026 唯、テンプレを思い出す。
「…という状況でした。」
出来事をありのままに報告した。私基準せいで、どれほどの強敵だったかはわからないけど、数はたしかに多かった。
「私も7体ほど倒しましたので、合計すると30体ほどになったでしょうか?」
ガーネットが補足してくれる。
「そうですか…まずはお二人とも無事でなによりです。まぁ…ユイ殿は特に問題なさそうに思いますが。」
たしかに。攻撃されたシーンはともかくとして、別に痛くもかゆくもなかった。
―――でも…どちらかというと、敵さんの自滅というか…。
俊敏に避けるとか、そういった類の身体能力は持ち合わせていない。攻撃される、武器が壊れる、そのままつかんで投げ飛ばす。以上の3点セットで戦っていた。バグステータスに頼りきった戦術。えっへん。
「迷いの森はご存知の通り、新人冒険者の登竜門と呼ばれている場所です。それなりの難易度はありますが、それは新人冒険者にとっての話です。私の知る限り、それほどのモンスターが現れたという事例は…。」
異常事態らしい。
険しい表情のクロックさん。私も何か胸騒ぎがする。ゲーム的な思考でいくと、何かイベントが発生する予感。
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「大丈夫でしょうか…?」
ガーネット姫も心配な様子。
「何かイベントが…あ、えっと…普段とは違ったことが起きる前触れかもしれません…。でも、この町には冒険者さんもたくさんいらっしゃいますし。」
少しでも不安を取り除こうとがんばってはみたけど、ごくごく当たり前のことしか言葉にできなかった。もちろん、仮にこの町が襲撃されたとしても、私には例の最終手段がある。そう、氷の壁。持続時間があるけど、あれを撃ちまくればそうそうなことでは突破されないと思う。
―――町に籠城するかたちであっても、とりあえず守りきれれば…。
この世界は広い。他の町にもギルド支部はあるし、王都にあるギルド本部は最高戦力をそろえているらしい。つまり、守っていればいずれ包囲戦を展開できる。
「あの…こんなお願いをするのは都合がよすぎると思いますが…もしも、もしも大変なことが起きてしまったときには、一緒に戦っていただけますか?」
珍しく厳しい表情のガーネット姫。隣にいるとつい忘れがちだけど、ガーネットはこの国のお姫さまなのだ。王族としての責務。同い年の私には抱けない感情。
―――やっぱりお姫さまって…いや、ガーネットってすごい。
「もちろん!ガーネットと一緒に戦います!」
厄介ごとは苦手だけど、友だちが困っている。友だちとして、少しでも力になりたい。冒険者らしい感情の発露…とは言えないけど、私も「冒険者」に近づけている気がする。
「ユイ…ありがとうございます。」
頭を下げるガーネット姫。それを慌てて止める私。お礼をされるほどのこと、何もしていない。そんなドタバタをしていると、クロックさんが再びやってきた。やはりドアにぶつかりながら。
―――なんで、押すと引く、確認しないんだろう…。
もはや恒例行事となった「痛っ!…なんだ、引くか。」という発言を視線で受けながしつつ、次の言葉を促す。
「ギルド本部の方に報告しておきました。調査班が派遣されるようです。…あと、これは口外しないでいただきたいのですが…。」
そんな前置きをされると気になる。気になるというよりも、ちょっと怖くなる。




