表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
120/156

120 唯、入念に準備する。

 さんさん太陽、アチチな砂浜を…あえてゆっくりと駆け抜ける私。

 日焼け止めがなくてちょっぴり迷いはしたけど、波音の清涼感(せいりょうかん)には勝てなかった。


「ふへっ…。」


 砂のもきゅもきゅとした感触が、ちょっぴりくすぐったくて…変な声が出ちゃった。

 サラサラとしていて、あんまり足の裏にくっつかないタイプの砂。

 後から砂風呂でもしてみようかな。


「ユイー!浮き輪忘れてますよ!」

「あっ!」


 そんなにスピードは出てなかったけど、おおげさに急ブレーキで止まってみた。

 それにしても、やっちまったぜ私。

 一番大切なものを忘れてた。


「はい、どうぞ。」

「えへへ…ありがと。」


 足元から浮き輪を通し、両腕でがっちり固定。

 というわけで、気をとりなおして。


「よ…よいしょーっ!」


 海に…飛び込んではない。

 掛け声の勢いとは裏腹に、恐るおそる水温を確認する私。

 熱いものを触るときみたいに、指先でちょびっと。


―――う…うん、大丈夫そう。


 泳いでいる人たくさんいるけど、やっぱり自分で確認しとかないとね。

 ここは異世界。

 もしかしたら海水がめっちゃお湯かもしれないし。


「…ユイ?」

『ぴよ?』―――ユイちゃん、何してるの?

「え?いや…えっと、さ、さぁ、準備体操しよ!」


 (あせ)る心を(さと)られないよう、すごい勢いで腕をぐるんぐるんとまわしてみる。

 準備体操の域は逸脱してると思うけど、準備ったって人それぞれだもんね。


「準備体操なら…さっきしませんでしたっけ?」

『ぴよよ』―――そうだよ。ユイちゃん、忘れんぼうさんだなー。

「そ、そうだっけ?」


 時間稼ぎのネタを着実に(つぶ)されていく私。


―――…。


 怖いわけじゃないからね。

 ちょっと心の準備が…いるだけだもん。


「さぁ、行きましょう!波もおだやかですし、海水浴日和です!」

『ぴよ!』

「…よぉーし。」


 とりあえず右足からそーっと…。


「ひゃうっ!?」

「ユ、ユイ?」

『ぴよよ…?』―――どうしたの…?

「な、なんでもない!」


 足元がちょっとびっくりしただけだもん。

 うん。


―――…。


 と、まぁ…そんな感じでうにゃうにゃしてたのはほんの数分。

 海に入っちゃえばこっちのもので、浮き輪でぷかぷか楽しい時間が始まった。


「ユイー、もう少し進みますか?」


 バシャバシャと泳いで、私の浮き輪を押してくれてるガーネット姫。

 泳げない私が評価するのも変だけど、とっても上手だと思う。

 それはさておき。


「だ、大丈夫!私、プラちゃんのこと見てるから!」


 空には太陽、浮き輪の上にはプラちゃん。


「そうですか。では、私はもう少し泳いできますね。」

『ぴよよー!』―――ボクも行ってくるー!

「うん、気をつけてねー。」

『ぷややー』


 やっぱり足がつくくらいの深さで十分すぎる私。

 浮き輪のおかげでここでも楽しめるし。

 浮力に最大限の感謝をしつつ、浮き輪に乗ってるプラちゃんとアイコンタクト。


『ぷや?』

「気持ち良い?」

『ぷややぁ』


 かわいい。





「よいしょっと…そろそろあがろっか。」

『ぷや』


 思う存分「海」は感じれたし、あんまり入ってると冷えちゃうかもしれないし。

 バグステータスな私。

 温度関係もバグってるから、それこそ身体が冷えちゃってても気づけないかも。


「よっとっと。」


 身体が重たく感じる。

 …浮力がなくなったからだからね。


―――さてと…何してようかな?


 ガーネット姫はフリルさまと泳ぎを楽しんでるし、ボーっとしてるだけだと気をつかわせちゃうかも。


『ぷやや!』

「どしたの?」


 砂浜にジャンプしたプラちゃん。

 身体全体をくねくねと動かして、砂をあっちへこっちへ。


―――…?


 待つこと数十秒。


『ぷや!』

「おぉ!すごっ!」


 砂浜に描かれたのは「ガーネット姫の似顔絵」だった。

 特徴をとらえてて、とっても上手。

 少なくとも私よりは上手。


「プラちゃん、私も描いてよ!」

『ぷや?』

「お願い!」

『ぷやや』


 待つこと数十秒。


「おぉっ!ありがとう!って…ん?」


 似てる…と思う。

 アホ毛がデフォルメされ過ぎている点をのぞいて。


「プラちゃん…これ、アホ毛が…その、本体になってる…。」


 顔の大きさ1に対して、アホ毛1。


『ぷやや!』

「でも…プラちゃん上手!」

『ぷや!』


 私も負けじといろいろ描いてみたんだけど…うん、これは…見せられないかな…。


『ぷや?』


 み、見ちゃダメ…。





「ユイー、お待たせしましたー。」

『ぴよよー!』―――ただいまー!


 泳ぎまくってたガーネット姫と、飛び回ってたフリルさまの帰還。

 フリルさまは私の頭にズドンと着地。


「おかえりー!楽しかった?」

「はい!久しぶりに泳げて気持ちよかったです。お風呂じゃ…泳げないですし…。」

『ぷや!』

「あ、プラちゃん!」


 甘えん坊さんな表情で、ぴょんぴょんと飛び跳ね始めたプラちゃん。

 さっそく抱きかかえて、よしよしを始めたガーネット姫。


「…?ユイ、あの…それは?」

「え?あ、これ、作ったの!」


 平面はダメだとあきらめた私。

 立体に芸術的センスを求めて、バケツまで借りてきて作った超大作。

 ちょっと構造上の問題があるかもしれないけど、建物っぽくはできた自信がある。


―――絵よりはまし。


 うん。


「…あ!これは…。」


 ほら、伝わった。

 二次元だと遠近感が次元の彼方へと消えちゃう私だけど、三次元ならその心配もなし。

 だって見たまんまを作れば良いんだもん。

 最初からこうすればよかった。


―――紙粘土とか…持ち歩こうかな…。


 そういえば、夏休みの自由研究…紙粘土でいろいろ作ったっけ。


「シヤークですね!」

『ぴよよ!』―――ほんとだー!

「…。」


 今の気分を五七五で。

 悲しいな お城つくった だけなのに

 どうも、本当はお城を作ってました…22歳のユイです。


―――た…建物ってことも…伝わらなかった…。


 崩れ落ちそうな膝を支えて、なんとかメンタルに防御魔法を展開した私。


「えっと…こっちにもありますね…あ、これ、私と…ユイじゃないですか!」

「…そっちはね、プラちゃんが描いてくれたんだ。上手でしょ?」

『ぷや!』


 えっへんな表情のプラちゃん。

 つぶらな瞳がキラキラしてる。


『ぴよよー!』―――すっごい上手!ユイちゃん、教えてもらったら?

「…。」


 これ以上、傷口に塩ぬらないでください。

 海だけに。

 …おあとがよろしいようで…ぐすん。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ