、なだめるようなしぐさで続けた。
「あ、いえ…もう少しで準備は終わると思います。あの、ユイ殿やガーネット姫も参加していただけるのですか?」
問われずとも。
「もちろんです!」
「はい!」
この町の危機、立ち上がらなければ。食べ過ぎに若干の後悔を感じつつ、高鳴る鼓動を感じる。
「わ、わかりました。気合十分ですね。」
そりゃもちろん。
「こちらが参加券です。いやー、今年は盛り上がりますね!」
―――参加…券…?
なんだろう、話がかみ合っていない気がする。手渡された参加券とやらに目を移すと、答え合わせができた。
「丸太早切り大会のご案内…?」
―――…。
「はい!今日は年に一度、この町の最強を決める『丸太早切り大会』の日なんです!ご覧ください、あちらでは参加予定者の皆さんが準備の真っ最中です!」
ガーネット姫とともに目を移すと、そこには腕のマッサージをしたり、のこぎりの調子を整えたりする参加者の皆さんが。それで人通りが少なかったのか。
「会場はギルドの裏手、訓練場になりますので。時間に遅れないよう、お集まりください!では!」
以上、といった感じでギルドへ戻ったクロックさん。またしても扉を破壊して。
「…。」
「…あの…帰りましょうか…?」
なんだか心配して損した気分。完全に力が抜けてしまった。
…なんて考えていたけど、私が優勝賞品「お食事券100枚」をもらったのは、それからわずか3時間後の出来事だった。ちなみにガーネット姫はブービー賞の「プライアント人形」をもらっていた。それがガーネット姫の抱き枕となったことは、そう遠くない未来の話。




