124 唯、しがみつく。
「ひっ!?ひぎゃぁぁぁぁぁぁっ!?」
「ユイ!?お、落ち着いてください!ただの葉っぱです!ほら!」
「は…はっぱ…はっぱ…。」
心臓…止まるかと思った。
薄気味悪い森の中を進む私たち。
いかにもな雰囲気すぎて…怖い、怖すぎる。
―――暗いの…無理…。
どうしてもお化け屋敷に入れと言われたら、絶対業務用のライトを持って入る…どうも、ガーネット姫の手を離せない22歳、乙女なユイィィィィィィィイ…です…。
『ぴよよ?』―――ユイちゃん…大丈夫?
「う…うん。まだ着かない?」
『ぴよ…』―――まだ3分の1もきてないよ…。
「…。」
絶望。
…でも、がんばるって決めたし。
時はさかのぼること数分。
ハナミズキ・タウンをあとにした私たちは、とりあえずって街道を道なりに進んでた。
ちなみに特製ジェットコースターなんだけど…修理中。
いや、握力ミスって…ちょっとだよ?座席のあたりがペキって…うん。
「ねぇねぇ、フリルちゃん?」
『ぴよ?』―――どしたの?
「このあたりでさ、強いモンスターとかいないの?」
せっかくのレベル上げチャンスだったのに、私のせいでモンスター…隠れちゃってる。
ガーネット姫のレベルを上げないと、プラちゃんと一緒に冒険できない。
できれば最速で。
この際、パワーレベリングでもあり。
―――私がすっごい強いモンスターを倒せば…ガーちゃんにも経験値ガッポガッポ…。
ぐへへ。
なんなら魔王とかでもオッケーだけど。
「ユイ、別に大丈夫ですよ?もう少し離れれば、さすがにモンスターも出てくると思いますし。」
「いや…それがね、えっと…。」
『ぴよ…』―――しばらく…出てこないかも。
「そ、そうなのですか!?」
「ごめんなさい…。」
私の魔法の余波、思ったよりもヤバかったみたいで…あと数キロはモンスターが出てこないみたい。
さっき…定食屋さんで会った旅の人が教えてくれた。
『ぴよ…』―――知ってるには知ってるんだけど…。
「本当!?」
『ぴよ?』―――ユイちゃん…行けるかな?
そんな「おつかい」みたいなテンションで言わなくても。
「大丈夫だよ。私、バグステータスだし。」
『ぴよ…』―――森を抜けなきゃいけないんだよ?
「森?大丈夫、虫とかは大丈夫なんだよね。」
『ぴよ?』―――漆黒の森って呼ばれてるくらいだから、暗いよ?とーっても。
「…え…?」
…というわけで、私たちはとーっても暗い森を歩いてる。
そして私は悲鳴をあげてる。
■
うぅ…怖い…怖い。
「ところでフリル様。そのモンスターは…どんなモンスターなのですか?」
『ぴよ!』―――そうだね。とーっても防御力が高いの。並大抵の冒険者だと…ダメージを与えることすら無理だね。
「そんなモンスターがいるのですか。」
『ぴよぴよ』―――うん。場所が場所だけに…滅多に討伐依頼も出されないはずだし。
「たしかにこれだけ街道から離れていれば…そうですね。」
ぐすん…。
ユイのちょちょっと解説タイム。
討伐依頼は、基本的にみんなの困りごとに対処するためのもの。
街道を選挙してるモンスターとか、家を壊すモンスターとか…そういうのが討伐対象。
―――まぁ…モンスターって時点で討伐対象になっちゃうんだけどね。
そして討伐依頼を出されていないモンスターを倒しても、基本的には報酬がもらえなかったりする。
もうちょっと正確にいうと、依頼達成報酬っていう…メインの一番大きな報酬が出ない。
だから山奥とか海底とかに潜んでるモンスターって、結構見逃されてたりするそう。
昔クロックさんが教えてくれた。
『ぴよよ』―――強いモンスターが町を襲ったって事件、たまにあるでしょ?
「はい。悲しいことですが…。」
『ぴよ』―――そいつらの正体、深い森のなかとかに潜んでひそんでレベルが上がったモンスター…とかだったりするんだよね。
「なるほど。」
「じゃ…じゃあ、たまには討伐しないと危ないんだ。」
『ぴよぴよ』―――そだね。あんまり放っとくと、魔王軍とかに利用されちゃうのがオチだし。
そんな会話をしながら歩くこと数分、ちょっと開けた場所が見えてきた…みたい。
ちなみにだけど…私、怖すぎてガーネット姫の背中にしがみついてる。
目もしーっかり瞑って、進行方向その他もろもろ…全部ガーネット姫におまかせ。
これなら迷子にならないし…むしろありかも。
―――でも…歩きにくいよね…ごめんなさい。
そんなお荷物状態な私…。
文句のひとつも言わず、私のヘナヘナな歩幅にまで合わせてくれてるガーネット姫。
もうお姉ちゃんどころか…お母さんレベル。
『ぴよ…。』
たぶんだけど、フリルさまの目には…ひな鳥をおんぶする親鳥みたいに見えてると思う。
「ユイ、ちょっと休みましょうか。ちょうど良い感じの切り株もありますし。」
「う…うん。」
『ぴよ?』―――切り株…?変だなぁ…こんなとこまで人が来たのかな?
フリルさま…なんか聞き捨てならないんですけど…。
「ひぎゃっ!?」
「だ、大丈夫ですよ。木の実が落ちてきた音です。」
「きの、きのみ…きのみ…無理…。」
森の音楽家さん…もしいらっしゃれば、アップテンポな曲をヘビロテでお願いします。
報酬は…えっと、木の実で。
―――シヤークもつけますから…。




