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121 唯、二度寝する。

 その日の夜。

 ハナミズキ・タウンの空に、いろとりどりの花が咲いた。


―――わぁ…バンッバーンって、ピカピカってすっごい!


 …語い力の低下はさておいて。


「きれいだね…!」

『ぴよぉ…』


 真っ暗な空を飾り付けるように、赤白黄色…色鮮やかな花火の数々。

 浴衣まで借りちゃって、気分はすっかり夏祭り。

 ちなみに右手にはかき氷、左手にはフランクフルト。

 ホットとコールドを兼ね備えた完璧な取り合わせ。


―――ケチャケチャケチャップー。


 なんとも言えない節回しで、ケチャップを探す私。

 さっき間違ってかき氷にかけちゃったから、今回は失敗しないようにしないと…。


「あれ…?」

「ユイ…むにゃむにゃ…すぴー」

『ぷや?』

「ガーちゃん?」


 あらら…寝ちゃってる。

 なんか右腕が重たいなって思ってたけど、今日…いろいろあったもんね。

 ケチャップはあきらめよう。

 そのままでもおいしいし。


―――いや…なんとか取れないかな…?


 一度手に取った食べ物は離したくない派の私。

 中指と薬指でうまいことフランクフルトを…。


「…ふぅ?あら…?」

「ガーちゃん?」

「ね、寝てません!」

「…。」


 何も聞いてないんだけど…。

 それはさておき。


「花火、きれいだよ!」


 パパンと響く花火が弾ける音。

 波音と夏のハーモニー。


「ガーネットさん、ユイさん。お楽しみいただけてますか?」

「はい!とってもきれいです!でも、すみません…こんなことまでしていただいて…。」


 実はこの花火、年に一回のお祭りのときにしか打ち上げられないもの。

 私たちのために…っていうのは大袈裟かもだけど、今回の宴のために準備してもらえたみたい。


「いえ!魚問題解決の道筋がたっただけでもありがたいのに、シヤークという金のなる…じゃなかった、高級魚まであんな大量に。ユイさんとガーネットさんには、感謝してもしきれないくらいですよ。わははっ!」

「これで家のリフォームが…。」

「久しぶりに旅行でも行くかな。」


 十人十色な夢をのせ、目がお金マークに変わった漁師の皆さん。

 さすが異世界…あいかわらずだけど、マンガのなかだけだと思ってた。


「あの、コウゾウさん。」

「はい。ユイさん、どうかされましたか?」


 かき氷が水になっちゃう心配もあるんだけど、実は気になってることがひとつ。

 このままだと夜しか眠れなさそうだし、わかんないことは聞くのが一番。


「クララさんにお魚問題が解決したこと、伝えてきた方が良いですか?」

「クララさん?」


 そう、クララさん。

 ハナミズキ・タウンへ向かう途中で出会った、クララさん。


「ハナミズキ・タウンに来る途中、そこの街道で…カエデの町に行かれるとのことだったので、ご一緒したんですが…。もう戻ってみえたりします?」


 お魚問題解決の糸口を探るべく、カエデの町を目指してたクララさん。

 旦那さんが漁師さんって言ってみえたし、お魚問題が解決したこと…早く伝えてあげたい。


「えっと…クララさんというのは?」

「あれ…?旦那さんがここの漁師さんって仰ってたんですけど…?」

『ぷや?』


 なんだか雲行きが怪しい。


「漁師の…?ユウサク、クララさんって知ってるか?」

「クララさん?誰だそれ?」


 な…なんか、背筋にひんやり…。

 そのての話も「夏の風物詩」かもだけど…私にはいらない、怖いもん。


「ガーちゃん…?」

「ユイ…?」

『ぴ、ぴよ』

『ぷや?』


 その夜、眠れなかったことは言うまでもないです…はい。





 翌朝、寝不足でほよほよの私。

 私にしがみつかれてたフリルさまも…寝不足みたい。


「ごめんね…フリルちゃん…。」

『ぴよ…』―――大丈夫…ふわぁぁぁん…。


 クララさんのこと、ギルドの人にも聞いてみたんだけど…誰も知らなかった。

 モンスターが人間に化けていたのかもって教えてもらったけど、それならフリルさまのセンサーにひっかかるはずだし…。


―――どうなってるの…。


 一日寝れば、嫌なことだいたい忘れられる私だけど…ホラー系だけは無理。

 本当に無理。


「ねぇ、フリルちゃん。」

『ぴよ?』―――どしたの?

「もしモンスターが人間に化けてたら…フリルちゃんは気づくよね?」


 ダメ元で聞いてみる。

 結構暑かったし、フリルさまも冷却に夢中でセンサーきってたかもしれないし。


『ぴよよ』―――そだね。ボクを騙せるほどのモンスターなんていないよ。

「じゃ…じゃあ、クララさんって…?」

『ぴよぴよ』―――モンスターじゃないね。

「…。」


 困った。

 今日も寝不足が確定した瞬間。


『ぴよよ』―――あ、でも…。

「でも?」

『ぴよ』―――魔王軍が化けてたら…微妙かも。

「そなの?」


 恐怖にさした一筋の光。

 私にとっての恐怖は、魔王軍よりもだんぜんオバケ。


『ぴよぴよ』―――氷結の加護を張ってる状態なら気づけるんだけど、ユイちゃんたちといるときは、加護を解放してないんだ。ガーネットちゃんが凍えちゃうから。

「そっか…それなら一安心…じゃないよ!」


 アホ毛をピンと立てて、アニメみたいに目を見開いた私。

 緊急事態発生。

 思ったよりまずい事態が起きてる。

 しかもカエデの町に送っちゃったし、私。


『ぴよ!?』

「魔王軍が、カエデの町に入りこんじゃったってことだよね!?」

『ぴよよ』―――大丈夫だよ。ボクが感知できないほどに魔法の力が弱い魔王軍ってことでしょ?そんなのなんてことないよ。

「そ…そなの?」

『ぴよ』―――ギルドに知らせとけば大丈夫だと思うよ。ね、ガーネットちゃん?

「そうですね。王都も近いですし。」


 伸びをしながら答えてくれたガーネット姫。


「あ…ごめん、起こしちゃった?」

「大丈夫ですよ、もう朝ですし。おはようございます。」

「おはよ。」

『ぴよ!』

「でも良かった…いや、良くないけど…。」


 オバケじゃなかっただけで、私的にはオールオッケー。

 魔王軍なら…またデコピンしに行けば良いだけだし。

 よかった…今日は眠れそう。


「ふわぁぁぁん…。」


 二度寝。

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